1. ホーム
  2. セダン&ワゴン
  3. 新しいコンセプトで生まれ変わった新型メルセデス・ベンツCLAに試乗 立派になった3代目やいかに?

新しいコンセプトで生まれ変わった新型メルセデス・ベンツCLAに試乗 立派になった3代目やいかに?

2026年8月13日

メルセデスベンツから数えて3代目となる新型CLAとCLAシューティングブレークが発売となった。わが国でも累計6万台以上売れたという人気モデルの新型に、酷暑の千葉で大林晃平が試乗した。

カールベンツが世界初の自動車の特許を取得し、ゴットリップダイムラーが4つの車輪を持つ自動車を世界で初めて完成させてから、今年で140年なのだという。そのアニバーサリーイヤーを記念し、Sクラスメルセデスが世界を巡る旅に出ていたり、様々な催しが開催されているが、そんな記念すべき年に日本で発売開始となったのが3代目となる今回のCLAである。

【140年、140カ所】新型「メルセデス・ベンツ Sクラス」によるグローバルジャーニー その22 東京・表参道で歴史と未来が出会う:https://autobild.jp/68637/

定番となったスリーポインテッドスターのポジショニングライト。CLAは左右一つずつ。

累計6万台以上が我が国で売れたCLAだが、3代目CLAは全長4730㎜、全幅1835㎜とずいぶん立派なサイズとなった。大きな特徴はメルセデス・ベンツ全体の進路変更にともない、内燃機関の自動車と電気自動車(BEV)を同じMMAと呼ばれるプラットフォームを用いて、同じ車形の中で展開することになったことだ。まずは内燃機関搭載のハイブリッドのCLA180とCLA220という2種類のパワー違いのモデルが日本で発売となった。CLA with EQ Technologyという例によって長ったらしい名前のBEVは後日追加される予定で、またあらためて試乗会に呼んでもらえる(らしい)。

CLA200はBEVである。異なるパワーソースを1つのボディ、プラットフォームで使い分ける。

180と220はコンピューターROMのチューニングで54PS,100Nmもの違いを生み出しているそうで、実際プレス説明会でも「チップのうち2つはエヌヴィデアです」とか「ソフトウエアのMB OSはアップグレードし進化し続けるOSです」と、もはや自動車の説明会とは言えない複雑さで、実際のCLAの内装も運転席側から助手席に至るまですべて広大なディスプレイに覆われ絢爛な眺めとなっている。

とはいっても、このご自慢のMBUXスーパースクリーンはブルメスターサウンドシステム、ヘッドアップディスプレイ、自動開閉トランクリッド、マルチビームLEDなどなどとのセットオプションで57万8千円を払わないとついてこない。さらに今回の試乗車にはレザーアルティコシート、プライバシーガラス、19インチAMGホイール、スポーティーエンジンサウンド(!)といったAMGラインパッケージ59万8千円も装備され、渋いソリッドのグレーのボディカラーもマヌファクトゥールアルペングレーと呼ばれるオプション装備で24万円が必要なオプションのボディカラーなのであった。

1.5リッター4気筒エンジンは新開発の「M252」。電動モーターとインバーターを統合した新開発の8速DCTと組み合わせる。

結局今回試乗させていただいたCLA180の合計価格は7,426,000円。これに保障プラスとメンテナンスプラスを追加すると7,734,000円と限りなく800万円に近付く。CLA800万円時代、ということを忘れないようにしながら炎天下の試乗に出かけることにする。なお今回のCLAはすべてグラスルーフ仕様ということで車内は明るくて良いのだが、それと引き換えにガラスそのものは手で触るのをためらうほど熱くなっていた。とはいえエアコンは効くので涼しく保たれてはいるのでご安心を。

幅が狭い前席座面。ステアリングのスイッチ類は使いやすい。
後席足元は十分に広い。身長170センチのドライバーがポジションを合わせるとこれだけの空間がある。

一段とカッコよくなったスタイル重視のCLAに後席の快適性を求めてはいけないのか、後席の乗り降りは困難で、その上着座すると今度は前席の背もたれが大きく前方視界を妨げるため、閉塞感満点となる。さらに、頭は熱くなったガラスに接するほどのスレスレさで、酷暑日に座ることはお勧めできない空間であった。4人乗りが欲しければCかEかSを買うべきで、やはりCLAは基本2人乗りが正しい車なのではないかと思う。

実際に走ってみれば、新開発のM252という形式を持つガソリン内燃機関に8速eDCTを組み合わせて、かなりの領域までモーターでも走行可能になった新しいハイブリッドシステムは今回試乗した180の方でもパワーは十分以上で、かなり荒れた路面でも決して不快な突き上げなどを感じないサスペンションとも相まって日常使いで不満が出ることはないだろう。もちろん高速時のフラット感や、メルセデス・ベンツらしく深いたっぷりとしたリッチなライド感のようなものは感じないが、それこそそういう乗り心地はもはやS400dでも買わなければ味わうことのできない時代なのだから致し方ない。

流麗なルーフラインを描く新型CLA。Cd値0.21を実現する優れた空力性能も大きな特徴だ。

だがそういう自動車全体の部分よりも今回気になったのは、メルセデス・ベンツらしからぬ細部の処理のいくつかであった。常にフロントウインドーに反射し、視界にうざったく入ってくるヘッドアップディスプレイのフチ部分やセンタースピーカー。小さく見にくく判別しにくいハザードスイッチとそのスイッチ部分の仕上げ(センターコンソールの切りっぱなし部分が手に痛い)。広大なMBUXスーパースクリーンを持つくせに、妙に小さく必要な情報の拾いにくいスピードメーターやタコメーター表記、時計、外気温などのディスプレイ。美しくもなく、ムダ(と思われる)に大きなセンターコンソールに侵食され幅が狭くゆとりのない前席……「CLAなんだからその辺は我慢して欲しい」とメルセデスは言いたいのかもしれないが、込みこみ800万円カーとしてはお粗末な作りこみと思わざるを得ない、ちょっと納得がいかないディテールが多すぎる。

フロントガラスの大部分にダッシュボード上のものが映り込んでいる。

さらにこれはメルセデスベンツ全体の思想にも関連することなのだが、従来「使いにくい」と言われ続ける悪評の(?)シフトセレクターは、より一層使いにくくなったとしか言いようがない。左折の際にうっかりウインカーレバーと間違えて操作すると走行中にニュートラルにセレクトできたり、停車中は簡単にリバースに入ったりしたりと疑問の多いセレクターレバーの先端に、今回から豆粒がたのエンジンスタータースイッチが装備され、乗り込んでブレーキを踏みながらこの部分を押すとスタンバイOKとなる……のだが、降りる時に押してもエンジンオフにはならない、とメルセデスのスタッフが説明してくれる。

日本車のウインカーレバーとほぼ同じところにあるシフトセレクター。とても合理的なのだが、左折の際にうっかりウインカーと間違えてしまうとニュートラルに入ってしまう。ハザードスイッチは小さく手前のフチはエッジが立っていて痛い。

ではどうやってオフにするかというと、「そのままドアを開けてキーをロックするとオフになります」というのだが、人間の命を預ける大きな走行機械に、そこまで全幅の信頼してドアを開けてそのまま降りていいものなのか、どうにも不安が付きまとう。さらに「今回からリバースに入れても確認のサウンドは出ませんので気を付けてください」とのこと。世界で最も安全を重視し、人間のことを信用しなかったが故に操作系をシンプルにしてきたはずのメルセデス・ベンツだったのに、この豹変ぶりはどうなのだろう?

もはやCクラスとほぼ同じサイズになったCLA。

せめてメルセデス・ベンツはどの車も同じ操作系で、初めて乗った人も戸惑うことなく直感的に操作することのできる自動車であってほしい、140年もの歴史を持つメーカーなのだから。そう思いながら眩いばかりにMBUXスーパースクリーンが輝くCLAの試乗を終えた。

Text:大林晃平
Photo:アウトビルトジャパン(Auto Bild Japan)