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【このワンオフ993なんぼ?】日本人オーナーが16年間所有したポルシェ911(993)ターボのワンオフモデルが1億円以上で落札された!

2024年9月12日

ポルシェ911(993)ターボのワンオフモデルがオークションに。このクルマは、工場から出荷された最後の空冷ポルシェ911だ。予想落札金額は100万ユーロ(約1億6,500万円)と言われたが約691,000ユーロ(約1億1,400万円)で落札された。

「993」はポルシェのひとつの時代の終わりを告げた。最後の空冷911であり、多くのファンにとって最後の911であった。最後の「993」特別カラー、メキシカンブルーのカレラ4Sは、1998年3月31日にツッフェンハウゼンの工場を出発した。しかし、同じ年の9月まで納車されなかった1台があり、これが公式に製造された最後の空冷911となった。このワンオフモデルがオークションにかけられ、記録的な高値で落札された!

オークションハウスの「Bonhams(ボナムズ)」が9月7日に開催した「グッドウッド リバイバル コレクターズ モーターカー アンド オートモビリア」オークションに出品された、シャーシ番号370750の「ポルシェ993ターボ」のことだ。この個体は「最後のワルツ」というニックネームを持ち、1998年3月27日にツッフェンハウゼンの生産ラインから出荷された。しかし、このターボはその後オーナーに引き渡されることはなく、ポルシェのスペシャルリクエスト部門(現在は‘ポルシェ エクスクルーシブ マヌファクトゥール’として知られる)によって大規模なトリートメントが施された。

10万ドイツマルク(約820万円)を超える追加装備

希少なエクステリアカラー、オーシャンブルーメタリックをまとった「993」の最初のオーナーは、ドイツの作家クラウス ヴァンダーボルグで、彼はターボを大幅にアップグレードした。オリジナルの注文書が示すように、この努力は決して安くはなかった。当時の基本価格222,500ドイツマルク(約1,830万円)に加え、100,000ドイツマルク(約820万円)を超えるエクストラが追加され、最終的に価格は327,671ドイツマルク(約2,693万円)となった。

車体色に塗られたホイール、ブレーキキャリパーとリヤウインドウワイパーの省略など、カスタマイズは多岐にわたる。

標準408馬力の「911ターボ」は、19,800ドイツマルク(約163万円)でWLS2キットを装備し、出力を450馬力まで引き上げ、「ターボS」のレベルにまで引き上げた。このパッケージには、「ターボS」の4フローエキゾーストシステムも含まれていた。しかし、それは特別な要求の始まりに過ぎなかった。

ボディカラーのブレーキキャリパー

オリジナルのホイールとブレーキキャリパーは、車体色(オーシャンブルーメタリック)に塗装された。ポルシェファンは、ブレーキキャリパーが赤や黄色以外の色(黒は数年前に導入されたばかり)であることは絶対的な例外であることを知っているため、注文書には「ブレーキキャリパーは車体色で、もし可能であれば」と記載され、価格にはクエスチョンマークのみが記されていた。

インテリアのカスタマイズも、数ヶ月に及ぶスペシャルリクエスト部門への訪問の間に行われた。実質的に、内装を構成するすべての部品に「ナイトブルー」という色の革が張られた。細部へのこだわりを見ると、ステアリングコラムのレバー、ウィンドウレギュレーター、エアベント、ルームミラー、ラジオパネルといった小さな部品でさえ、精巧な革張りだった。後者だけでヴァンダーボルグは2,000ドイツマルク(約16万5千円)を費やした。

外装色「オーシャンブルーメタリック」は、1998年モデルの993ターボにのみ設定された。生産終了までに、ZWSシャーシナンバーのターボは266台が製造された。

しかし、それだけではない。オーナーの要望により、このモデルではカーテレフォンや、しばしば酷使されるリヤワイパーが省略されたのだ。さらに、助手席前のダッシュボードにプレートが取り付けられた。このプレートには、「In Memoriam Prof. Ferry Porsche(フェリー ポルシェ教授への想い)」と書かれており、その下には次のような言葉が記されている。「私たちが携えている思い出、私たちが紡ぐ夢、私たちを駆り立てる欲望だけが真実です。私たちはそのことに謙虚でありたい。27.03.1998」。

1998年3月27日、「993」が生産ラインを離れ、スペシャルリクエスト部門に引き渡された日、フェリー ポルシェは88歳でこの世を去った。ポルシェ博士の友人であったというヴァンダーボルグは、「993ターボ」を友人のフェリーに捧げることにした。このため、パーソナライズされたドアシルには「最後のワルツ」というスローガンが記されており、これがこの「993ターボ」のニックネームの由来となっている。

最後の993

1998年9月25日、このワンオフモデルは「ポルシェ センター アルテッティング」を経由してヴァンダーボルグに納車された。その事実は、1998年9月25日付の書類に記されている。「最後のポルシェ993」という件名で、ヴァンダーボルグは自分のターボが「間違いなくポルシェAGが納車した最後の新型993です。したがって、あなたの車はツッフェンハウゼンの工場を出た最後の空冷ポルシェなのです」と記している。

このモデルでは、計器類のパネルまでもがレザーで覆われている。

「ポルシェ センター アルテッティング」は、運転席ドアの内側に取り付けられた2枚目のプレートで、このことを改めて強調している。そこにはこう書かれている。「本日、クラウス ヴァンダーボルグは空冷ボクサーエンジンを搭載した最後のクラシックポルシェ911(993ターボ)を手に入れました。このビートは永遠にあなたのものです!」。

1年足らずで売却
特別なクルマに特別な物語。ヴァンダーボルグがこの夢の車を何年も手元において大事にしていたと思う人は大きな間違いだ。彼は1年足らずで、友人のフェリー ポルシェに捧げるためにカスタマイズした「993ターボ」を売却したのだった。

この特別な993ターボには、10万ドイツマルク(約820万円)を超える特別装備が含まれている。

ドイツから日本のコレクターに渡った「911」は、ベルギーに売却されるまでの16年間、大切に保管された。そのあと「993ターボ」は2年間別のコレクターに保管された後、イギリスへと旅立った。そして最終的にベルギーに戻り、現在のオーナーの手に渡った。

5人の前オーナーがいたにもかかわらず、「911ターボ」はこの26年間で11,029kmしか走っていない。そのため、内外装ともにミントコンディションなのも不思議ではない。

落札価格69万ユーロ(約1億1,400万円)

この「993ターボ」は間もなく新しい住まいを見つけることだろう。この特別な「911」に敬意を表してくれるような家が理想だ。その重要性と特別な構成から、この「993」はコレクターだけのものであり、それは価格にも反映されている。ボナムズは推定価格を83万~94万ユーロ(約1億3,700~1億5,500万円)として、100万ユーロ(約1億6,500万円)の大台を上回っても不思議ではないと予想したが、最終落札価格は約691,000ユーロ(約1億1,400万円)で落札された。

Text: Jan Götze
Photo: Bonhams