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【続報】アップデート情報 トーテム アウトモビリが GTエレクトリックを正式発表

2021年1月23日

電動アルファ、「GTエレクトリック」誕生。すでに当サイトでもレポートしたイタリアのレストモッドエキスパート、トーテム アウトモビリ(Totem Automobili)からのカーボンボディ+525馬力の「トーテムGTエレクトリック」の全容を追加緊急レポート。

トーテム アウトモビリが正式に発表したのは、525馬力、カーボンボディのオール電動アルファレストモッド「ジュリアGTエレクトリック」だ。
20台のみ(!)の限定生産モデルだ。
いま、レストモッドは大人気を博している。
それはクラシックカーに現代的な技術を加えたものだ。
ポルシェレストモッドのスペシャリストであるシンガー(Singer)は、今ではダイハードな(ガチガチの)自動車ファンだけでなく、一般の人々にもその名を知られるようになった。
先日我々もレポートしたように、このアメリカの会社は、砂漠レース用に作られた964ベースの「シンガーACS」を発表したばかりだ。

※その「シンガーACS」の記事はこちらをどうぞ。

しかし、シンガー以外にも、レストモッドで稼いでいるスモールシリーズメーカーはたくさんある。
メカトロニックは、1990年代から、メルセデス パゴダをベースにしたM-SLシリーズでレストモッドビジネスを展開している。
カリフォルニアのギュンターヴェルク(Guntherwerks)も、シンガーと同じくポルシェ911をベースにレストモッドモデルを作っている。
イタリアのアウトモビリ アモス(Automobili Amos)は伝説のランチア デルタ インテグラーレを「デルタ フューチュリスタ」としてリニューアルする一方、イギリスのレストモッドスペシャリスト、イーグル(Eagle)は象徴的なジャガーEタイプを様々なバリエーションで再構築している。
そして、これらはレストモッドの有名な例のほんの一部だ。

今回レポートする「GTエレクトリック」の現在わかっているスペックは以下の通りである

  • アルファロメオGTジュニアをベースにしたレストモッド
  • ジュリアGTAmをベースにした外観
  • カーボンボディ
  • 出力525馬力(386kW)の電気駆動
  • 最大トルク980Nm
  • 0-100km/h加速: 3.4秒
  • 最高速度:245km/h
  • 航続距離: 360km
  • 乾燥重量: 1270kg
  • 完全カスタマイズ可能
  • 2022年からデリバリーされる20台のスモールシリーズ
  • ユニットプライス(単価): 430,000ユーロ(約5,450万円)より

レストモッドのいいところは、自動車の伝説を大切にしているということだ。
そして自動車の伝説におけるアイコンの1つといえば、世界中の多くの人々から愛され続けるブランド、アルファロメオだ。
アルファレストモッドと言えば、スペシャリストのアルファホリックス(Alfaholics)によって、主にカーボンで作られたアルファベースのGTA-Rが有名だ。
しかし今、新たなスペシャリスト「トーテム アウトモビリ」の登場だ。
このイタリアの新興企業は、デザイナーのリッカルド クアッジョ(Riccardo Quaggio)によって2018年に設立され、2年以上をかけて最初のプロジェクトに取り組んできたのだった。
今回はそのデザインだけでも約6,000時間が投じられた。
その結果生まれたのが「トーテム ジュリアGTエレクトリック」だ。
その名の通り、ジュリアGTAのオール電動版だ。

直列4気筒ではなく電動モーターを採用

世の中にはすでに多くの電動レストモッドが存在しており、それは間違いなく正しい。
しかし、「トーテム アウトモビリ」のアプローチは他とはじゃっかん異なる。
初代GTAmで240馬力を発揮した4気筒を捨てて電動パワートレーンに置き換えるだけではなく、クルマ全体を細部にまでこだわって作り直しているからだ。
その結果、オリジナルのパーツはほとんど使われていないにもかかわらず、「トーテムGTエレクトリック」はすぐにアルファだとわかるようになっている。
今回のモデルは、1970年から1975年にかけて製造されたオリジナルのアルファGTジュニア1300/1600をベースにしている。
これをシャーシまで完全に分解してから、トーテムが作業に取り掛かる。
最終的にはオリジナルシャシーの1割程度しか残らず、残りはすべてトーテムのアルミ製パーツによって仕立て上げられている。

カーボンボディのおかげで1270kgの軽量化を実現

全長4.08m、全幅1.76mの「GTエレクトリック」のボディはカーボン製で、重量はわずか95kg、総重量を1270kgで仕上げている。
レストモッドのビジュアルは、GTAmを意識したもので、我々の目を十分に楽しませてくれる。
トーテムのデビューモデルは、モダンでありながらもクラシックであり、必要なものを極限まで減らしたモデルである。
開発に「おけるキーワードは「Reduced=減らす」だった。
設計者はバンパーさえ省略しているが、オリジナルのGTAmにもバンパーは備わっていなかった。
さらに、ディテールにも目を見張るものがある。
フィリグリーのエクステリアミラーはオリジナルをベースにしており、丸いヘッドライトやテールライトもオリジナルのものを使用しているのだ。
そしてレストモッドらしく、LEDテクノロジーの応用で、2021年にふさわしい現代的なデザインにそれらは仕上がっている。
クラシックなアルファデザインの17インチアルミホイールにはコンチネンタルタイヤが装着され、すっきりとした外観に完璧にマッチしている。
その後ろには、フロントアクスルに354ミリディスク、リアアクスルに328ミリディスクが装着されたブレンボ製のブレーキシステムが備わっている。
さらに要望に応じて、もっと大きなブレーキシステムを装着することも可能だ。
サスペンションは、ビルシュタイン製のクラブスポーツコイルオーバーサスペンションが標準装備されており、コンプレッション(圧縮減衰力)とリバウンドダンピング(伸側減衰力)が調整できる。
見ての通り、トーテムは中途半端なことはしない。
「GTエレクトリック」は、見た目だけでなく、走りにもこだわっている。
525馬力(386kW)と980Nmの最大トルクというのは、なかなかに魅力的だ。

0-100km/h加速3.4秒

GTエレクトリックのパワートレーンは最先端のものが採用されている。
386kWの電動モーターは、容量50.4kWhの330kWのバッテリーパックから供給される。
トーテムはEVの航続距離を最大360kmとしており、急速充電も問題ないとしている。
予想通り、加速は印象的だ。
GTエレクトリックは、ローンチコントロールを使用すると、3.4秒で0から100km/hにまでダッシュする。
最高速度は245km/hで、電気自動車としては悪くない。

しかし、GTエレクトリックを純粋に数値だけで評価するのは決してフェアとは言えないだろう。
なぜならクラシックなルックスと現代的なパワートレーンの融合に加えて、「トーテム GTエレクトリック」はその仕立ては細部にまでこだわっているものだからだ。
例えば、トーテムが開発した特別なサウンドジェネレーターは、可能な限りリアルなエンジンサウンドを実現し、クルマのファンを納得させるものだ。
メーカーのホームページでは、すでにサウンドサンプルが公開されている。

革をふんだんに使ったインテリア

インテリアで、トーテムが特に重要視したのは、宇宙船風の近未来的なコックピットではなく、クラシカルなコックピットを作ることだったという。
そしてそれは正しい判断だったと言えよう。
後部座席を取り払い、運転席と助手席にはカーボン製の美しいバケットシートを使用し、革張りのシートが散りばめられている。
しかし、シート以外にも、トーテムはレザーを惜しみなく用いている。
ダッシュボード、センタートンネル、ドアパネル、フロアマットなど、すべて本革張りとなっている。
ステアリングホイールはMOMO製のクラシックな「ヘレボア(Hellebore)」を再解釈したもので、その後ろにはナビを含む2つのデジタル丸型計器類が配置されている。
これだけのこだわりがあるにもかかわらず、顧客用の快適性のための機能が備わっていないわけではない。
ナビに加えて、トーテムは優れたサウンドシステム、アラームシステム、クライメートコントロール(気候制御)、キーレススタート等々を提供しているからである。

基本価格430,000ユーロ(約5,450万円)から

「トーテム アウトモビリ」のデビューカーは、実は2020年の「グッドウッド フェスティバル オブ スピード」で発表される予定だった。
しかし、グッドウッドでのイベントが中止になってしまったため、トーテムはもう少し完成に時間をかけることができた。
現在、「プレ生産モデル」の準備が整っており、潜在的な顧客を興奮させるはずだ。
ベース価格430,000ユーロ(約5,450万円)での予約注文受付はすでに始まっている。
しかし、この価格はまだ大幅に上昇する可能性がある。
なぜなら、レストモッドにふさわしく、GTエレクトリックは、購入者の要望に応じていかようにもカスタマイズ可能だからだ。
このEVアルファは20台限定で2022年からのデリバリーが予定されている。

ついにレストモッドEVの「アルファ ジュリアGT」が正式に発売されることになったらしい。とはいっても20台の限定で5,000万円ではもうどうにもならない世界の話ではあるが、こういうレストモッドの車が次から次へと登場するということは、それなりに需要あるらしい。
そのほとんどが数千万円は当たり前の値付けがされており、高価な素材を使い、手のこんだ細工とデザインによる美しい内装を持っており、言ってみれば富裕層のための一種のアクセサリーのような佇まいと性格を持っているといえよう。

せめて我々が購入できる範囲としては、これほど高価な素材や細工を施さなくてもいいから、この価格の10分の1くらいでなんとか…と思ってしまうが、最近発表されたルノーのEVなどを見ると、こういうレトロなEVが発表される可能性は高まってきたといえる。
もちろんそれらはレストモッドではないが、価格も購入可能範疇だし、現実味を帯びた話と言えよう。

それはさておき、今回のような高級レストモッドの話題も決して嫌いではなく、つぎはどんな車のレストモッドが出てくるのかちょっと楽しみな話ではある。もちろん自分では絶対に購入できない金額だが、こういうクルマもあってこそ自動車趣味の世界は楽しいのだから。

第1報「【新車情報】アルファロメオのジュリアGTがEV化で蘇る!」もご参照ください。

Text: Jan Götze
加筆: 大林晃平
Photo: Totem Automobili