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スーパーテスト フェラーリF8トリブートをサーキットで初テスト スーパーV8フェラーリのパフォーマンスやいかに

2021年3月20日

フェラーリF8トリブート: ラウジッツリンクサーキットで911ターボSより速いラップタイム記録。フェラーリF8トリブートは理論上では488 GTBとピスタの中では最高の存在であると言われている。今回のスーパーテストでは、720馬力のイタリア車が真価を発揮できるかが試される。全レポート。

数年に一度、フェラーリのスーパーテストは我々を喜びで包む。
2014年には「458スペチアーレ」、2017年には「488 GTB」。
「フェラーリF8トリブート」のスーパーテストは、実際には2021年半ばまで予定されていなかったが、我々がラウジッツリンクサーキット(現ユーロスピードウェイ ラウジッツ)でテストしたいとフェラーリ側に提案したところ、すべてのアレンジがかなり迅速に進んで、あっという間に、トランポに載せられたブルーの「F8」がチームと一緒にラウジッツに到着した。
その時の天気は良好で、気温18度、曇り、雨は降っていなかったが、しかし我々の不安を察知したかのように、テスト開始時間に合わせて細かい霧雨が降ってきた。
我々はピットに座って、「F8」をジャッキアップし、その隣に新しいタイヤを用意し、時が来るのを待った。
コンピューターを測定しながらイタリア人たちはチャバッタとチーズとパルマハムを美味しそうに食べている。

720馬力は1489kgのウェイトで楽な時間を過ごす

そしてその間に、我々は「トリブート」を改めてじっくりと観察できた。
一見すると「488 GTB」に似ていて、アルミスペースフレームのシャシーとミッドエンジンのコンセプトを除けば、ほとんどといっていいほど手が加えられていない。
そしてそのデザインは、過去44年間の歴代モデルへのオマージュともなっている。
同時に、開発者たちはエアロダイナミクスと熱処理の改善点を見つけ対処している。
例えば、ブレーキベントが追加されたコンパクトなLEDヘッドライトは、その過程で生まれたものだ。
リアを見てみれば、通気性と冷却性を高め、軽量化を図るために、ボンネットには通気口付きのレキサン樹脂が採用されている。
その部分はどこかで見覚えがある?
そう、F40だ。
4本のテールライトも、この伝説からコピーされたもののようだ。

プリティなスポーツカー。ボディワークは紛れもなくフェラーリスタイルだ。

いつものような大きなウィングこそないものの、アクティブフラップを備えた巨大なディフューザーを採用し、ダウンフォースは「488」に比べて10%アップしている。
エンジンは、先代モデルと比較して18kg軽量化され、720馬力と770Nmをクランクシャフトに送り出している。
1498キロの車両重量にしては十分すぎるほどだ。

巨大なトルクにご注意!

乗ってドライバーズシートに座ってみると、ほぼすべてが今までと同じだ。
トランスミッション操作にはおなじみのカーボンアームを採用したセンターコンソール、開放感のある空間、そして部分的ステアリングホイールに備わる数々のコントロールスイッチ。
「ウェット」、「スポーツ」、「レース」のドライビングモード用のマネッティーノロータリースイッチがセットされている。
そして、ステアリングホイールのウィンカーは慣れることはない形状のものだ。
そうこうしているうちに、雨はやみ、コースは再びドライになった。
コースインしてすぐに、「911ターボS」のようにカーブに突っ込んではいけないことがわかる。
「F8」は、ステアリングとアクセルのフィーリングがもう少し必要だ。
例えば、コーナーの立ち上がりで安定した手つきでステアリングを握り、ストレートでその巨大なトルクをできるだけ早く再利用できるようにすることが肝要だ。
したがって、次のギアへの変速はストレートの頂点で入れるのがベストだ。
またターボラグはまったくなく、新しくチューニングを施された8気筒エンジンは、自然吸気エンジンに近い挙動を示す。
アンダーステアは「F8」にとって他の惑星の言語であり、ペダルで繊細に感じられるセラミックブレーキを限界まで押し込んだときでさえも、アンダーステアは生じない。
ラウジッツリンクの3本の長いストレートでは、トリブートはそのパワーをフルに発揮し、デュアルクラッチトランスミッションはいつものように素早くシフトし、クルマを揺さぶることもなく、強烈な推進力とともに一直線に駆け抜けた。

慎重に。コーナーを抜けるときは、ゆっくりと加速する必要がある。そうしないと、簡単にコントロールを失う可能性がある。

要約すれば、このクラス中、これほどまでに俊敏性を核としながらも、「F8トリブート」ほど、明確にその性能を発揮するクルマは他にはないだろう。
数字で見るなら?
ベストラップタイムは1分29秒06だった。
それは、「911ターボS」よりも速いものの、「ランボルギーニ ウラカンEVO」よりも少し遅い。さらに細かく再セッティングされたローンチコントロールは、「F8」を時速100kmまで2.8秒、200まで7.8秒、300まで20.1秒で押し上げる。
「マクラーレン720S」は時速300kmまで19.4秒でこれを達成しているが、「911ターボS」はすでにここでは6秒も遅れている。
さらにトップギアで80km/hから120km/hに達するまでには、「720」が8.8秒、「911ターボS」は10.5秒必要だが、フェラーリはその中間加速をわずか4.9秒で通過した。
ブレーキングに関しても、「F8」はついにライバルたちと肩を並べた。
特にABSのコントロールレンジとペダルのフィーリングは高く評価される。
100km/h走行時から完全停止まで30.6mというのは、グリップ力のあるミシュラン製タイヤのおかげでもあるだろう。

ここからが本領発揮だ。最高速ギアで80km/hから120km/hまで、F8トリブートが必要とする時間はわずか4.9秒と、競合モデルよりもはるかに勝っている。

トリブートの燃料消費はそれなりにまともだ

また120~250km/hの間ではくつろいでいるように快適に感じ、慌ただしくなることもなくクルージングができる。
さらに後ろから聴こえてくるサウンドには、単純にニヤリとさせられる。
ターボとOPF(直噴エンジン排ガス浄化用微粒子フィルター)による減衰にもかかわらず、それは素晴らしく唸るような音で、シフトダウンすると、突然の中間スロットルのサルボで吠える。
シャシーは段差やブリッジのエッジの凹凸にも寛容だ。
ただ、硬すぎるスポーツシートは、このようなGTには似合わない。
3時間のドライブで背中がすり減った。
そして、我々のテスト時の平均燃費のリッターあたり6.4km/ℓという数字は、サーキットでのテスト走行であることを考慮すれば、許容範囲ではないだろうか。
それでも、フェラーリの主張する、9.4km/ℓという標準燃料消費量をどうやって達成するかは謎のままではあるが。

許容範囲。サーキットテスト中の平均燃費は6.4km/ℓという許容範囲内に収まってはいるが、明らかに基準燃料消費量は超えている。

最後に何か他に楽しいものはあるか?

カーボン製ホイールを省き、カップ用タイヤのみを注文した場合、「F8トリブート(ベース価格: 228,661ユーロ=約3,000万円)」は、重要なドライビングダイナミクスのエクストラをすべて備えた現行の「911ターボS」と同じくらいの価格になる。
しかし、フェラーリの最初の7年間の無料メンテナンスを考慮に入れるならば、ポルシェはフェラーリより高価だとも言えるだろう。

Conclusion:
今まで、フェラーリは美しいけど、うるさいという印象しかなかった。
そしてドライビングダイナミクスの面では、いつも何かが足りない感じだった。
でもこの「F8トリブート」となら仲良くなれる。
スピード、レーストラック、快適性、サウンドを兼ね備えたマルチタレントだ。

あの「ポルシェ911ターボS」よりも速い、というのはちょっとした衝撃だが、「ポルシェ911ターボS」というクルマは昔からラグジュアリーな雰囲気と装備を持った存在であるし、そもそもそれぞれの成り立ちから考えれば「F8トリブート」のほうが有利な部分も多いことは自明の理である。
よりスポーツカーとして、軽く、小さく(決して小さくはないけれど)、基本的なパッケージに優れる、そんな物理的に優位な要因が多かったことこそが「F8」の勝利に結び付いたと思われる。
また「F8トリブート」のエクステリアデザインには大げさなエアロパーツや、派手なホイールといったこけおどし的な部分も少なく、迫力を内に秘めたシンプルでスリークなスタイリングであったことがなんとも格好良く感じられる部分ではないだろうか。

Text: Guido Naumann
加筆: 大林晃平
Photo: Ronald Sassen / AUTO BILD