【自動車メーカーのテストセンター】メルセデスのテストセンターを訪問 極限状態の自動車テストを取材

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メルセデス・ベンツのインメンディンゲンにあるテストセンターでは、日夜、極限の状態でクルマを走らせている。エンジニアたちが何よりも知りたいのは、その技術の耐久性だ。我々は、テストに同行、新型GLCに乗せてもらった。

AUTO BILDはメルセデスのテストセンターを取材のため訪問した。シュトゥットガルトから南へ130km、インメンディンゲンにある520ヘクタールの旧ドイツ軍兵舎跡地で、毎日、テストドライバーはクルマを責め続けなければならない、それがミッションなのである。

「仕事であろうがなかろうが、私にも感情がある!先日、ほぼ北海に面したパペンブルグに行ったのですが、急カーブが続く12kmのサーキットで、アスファルトの上を全開で追いかけ、給油のときだけ少し休憩して、また全開で走るということを終日繰り返しました。それは言葉では表現できない過酷さです」。

坂道発進: かつて自動車教習所では教習生の悪夢だったが、今では30%の勾配でも、たとえトレーラーであっても、発進補助装置が役に立つため問題ない。隣の70%、80%、90%の坂はGクラスだけのテスト坂道だ。

ラップランドのマイナス30度、ドバイのプラス50度、スペインの未舗装路、ナルド(イタリア)のサーキット、エムスラントの高速道路など、あらゆる場所でメルセデスは新型車をテストしている。そしてインメンディンゲンでは、68kmの道路や砂利道、国際的な交通標識や道路標示を見ることができる。

シリーズ生産化直前の最終手段

ドイツにいたかと思えば、次はフランス、スペイン、中国、日本、韓国、アメリカ・・・。本来、広い世界は、ここではお互いほんの数kmしか離れていない環境に設定されている。

300人の従業員と100人以上のテストドライバーを抱えるテストセンターの責任者、フランク イェーガーは、「私たちは量産前の最後の手段であり、ここではお客様の代弁者であると考えています」と語る。宣伝文句のように聞こえるが、そこにはメルセデス・ベンツの信頼性、耐久性、安全性に関するテストを現実として日々行っている。

コンクリートのでこぼこ道を時速30kmで走ると・・・。悪いものから本当に悪いものまで、さまざまなものが見えてくる。

1990年代末、ダイムラーは赤字に陥り、その結果、「210」系の「Eクラス(1995~2002)や「203」系のCクラス(2000~2007)が錆びつくことになったのだ。そして12年前、品質などに問題を抱えていた「Cクラス」や「Eクラス」を見た人は、メルセデスの「The best or nothing」というスローガンを馬鹿にして笑った。

しかし今日、もう誰もメルセデスを笑うことはない。現在、彼らはインメンゲンに塩水試験施設を持ち、今日、メルセデスは3年前の「GLC」で、AUTO BILD中古車耐久テストで見事優勝し、「Bクラス」が2位となったのだ。なぜなら、すべてがほぼ完璧に仕上げられているからだ。

シフトごとの固定タスク

「今回のテストはタクシーみたいなものだ。 常にストップ&ゴーで、エンジンオフ、エンジンオンを繰り返し、最高速度はせいぜい30km/h、それも何時間も。そんなことする人はいないよ!」とテスターの一人、シモン ワナーは自身を皮肉りながら笑う。

このプロトタイプはすでに2万5000km以上を走行し、シモン ワナー(31歳、写真)をはじめとする約350人のテスターが、GLCで200万km(!)を走破した。

モトローラ製の小さな箱、「オンボードユニット(OBU)」がフロントガラスに貼り付けられている。エンジニアから渡されたプログラムをこなしていく。時には、パワーウィンドウスイッチやトランクの電動駆動ユニットを何度も操作しなければならない。

起動中のコンピューターがすべてを記録

「以前は実際のシュトゥットガルトの交通機関内で行っていたのですが、ここではもっと簡単で、しかも結果は再現可能なのです」と彼は言う。例えば、標識認識システムが何かを見落としたり、シャーシに異音がしたりしても、トランク内のコンピューターがすべてを記録し、その結果をリアルタイムでエンジニアに伝えるというシステムとなっている。

ラゲッジコンパートメントに設置されたコンピューター: エンジニアの机の上にリアルタイムでデータのすべてが表示される。

「君たちは革張りの椅子に涼しく座っているが、私はエアコンのコンプレッサーに砂利が飛んできたり、すべての隙間に埃が溜まっている中にいるんだ」とシモン ワナーはテストトラックの過酷さを教えてくれる。メルセデスは、定期的にトラクターで砂利をならし、車にとっての痛みをいつも同じにするようにしているのである。

悪路に勝るものなし

そのために、何メートルも何メートルも悪路のひながたを石膏で型を取り、その複製をテストセンターの道路網に組み込んだのだ。シャーシの耐久性やボディの剛性を試すには、悪路に勝るものはない。

スーパージェット付きアウトドアシャワー: ここでテストコースの汚れを洗い流す。

インメンデンデンでは、3交代制で週7日勤務している。朝6時から午後2時までが早番、その後が遅番だ。夜10時になると、夜勤者が交代する。作業内容によっては、8時間で700kmの距離を走ることもある。と31歳の自動車メカトロニクス技術者であるシモン ワナーは語る。「平均して一日450kmの走行距離です」。

しかも、日々違うクルマに乗らなくてはいけない。「ドライバーには、すべてのボタンを押し、遊んでもらい、できるだけ多くの機能を試してもらいたい」とボスのイェーガーは言う。もちろんガラガラという異常な音も含めて、すべてメモすることが義務付けられている。メルセデスはトレッキングでもガタがきてはいけないのである。

急なコンクリートの坂道には「赤いトラック」、より過酷な「黒いトラック」と、スキー場のように、過酷さが区分され、表示されている。そんなテストコースを毎日テスターたちは走り続けている。「本当はメルセデス・ベンツで快適に走りたいのに、100kmも悪路を我慢して走らなければならない」。耐久性はクルマだけでなく、テストに係わるスタッフにも要求されるのだった。

【ABJのコメント】
自動車の耐久テスト、それは自動車好きにとっては気になる仕事のひとつだろうが、実際のテストドライバーの仕事は、当たり前だが、地味で、忍耐が必要で、とにかく淡々とこなさなくてはいけない仕事だと聞く。もちろんそんなことは当たり前で、最高速度に挑戦するようなライトスタッフみたいな華やかさなど皆無の、肉体的にも精神的にも厳しい仕事なのだろう。

低速で長時間淡々と走ったり、停止と発進を果てしなく繰り返したり、予想もしないように地味なドライビングをひたすらこなす、そういう内容であることは想像もつく。そんなテストドライバーの中でも、メルセデス・ベンツの場合はどうなのだろう、と興味をもったものの、詳細は記されておらず、ちょっとがっかりであった。まあそんなレシピはきっと秘中の秘であり、本当に大切な部分に関してはそれぞれのメーカーの極秘の部分なのかもしれない。そういえばかつてメルセデス・ベンツのテストコースには90度バンクもあったが、あれはどういう意味を持っていて、どうして90度に設定されているのか、今でも謎のままである。どなたかあの90度バンクの意味を知っていたら教えてほしい。

さて、そんなメルセデス・ベンツであるが本文中にも記されている通り、一時期品質が低下していた時もあったが、最近では最盛期に近い状況まで復活してきているのではないか、と感じることも多い。もし実際にそうであるとしたら、今回登場してきたテスターたちの努力も、その理由の一部分に違いない。(KO)

Text: Andreas May
加筆: 大林晃平
Photo: Mercedes-Benz