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【クラシック オブ ザ デイ】80年代90年代を駆け抜けたクールなホンダ製クーペ コレクターの夢 ホンダCRX ああ、あの頃が懐かしい

2023年8月27日

ホンダCRX:日本のドライビングファングレネード。鍛え抜かれたコンパクトスポーツカーとして、ホンダCRXはスポーティ志向の多くの高価なクルマよりもドライビングの楽しみを提供してくれる。それが「クラシック オブ ザ デイ(今日のクラシックカー)」になっていることは間違いない!

「ホンダCRX」は、スポーツカーとして成立させるために、いかに小細工が必要であるか、そして小細工なしにいかに多くのドライビングプレジャーが得られるかを示している。

1987年から1991年にかけて、ホンダの「ED9」と「EE8」というモデルが生産ラインから出荷され、どちらも超スポーティなハンドリングとホンダらしい個性と信頼性で人々を魅了した。

2代目「ホンダCRX」の心臓部は、130馬力または124馬力(触媒コンバーター仕様)の元気よく回転する16バルブエンジンである。このエンジンのおかげで、車重1トン弱の日本車は、停止状態から時速100kmまで8.5秒で駆け抜けることができた。最高速度は200km/hを優に超える。

ホンダCRXはスポーティだが、装備も充実していた。
Photo:Roman Rätzke

ダブルウィッシュボーンの独立サスペンションを備えた「CRX」は、タイトコーナーを軽快に駆け抜ける。スムーズで超ダイレクトなステアリングは、文字通りスポーツドライバーたちをニヤリとさせる。

バイクレースで採用されたホンダの可変バルブタイミング

もし「CRX」が急カーブでアンダーステアになっても、スロットルを離せばすぐにオーバーステアで向きを変えることができる。アクセルペダルのコントロールで「CRX」を実質的に操ることが可能なのだ。「CRXタイプEE8」はさらに一歩進んでいる。改良された2代目には、バイクレースで採用された可変バルブ制御システムVTECが搭載され、自然吸気エンジンのポテンシャルをフルに引き出し、150馬力を引き出した。

これこそ、コレクターの夢である、ホンダ シビックCRXの初代シリーズの無改造オリジナルモデルだ。
Photo: Sven Krieger

CRXを探すには時間がかかる

「ホンダCRX」に興味がある人は、何よりも時間をかけるべきだ。コレクターは、まだ「シビックCRX」と呼ばれていた1.5リッター、100馬力の繊細な初代モデルを好む。スポーツドライバーは、より進化した後継モデルの「ED9」を選ぶか、VTECを搭載した「EE8」を探す。

1991年以降、「CRX」はハンガリーでコンバーチブルに改造された。その後、大胆なコンセプトチェンジが施されたジェネレーション5の「タルガクーペCRXデルソル」には、ユニークで独自の魅力がある。これらに共通するのは、ホットチューニングのベース車両として人気があったことであり、購入の可能性がある場合は事前に入念な点検が必要である。安ければ安いほど、後々高くつく可能性があるからだ!スペアパーツ供給のボトルネックも楽しみを減らしてしまう。

大林晃平: このアウトビルトのコンテンツではCRXと書いてあるが、日本ではCR-Xとハイフンが入った状態の名前で売られていたCRX、これはどちらも正しい表記であるとご存じだろうか?というのも、本来はワンダーシビック4兄弟の異端児として登場したコーダトロンカ型の自動車の名前はCRXだったのだが、日本ではハイフンがないほうがすでに登録されていたため、CR-Xという名前になった、という背景がある。なんともややこしいが、そこまでして、ホンダはこの名前を使いたかったんだなぁという執念のようなものも感じる名称である。実際にこのCRXは、初代も2代目も大変魅了的だったし、バランスの良いセダン、未来的なハッチバック、ワゴンモデルのシャトル、という他の3兄弟も甲乙つけがたいほど素敵なモデルに仕上げっていたと思う。ホンダには悪いが、シビックの最盛期は初代と、この頃なのではないだろうか。

そんなCRXは一体どういう意味かと言うと、シビック(Civic)ルネッサンスに、未知への可能性を示す「X」を足して作った造語だそうで、ホンダは新しいシビックの発展形としてこの車を考えていた節がある。つまり本来ホンダはCRXをこてこてのスポーツカーではなく、シティランナバウトとして、ちょっと軽く楽しく気持ちよく乗れる2+2の実用車としてこの車を考えていたのではないだろうか。その証拠に、当時のテレビコマーシャルやカタログを見ると、こてこてに走るサーキットなどの写真は皆無で、軽いノリのデートカーとしてのノリでカタログもCMも作られている。

アウトスライド式のサンルーフもそうだし、緊急時に人を駅まで乗せて行けるワンマイルシート(犬が参ってしまうほど狭い、「ワン参る」シートと口の悪いジャーナリストは言っていた)、今見るとなかなかお洒落なシートなど、CRXがシティボーイ(笑)向けのデートカーの要素を持っていることに気が付く。

それがいつの間にかVTECエンジンを乗せられ、ハンドリング性能を高められた結果、あの元ル・マン24時間のチャンピオンレーサーで、世界最高の自動車ジャーナリストと称された、故ポール フレール氏が最後まで所有し、愛用するほどのコンパクトスポーツハッチバックに成長したのだから、面白いといえばいえるが、そもそもはこのディメンションと基本性能が高かったという証左でもあろう。

今見ても、このデザインは新鮮だし、今ホンダからこんな車が出たらいいだろうなぁ、と思ってしまったが、そういえば10年ほど前に、CR-Xの発展形ともいえるCR-Zがあったことを思い出す。あれはなかなか斬新だったし、もちろんCR-Xの発展形とも言えたが、残念ながらCR-Xほどのファントゥドライブな印象も、小粋なインパクトも世の中に与えないまま消滅してしまった。あともうちょっとデザインに気を配ってほしかったことと、初代ほどの新鮮さを感じられない中途半端さが性能にもスタイルにもあったから、というのが個人的な印象なのだがCR-Zの意味は、シビック ルネッサンス ゼロの意味だという。シビックをゼロから再生するという意気込みだったのに、CR-Zは大きなテコ入れも改良もほどこされないまま、本当にゼロになってしまったことは残念でならない。

Text: Lars Hänsch-Petersen