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プラモデルはやっぱりオモシロイ Vol. 3 個人的箱絵ランキング ベスト10 前編

2020年7月15日

「一期一会」巡り会いこそが一番の幸せ。箱絵に魅せられてプラモデルを買う。

● BOX ARTと云われる所以
今回はプラモデルの「箱絵」を採り上げたいと思う。わたしは、今でこそ、プラモデルを購入する際には、まず車種を決めて、いくつかの選択肢の中から決定することが多い。(例えば同じ、ホンダS800のプラモデルを、A社製にするか、それともB社製を選ぶか、など)しかし、幼少の頃(純粋な心がまだあった頃)の選択過程は、とにかくプラモデルが欲しい→模型店で選択に迷う→箱絵がカッコいい→箱を開けてパーツ類を見る→何とか自分で作れそうだ→購入。というプロセスだった。このように、プラモデル購入の選択には、箱絵というファクターの影響が大きいのではないだろうか。箱絵は時にBOX ARTとも呼ばれるが、購入に大きな影響を及ぼすとあっては、ARTと云われるほど、魅力的なものでなければならないのだ。そこで、今回は、わたしが個人的に気に入っている箱絵のベスト10を紹介したい。

私の好きな箱絵 ベスト10

第10位: 「Ferrari 250GT SWB」1/24スケール グンゼ製(現GSIクレオス) 1986年発売

金属パーツがセールスポイント。

最近のプラモデルにはプラスチック製以外のパーツ類、例えば金属製エッチングパーツやレジン製のパーツが付属されていることが多い。1986年発売のこのキットにも金属製パーツが豊富に付属されており、最近の様々なキットにもそれが継承されている。その出発点とも言えるプラモデルの1台だろう。従って、金属製パーツが豊富に付属されていることが、このキットのセールスポイントであり、箱絵は金属製パーツの写真が多くを占めている。また、箱の側面には、「上級者向け」と表示されているが、「上手に完成させられるか否かは貴方の腕次第ですよ」というメッセージ(挑発?)とも受け取れる。マニア心をくすぐったのであろう。

第9位: 「Alfa Romeo Giulietta Spider competizione monopost “Mille Miglia 1956”」1/24スケール プロター製

シルバー塗装具合が人間味あふれる。

最近、イタレリ(イタリアのプラモデルメーカー)ブランドの「アルファロメオ ジュリエッタ スパイダー」が、プラッツ社から再販された。ここで紹介するのは、そのモノポスト(一人乗り)バージョンだ。そのイタレリのジュリエッタ スパイダーももともとはこのキットと同様に、プロター製なのである(発売後20年は経過していると思われる)。このように人気の高いプラモデルは、時間が経過しても、金型さえ残っていれば、様々なブランドで継承されていくのだ。

さて、このキットのどこが気に入ったか。それは箱絵に描かれた、なんだか温かみのある完成見本だった。お世辞にも上手だとは言えないのだが、そこが気に入った。プラモデルは楽しければいいのだ。ディオラマ風の箱絵も、背景の写真とのマッチングがイマイチだ。そこもほのぼのとしていて、いい。

※プロター社とは
1960年代に、イタリアのオートバイレーサーであったタルクィニオ プロヴィーニが設立したプロモデルメーカーである。主にオートバイやクルマを模型化したが、2003年にイタレリによって吸収合併された。

第8位: 「BUGATTI 35B “Grand Prix”」
1/24スケール MONOGRAM製 1991年発売

こちらはバンダイ輸入販売版。

車両の完成写真をディオラマ仕立てとした箱絵である。第9位で紹介したアルファロメオも完成見本を箱絵としていたが、日本製キットではあまり馴染みのない手法である。考えてみれば、国産キットの箱絵はイラストであることが多いが、完成見本写真のほうが消費者には親切なのかもしれない。その完成見本に魅了されて購入した。

ブガッティといえばタイプ35がその代表格の1台である。このタイプ35が走る姿を目の当たりにしたことがあるが、その排気音、迫力ある走りっぷりは、エレガントな外観からは予想だにできない、想像を絶するものであった。名車とはこのようなクルマのことを言うのだな、と思わずにいられなかった経験だった。

第7位: 「トヨタ2000GT 007は二度死ぬ」
1/20スケール 童友社製

ボンドファンなら買わずにはいられない箱絵だ。

私は40年以上前から007を愛している。従って、この箱絵を見て胸を躍らせないわけにはいかなかった。このキットにはジェームズ ボンドとキッシー鈴木(水着姿のボンドガール=浜美枝が演じた)の出来の良いフィギュアが付属されているが、せっかくだから箱絵にも描いてほしかった。現在でも実車の2000GTは人気が高く、数年前の米国のオークションで1億円以上の値が付いたことは記憶に新しい。

トヨタ2000GTが、世界中で人気沸騰中の映画、007のボンドカーになったのだから、当時は夢のような話だったに違いない。

2000GTをボンドカーとしたデザイナーの方にその経緯を伺ったことがある。市販用2000GTを完成させた頃のトヨタ自動車は、このクルマを世界に向けて発信したかった。そこで発案されたのが、ボンドカーとして世界デビューさせることであった。

配給会社との交渉に臨んだが、既にボンドカーは別のクルマに決定していた。また撮影シーンも決まっていて、オープンタイプのクルマであることが必須条件であった。そこでクローズドボディの2000GTのオープン化をトヨペットの横浜港北工場(特捜部門で救急車などの改装も手掛けていた職人が担当した)で、2週間で完成させて採用に至ったそうである。

2000GTのオープン化の定説は、他にもショーン コネリーが長身の為クローズドボディでは乗り込めなかったとも言われているが、理由は様々あるのであろう。

第6位: 「ホンダS800Mクリスタル」
1/24スケール 日東科学製

箱を開けるとことごとく透明

クリスタル?

この箱絵を初めて見た時に、大半の方は驚くのではないかと思う。なにしろタイヤとエンジンルーム内部以外が全て透明なのだ。しかもキラキラと輝いている。こんな箱絵が他にあるだろうか。箱を開けて、パーツを見回してもメッキパーツ以外は透明な物ばかりだ。確かに他社にも「フルビュー」と銘打って、一部をクリヤパーツとしているキットもあるが、このキットほど透明化は徹底していない。しかし、このキットは決していわゆる「イロモノ」ではない。通常のクリヤパーツではないバージョンも発売されたが、素晴らしいキットである。メーカーは日東科学(残念ながら現在はプラモデル部門から撤退している)であるが、他にもトヨタS800やフェアレディSR311などを発売していた。これらも素晴らしいキットで、時々ネットショップでもみかけるので、発見したらぜひ購入して製作してみてほしい。

後編に続く。
5位から1位までは、後編をお楽しみに。

Text & photo: 桐生呂目男

「プラモデルはやっぱり面白い」Vol. 1からVol. 7はこちらをどうぞ。