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プラモデルはやっぱり面白い Vol. 5 アルファロメオ

2020年9月13日

最近のレース事情について

皆さんご承知の通り、佐藤琢磨選手が3年ぶりに「インディ500」で優勝した。
世界3大レースのひとつ、「インディ500」を二度制覇するという快挙であり、非常に嬉しい出来事であった。しかし今回のレースについてはNHKが放送したものの、これ以外のレース中継は滅多に見られない状況にある(勿論、有料放送は存在している)。
佐藤琢磨選手が成し遂げたことは真に偉業であると思うし、彼はこれで文字通りレーシング界のレジェンドの一人になったと思う。
それでもメディアなどの扱いは寂しい限りだ。一時期、F1ブームが盛り上がったこともあったが、現在は昔ほどの話題にもなることなく、盛り上がりにも欠けている様相だ。やはり日本人にはモータースポーツは受け入れられないのか。
いや、そんなはずはない、と思いたい。依然として日本の基幹産業のひとつは自動車産業であるし、自動車に興味が薄れてきている世代であっても、運転を楽しんだり、同乗を楽しんだりしているのだ。
今回のインディの勝利は、本当に歴史的快挙であり、もっと日本のマスメディアも採り上げてしかるべきである。佐藤琢磨選手には是が非でも国民栄誉賞を授与して頂き、自動車を取り巻く環境に元気を取り戻したい。
ということも鑑みて(かなり強引な展開ではあるが)、今回は自動車レースの歴史にはなくてはならない重要なメーカーである、アルファロメオのプラモデルを採り上げてみよう。

「アルファロメオ」について

ご存知の方も多いであろうが、アルファロメオは今年創立110周年を迎えた。現在でも主に高級車を供給しているが、特に第二次世界大戦以前は「超」が付くほどの高級車とグランプリカーを専門に少量生産していたメーカーだった。
戦後は経営戦略を変えて大衆も購入出来る自動車の販売も開始したのだ。しかし当時から一貫してアルファロメオは高性能でスポーティー、かつ美しいデザインの自動車をラインアップし続けている。
ではそのプラモデルとしての製品化はどうであろうか。フェラーリのプラモデルほどではないが、幅広く扱われていると思う。やはり格好良く、美しいアルファロメオは、各プラモデルメーカーが数多く発売してきた。

「アルファロメオ P3」1/20 リバイバル   
まずは「リバイバル」というプラモデルメーカーを紹介したい。
聞きなれない方もいらっしゃるかもしれないが、1975年にイタリアのボローニャで創業された模型メーカーである。主に戦前のレーシングカーをモデル化し、基本的にボディは金属製のパーツで再現した。いかにもマニア向けで、販売価格も安価とはいえない設定である(2~3万円程度)。
しかしボディパーツをプラスチック製とした廉価版もあり、本稿の2台はこちらである。
さて肝心のP3(実車)であるが、1932年にレースデビュー後、大活躍したグランプリカーである。グランプリカーとは現在のF1マシンに該当し、当時はヌヴォラーリら、名ドライバーたちがマシンを駆り、マセラテイやブガッティなどの名門チームと競い合ったのである。

P3を駆るタツィオ ヌヴォラーリ。 Photo: MUSEO ALFA ROMEO

このP3のプラモデルは130個程の金属製やプラスチック製のパーツで構成されている。完成させると約18cmという全長で、現在のF1マシンと比較すると若干小ぶりなものである。
製作を開始すると、まず驚かされるのが組立説明図である。国産プラモデルで130個のパーツの組立説明図であれば約20工程で構成されるのではないだろうか。しかしこのP3の説明図は、なんと3工程!のみである。しかも説明文章は一切ない(イタリア語で記載されていても私には理解出来ないが…)。従って、仮組み※を繰り返しながら製作を行う必要があった。
※仮組みとはパーツを接着する以前に組んでみて様子を確認後、接着を行うこと。

外国製のキットを製作すると、国産キットのありがたみを噛み締めることができる。海外ではプラモデル製作は主に大人の趣味であると聞いている。
話が逸れてしまったので戻すが、パーツ同士の合いは良好とは言えない。微調整しながら製作を進める。すると次の工程で先程の微調整が裏目に出たりする(こんな時は鼻歌を歌いながらコーヒーブレイクとした方が良い。そのまま製作を継続すると、あとで後悔することになる。頭に血が上った状況での作業は避けることを強くお勧めする)。
なんとか完成させるとヴィンテージ感漂うアルファロメオP3の格好良さに、目はくぎ付けとなるであろう。このキットは廉価版なのでホイールのスポークが金属製パーツではないことが惜しまれるが、これはこれで良い出来である。

「アルファロメオ 159」1/20 リバイバル    
アルファロメオ159は、1951年に、名車アルファロメオ158(アルフェッタ)の発展型としてデビューしたグランプリカーである。アルファロメオの最後のグランプリカーとしてレースでは当時最強のマシンであった。159を駆ったファンジオは、1951年にワールドチャンピオンとなる栄誉を得たのである。しかし華々しい結果を残したアルファロメオであるが、1951年を最後にグランプリレーシングから撤退した。
さて159のプラモデルであるが、約140個のパーツで構成され、完成後は全長約20㎝となる。
前記したP3の製作と同様に、完成させるにはなかなか手強いキットである。しかし製作中でも特にコクピット内やエンジン周りの作業をしているとニンマリしてしまう時がある。1951年当時のこのエンジンはなんと425㏋/9300rpmを発したのである。

完成後、よくよく鑑賞すると格好良いには違いないが、多少イメージが違うように思えた。少しだけ実車よりふっくらしているように見える。実車を見た経験もない私が偉そうなことは言えないが、リバイバル社の判断に従うしかない(余談だが、ご存知の方もおられようが、プラモデルメーカーは自動車をモデル化する際にデフォルメするそうである。多少車幅を拡げるとより格好良くなるそうだ)。

写真の箱絵は金属製パーツ版。

「アルファロメオ ジュリエッタ スパイダー」1/24 イタレリ 
冒頭でも書かせて頂いたが、アルファロメオ社は戦前までのプレミアムカー専門から経営戦略を変えた。比較的安価な1900系をラインアップして業績拡大を図ったのである。
その後、成功した1900系の後継車として、より小型でスポーティーなジュリエッタ スプリントが1954年にデビューした。そして翌年にはジュリエッタ スパイダーが登場するのである。
私はこのジュリエッタ スパイダーをドライブした経験があるが、運転の楽しさを味わえたのと同時に、あることを痛感させられた。当時の日本とイタリアの自動車産業の大きな差である。日本では国民車といわれるスバル360のデビューを1958年まで待たなければならないが、イタリアではこのような、運転を楽しむだけの自動車が街を走っていたのだ。歴史の差は大きい。

肝心のキットであるが、現在ではイタレリが発売している。しかし元々はイタリアのプロター社がモデル化したプラモデルである。
※以下、プラモデルはやっぱり面白い その3 前編をご参照ください。

発売後、長期間を経ているが作り易く、初心者の方にも勧められる傑作キットだと思う。
写真にもあるようにエンジンルーム内部も再現されている。面白く感じたのはウインドウウォッシャー液を保管している袋を再現していることだ。この袋を再現したキットは初めて見た。エンジンの塗装はラッカー塗料のシルバーを塗装後、溶剤で薄めたエナメル系の艶消しブラックでウェザリングを行っている。
※以下、プラモデルはやっぱり面白い 第1話をご参照ください。

特に問題なく完成し、鑑賞するとボディラインは美しいのだが、同時に可愛らしさも感じられる。実を言うと私がこのキットを製作したのはこれが3台目だ。
それほどこのキットを気に入っているし、実車も大好きなのである。

「アルファロメオGTA 1300ジュニア」1/24   グンゼ(現GSIクレオス)
ジュリエッタ系で成功を収めたアルファロメオ社は、後継車として一回り大型の高性能化させたジュリアを1962年に発売した。ジュリアという名称はジュリエッタの姉という意味からネーミングされた(1.3リッター級のジュリエッタに対してジュリアは1.6リッター級である)。
ジュリア系はエンジンの排気量で区分されることが多い。つまり1300、1600、1750、2000である。これらの排気量の設定は、当時のFIAの各排気量クラスに合わせたとのことである。つまりジュリア購入者がレース参戦することも視野に入れていたのだ。
ジュリアの中でもGTAは孤高のレーシング仕様車だ。アルミボディで軽量化し、95馬力、870kg、175km/h、レース仕様では160馬力、210km/hという高性能を誇った(GTAのAはAllegerita=ライトウェイトの頭文字)。

このキットではそんなレース参戦車を想定して多少キットをいじってみた(バンパーを装着せずにリベットを付けただけだが)。こんな楽しみ方がプラモデル趣味の醍醐味ではないかと思う。
当時のグンゼは数種類のジュリアを発売して、特にアルフィスタ(アルファロメオマニア)を歓喜させたのである。

「アルファロメオ GTAm」1/24   グンゼ(現GSIクレオス)
前記のGTA 1300ジュニアは数年間にわたってツーリングカーレースでもトップの座にあり続けた。またその上位クラスでは2000GTAmが活躍していたのだ。
レースのレギュレーションの関係からオリジナル車輌の1750GTベローチェの排気量を1779ccから1985ccへ拡大した。1750GTAmのAmはツインイグニッション(1気筒あたり2本のプラグ)であることを示している。1971年仕様では240馬力、230km/hという高性能を発揮した。

外見から「おたふく」と親しみを込めて呼ばれることもあるが、ボルト剝き出しのフェンダー等は迫力がある。
グンゼ(現GSIクレオス)がモデル化したこのキットは、独特なボディラインを良く再現していると思う。プラモデルメーカーは外見が似通った複数のモデルを発売する際に、旧金型を改造してしまう場合がある(従って旧モデルの生産は出来なくなる)。グンゼはGTAm専用の金型を用意したのだった。
このキットの製作は塗装で遊んでみた。自分なりのカラーリングを想像し、その通りのカラーが発色出来たら嬉しいものだ(我ながら単純であるが)。

「アルファロメオ 155 V6 TI マルティーニ」1/24   タミヤ
これまでアルファロメオの歴史はレースと共にあった、と言えるだろう。最近のアルファロメオのワークスでの参戦では1990年代のドイツツーリングカー選手権(DTM)、国際ツーリングカー選手権(ITC)が印象に残っている。当時は非常に人気の高かったレースで、日本でも開催されたことがある。
アルファロメオ、メルセデスベンツ、オペルが参戦しエンターテインメント性も高かったのだ(レーシングカー同士の多少のぶつかり合いもあった)。
アルファロメオは市販車である155をベースとしたマシンで参戦した。しかし外観は155であるが、その機関類は全くの別物で最新のレーステクノロジーが搭載されていたのだった。

このレーシングカーのプラモデルはタミヤ製である。製作を開始すると、さすがにタミヤだな、と思わせられる。何故これほど少ない部品点数で、この精密感を出せるのか不思議である。組み立ては全く問題なく終了するが、やはりデカール貼りは多少の根気が必要となる。点数が多く貼る配置を考えないと、最後には貼付位置が無くなってしまうことがありえる。また曲面に貼付する際にも細心の注意が必要である。しかしキットに付属されているカルトグラフ製のデカールの出来は素晴らしく、相当な耐久性がある。多少、無理してもなかなか破れないのだ。
完成後は見えにくいコクピット内であるが、やはり細かな箇所も塗装したい。
ほぼ自己満足になってしまうが、プラモデル製作の楽しみ方であると思う。

最後に

本稿を書く為に数種のアルファロメオに関する書籍を見直してみた。それにより、今まで同社は「熱血のアルファロメオ…」「情熱のアルファロメオ…」という比喩をされることが多い自動車メーカーであることを、再認識をした次第である。
確かにその歴史は決して順調な足取りばかりでは無かった。発売する自動車の信頼性が取り沙汰されたり、また経営が暗礁に乗り上げて国営化されたりしたこともあった。それでも110年間も存在していることは奇跡であると思う。そのことを考えると前述の「熱血の…」、「情熱の…」の表現は現実味を帯びてくるのだ。

これからもアルファロメオはアルファロメオらしく、情熱を感じさせるモデルを発表し、レース活動にも参戦していくことを願ってやまない。

Text & Photo: 桐生 呂目男

「プラモデルはやっぱり面白い」Vol. 1からVol. 8はこちらをどうぞ。