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【スーパーテスト】「トヨタ GR カローラ サーキットエディション」は「ゴルフ R」「シビック TYPE R」に勝てるか?

2024年4月22日

トヨタ GRカローラ サーキットエディションは欧州では正式に販売されていないが、我々は運よく乗る機会を得ることに成功した。早速ザクセンリンクサーキットへGRカローラを持ち込んでゴルフRとライバルたちに勝てるのかテストする。

もしトヨタがこの「GRカローラ」をヨーロッパに持ってきていたら・・・。そうすれば、「GRヤリス」のファンは大喜びし、家族のためのセカンドカーにふさわしい車を手に入れ、「ゴルフR」や「シビック タイプR」から隠れる必要もなかっただろう。「GRカローラ」には「if、and、but」がたくさんある。

「GRカローラ」のようなニッチモデルの投入にはユーロ7への対応やガソリン微粒子フィルターの開発費を割くことが難しいというジレンマがある。ただし「トヨタGRヤリス」は、環境対応ができることをとっくに証明している。時代の流れを的確に捉えており、多くの「ゴルフGTI」ドライバーが「GRヤリス」に乗り換え、「GRヤリス」はすぐに売り切れた。

スーパーテスト:トヨタGRカローラを独占テスト

「GRヤリス」は輸入台数が少なすぎたため、いまだにドイツ市場再投入を心待ちにしている人たちが多くいる。そして今、ファンは「スープラ」や「GR86」以上のモデルを期待しているのだ。特に、「GRカローラ」という形の「ゴルフR」の最強のライバルを・・・。

コックピットは部分的にアルカンターラを使用した上質な外観で、デジタルディスプレイはスポーティで、必要なすべての情報を提供する。

「GRカローラ」との出会い

それにしても、ドイツのナンバープレートがついたGazooの4ドアモデル「GRカローラ」を、なぜ今ここで見ることができるのだろう?

実は、週末に並行輸入業者の「ヤリスGRMN」のウェブサイトで希少モデルを探していたとき、たまたま検索ワードを打ち間違えたら「GRカローラ」が表示された。興味本位でクリックしたら、なんと、実際に3台の新型「GRカローラ」がモニターに表示されたのだ。偽りのない、本物の写真と詳細だ。月曜の朝、電話をすると、社長のハイコ シュミットが、これらの車を本当にアメリカから輸入しているのだと説明してくれた。試乗は?「ええ、もちろんオーケーです。問題ありません。ぜひ、車を受け取りに来てください」とオーケーしてくれた。翌日、我々は速攻でラインラント=プファルツ州まで行き、レンタル契約書にサインして、ザクセンリンクサーキットに向かった。

出発の少し前、シュミットは私たちに、その法外な値段について話した。ちょっと待って!この「GRカローラ」、86,480ユーロ(約1,425万円)だ!!!アメリカでは、ディーラーはベーシックなコアバージョンを35,900ドル(約545万円)、我々が乗ったサーキットエディションを42,900ドル(約650万円)としている。今グーグルを使って、検索している人たちのために言っておくと、これらの「GRカローラ」の価格は、報道時点では32,700ユーロ(約540万円)と39,180ユーロ(約645万円)に相当だった。ドイツでこのような価格であれば、「GRカローラ」は間違いなく興行的にヒットするはずだ。特にVW、アウディ、メルセデスのライバルたちは1万から2万ユーロ(約165~330万円)高いのだから。

では、なぜ84,680ユーロ(約1,425万円)なのか?シュミットによると、付加価値税、関税、輸送費、照明システム、排ガス、WLTPテストを含む輸入報告書の作成、赤色フォグランプ、さらに米国のディーラーサーチャージ約15,000ドル(約225万円)など輸入にかかる費用を合計した結果だと言う。この価格に見合う車なのだろうか?まだ1メートルも走ったことがない「GRカローラ」だ。競合車や弟分の「GRヤリス」と比べて実際どうなのか?試したい衝動に駆られるのはごく自然なことだ!

トヨタはスポーツシートにも改良の手を加えた。

姉妹車から受け継いだ技術の数々

その前に、テクノロジーについて少し。ここでは「8cm」で十分だろう。なんだって?そう、「GRヤリスと「GRカローラ」の大きな違いは、4ドアモデルのホイールベースが長いことだけだ。あとはほとんどを共有している。厳密には?ボンネットの下には、世界で最もパワフルな3気筒エンジンが搭載されている。ただし、その1.6リッターは261馬力と370Nmではなく、305馬力を発生する(排気と電子制御による)。かなり強力なターボはボールベアリングを介して取り付けられている。エンジン本体は片側に油圧マウントされ、振動や不要な動きを最小限に抑えている。トランスミッションはマニュアルの6速ボックスのみ。

全輪駆動システムも「GRヤリス」から採用され、史上最軽量という。ただし、軽量といっても単純なものではない。アルミニウム製のトランスファーケースがあり、通常モードではパワーの60%を前輪に伝える。今回試乗したサーキットエディションでは、「GRヤリス」でおなじみのトルセンロック式デフも前後アクスルに装備されている。ブレーキ、ホイール、サスペンションは?ヤリスと共通で、ダンパーのセットアップは重量増とホイールベースに合わせている。マルチスポークのエンケイ製ホイールは、半インチ幅が広い。リアに追加されたストラットは、ねじれ剛性を最適化するためのものだ。

ボディは?フロントエプロンはハニカムグリルと冷却インテークを備えたアグレッシブなデザインで、ボンネットのエアアウトレットはサーキットエディションにのみ装備される。大きくフレアしたホイールアーチは、フロントで複数のスリットを持ち、リアでボディワークに取り付けられている。ベースモデルに比べ、「GRカローラ」はフロントで20mm、リアで30mmワイド化されている。リヤディフューザーには、「GRカローラ」の最も印象的なデザインディテールであろう、エキゾーストシステムの3本のテールパイプが収められている。重量は?ルーフは鍛造カーボン製で、ドア、ボンネット、テールゲートはヤリスと同じアルミニウム製。すべて合わせて1,483kgの乾燥重量。「GRヤリス」はこれより200kg軽い。競合車は?A35:1,567kg、S3:1,533kg、M135i:1,521kg、ゴルフR:1,504kgだ。さあ、それでは乗ってみよう。

見た目は「GRヤリス」とほぼ変わらない。容量1.6リッターの3気筒ターボ。

正直なところ、私が最後に「カローラ」に乗ったのは10年も前のことだ。いずれにせよ、コックピットはモダンで、ドイツ車のようにデジタル過ぎず、着座位置は少し高すぎるが、横方向のサポートは良好で、ギアレバーは手の届くところにあり、中央のモニターは明確にレイアウトされている。ステアリングホイールの左側にはiMTデュアルスロットルコントロールとESPの設定、ギアレバーの後方にはエコ、ノーマル、スポーツ、カスタムの各ドライビングプログラムのトグルスイッチ(個別設定: ステアリングホイール、アクセルペダル)がある。

印象的なパフォーマンス

サーキットへ出発。「GRヤリス」では、窓を開け、耳を立て、室内は外よりも静かだった。「GRカローラ」はリアの3つのファンファーレが音楽を奏でるのが素晴らしい。フロントの3気筒エンジンの音は、ラウドスピーカーによって人工的にスポーティにされている。走りは?路上に放たれた「GRカローラ」は素晴らしい、まるで映画のようだ。「ゴルフR」に匹敵するかもしれない。「GRカローラ」はカーブで毅然と吸い込まれ、ぶっきらぼうにテールを振ってから、ロックされたアクスルでストレートに引き戻される。長めのホイールベースと幅広のミシュランタイヤは、「GRヤリス」よりも限界は高い。ただ、エンジンだけはそれほどニヤリとさせない。確かにハードにプッシュしてくれるが、AMGやBMW、VWの2リッターターボのほうがずっといい。もちろん、排気量が大きいに越したことはない。高速道路でのドライビングは小さな「ヤリス」よりずっとリラックスできるが、最高速度230km/hというのは信じられない数字だ。駆動方式やシャシーを考えれば、250km/h以上は簡単に出せる。燃費は?世間並みではない。平均でリッターあたり10km/ℓ、慎重に運転すればリッターあたり13.3km/ℓ。これ以上何を望む?

DEKRAのテストオーバルで縦方向のダイナミクスをチェック。スターティングブロックの中でハンドブレーキをかけ、フルスロットルでクラッチを切る。4輪をわずかにスリップさせると、カローラは回転を上げながらダッシュ、6,000メートル地点に向かって生き生きとヨーデルを響かせる。ターボがかなり効いているのがわかる。

重い「GRカローラ」でも「GRヤリス」と同じように5.0秒で0から100km/hまで押し上げることができる。0から200km/hまでの18.7秒という数字も印象的で、「ゴルフR」を除くすべてのライバルが遅い。ヤリスのブレーキとは対照的に、リアはずっと安定したままだが、一般にトヨタ車は、ブレーキングは得意ではない。100km/hから完全停止まで34.1m。すり減ったタイヤを履いたライバル車でも、もう少し短い。ABSは細かく調整されているが、ブレーキング操作のたびにペダルの踏み込みがソフトになる。まあ、ここでは軽量コンパクトの話をしているのであって、2.3トンの「アウディRS 7」の話をしているわけではない。しかも、ザクセンリンクサーキットの数少ないタイトコーナーでは、それが大きな役割を果たすことはないだろう。

カローラは2輪でコーナーを切り裂くが、ライバルはもっと速い。

豊富なグリップとドライビングの楽しさ

コースレイアウトにまったく動じることなく、まるで何度も来たことがあるかのように「カローラ」はカーブを駆け抜ける。サスペンションはほぼ完璧。フロントアクスルは憑りつかれたようにラインに従い、噛みつき、しがみつき、引っ張り、リアは荷重の変化にもスリップすることなく穏やかに従う。高速コーナーはすべてアクセルオンで、優れたフィードバックがすべてのバウンスを見守る。縁石を越えて飛べば飛ぶほどいい。安定性と俊敏性が遊び心に満ちたハーモニーを奏でる。先に批判されたブレーキは、最初はアグレッシブすぎるほど反応し、温度が上がるにつれて少しソフトになるだけだ。一方、タイヤは最初のコーナーから粘る。そう、本当にくっつくのだ。235のミシュラン製パイロットスポーツ4タイヤは、まるでセミスリックタイヤのように感じられ、おかげでコンマ1秒もロスしない。

そのすべてが超高速で、とても楽しいが、残念ながら少なくとも時計上は速くない。コーナーのひとつやふたつで微笑むことはあるが、最初の3セクターでの「GRヤリス」との差は100分の1秒。「カローラ」が決定的なリードを得るのは、高速になってパワーが必要になるラップの終盤だけだ。しかし、競争相手は遠い。同じようなレベルにあるのは「A35」、「S3」、「M135i」だけで、日本車ほど楽しくはないが、ラップタイムは似たようなものだ。しかし、正直なところ、これだけの視覚的な演出があり、レースやラリーの背景があるのだから、もっとパフォーマンスが出るはずだ。

重量と全輪駆動はいいとして、3気筒エンジンはコンパクトカーとしては弱すぎる。また、日本とアメリカでも発売されているモリゾー(MORIZO)エディション(クロースギアレシオ、50kg軽量化、400Nm)が、「ゴルフR」や「シビック タイプR」に近いかというと、そうは思わない。要するに、「GRカローラ」はドイツで「GRヤリス」の異常なまでの人気を得ることはできないだろう。だから、「GRカローラ」がヨーロッパ以外の競合車と戦うのは、ちょうどいいことなのかもしれない。ちなみに、「ゴルフR」と「シビック タイプR」も45,000ドル(約680万円)である。

結論:
いいとは思うが、この「GRカローラ」は見た目のような性能はない。音はいいし、楽しいが、「GRヤリス」レベルの走りしかしない。エンジンはパワーも排気量も足りない。欧州に導入されないのは残念か?イエスでもありノーでもある!ただ、このクルマにカリスマ性は感じられない。

Text: Guido Naumann
Photo: Ronald Sassen / AUTO BILD