【このクルマなんぼ?】30年落ちのV12メルセデスSクラス 走行距離はたったの13,454キロ

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なんと!新車に近い状態の約30年経っているメルセデス600SELが販売されている。29年間の走行距離はわずか13,454キロメートル。このメルセデス600SELはあまり運転されなかった。V12付きのW140 果たしてその価格は?

W140世代の400,000台を超えるメルセデスSクラスが1991年から1998年の間に製造されたが、珍しいボディカラー「アルマンダインレッド」を身にまとったこの個体は本当に珍しい1台だ。そして過去29年間に、この高級セダンはわずか13,454キロしか走っていない。これは年間464キロの走行距離に相当する。

元ショーファードリブン(運転手付き)車両

1991年11月に初めて登録されたこのSクラスは、工場を出た初期のW140の1台だ。そしてその600SELは、ジュネーブの正規メルセデスディーラーを介して、運転手付きリムジンとしてベンツを使用するスイスの会社に販売された。今日、多くのW140の距離計には20万キロ以上または30万キロ前後と刻まれているが、このSクラスはたったの13,454キロしか走っていない。その走行距離は、ミュンヘン近郊のディーラー、「Sportwagen Teiber」により保証されている!

29年の間に、このSクラスは13,454km走行しただけだった。

オリジナルコンディションの600 SEL

したがって、600SELの車両登録文書には、オーナー名は1つしかない。さらに、事故歴もなく、ディーラーによると、オリジナルのペイント状態だという。写真を通しても、新車同様の好もしい印象を得ることができる。このW140は、2020年6月に新しいタイヤを含む新しい整備を受け、錆は見られず、オリジナルコンディションを保ったまま提示されている。600SELは設備の整った工場出荷時そのもののようだ。珍しいカラーコンビネーション「アルマンダインレッド」と「クリーム色のベロア張りシート」に加えて、前オーナーはオプションとして、電気的に調整可能な後部の個別シート、電動式リアブラインド、すべてに断熱ガラス、ベッカーメキシコ2000ラジオ、エアコンを選択して備え付けている。更には、リア、リアアクスルのレベルコントロールなども装着されている。このW140は、生産初年度の個体であるため、V12の自然吸気エンジン(M120)は408馬力および最大580Nmのトルクを発揮する。パワーは、4速オートマチックトランスミッションによって提供される。このドライブの組み合わせは、1991年から1993年にのみ提供され、その後、同じエンジンは394馬力および570Nmを発揮した。

個別シートを備えた後席と「クリーム」カラーの新しいベロア装備。程度はめちゃくちゃよさそうだ。

購入価格:4万ユーロ(約508万円)以上

メルセデス600SELは、約30年を経て、走行距離わずか13,454 kmで、完全な車載フォルダー、完全なサービス履歴、およびすべての利用可能なドキュメントとともに販売されている。ディーラー、「Sportwagen Teiber」は、珍しいW140を41,500ユーロで提供したいと考えている。(つまり約 600万円くらい)通常のW140と比較すると、この価格は高いように思えるかもしれないが、市場を詳しくチェックしてみれば、手入れの行き届いた走行距離の少ない600 SELは見つけることが難しいことがわかる。最も安いモデルならば、スタート価格は約8,000ユーロ(約100万円)くらいからだが、当然そういうモデルは整備や修理や交換部品など、購入後に多くのお金がかかることは覚悟しなければならない。5桁のマイレージを備えた手入れの行き届いたモデルであれば、簡単に3万ユーロ(約381万円)を超える費用がかかる可能性があるため、この非常に特別な600 SELの価格はヨーロッパでは妥当だと言える。

見た目にもきれいな600 SELのボンネットの下に収まった6リッターV12からは408馬力と580Nmというトルクが発揮される。

W140が発表された時は、とにかく驚いたものだった。何に一番驚いたかといえば、そのサイズで歴代のSクラスの中でももっとも迫力があり、押出しの強いデザインのクルマなのではないだろうか。その中でもV12 の600SELは陸の王者のような車ではあったが、いささかエンジンの信頼性などに難があって、整備費がかさんでしまった挙句、なくなく500SELに乗り換えた知人を知っている。

さて、今回の物件は、アルマンダインレッド(けっこうこの当時のW124 などには塗られた例が多い)に、クリーム色のベロア生地(残念ながらW126のベロア生地よりも薄手で、周囲の畝などもW126ほどの品質感はないが)という組み合わせはなかなか趣味の良いチョイスで、個人的に気になるスペックである。ベッカーのオーディオも当時の良き音を奏でるだろうし(もちろんカセットで)、長年きちんと整備されてきたのだろう、という良家のお育ちの良さが染み出ている一台だ。

日本でもこういう、長年ヤナセで完全整備を受け続け、極端に走行距離の少ない車輛が発掘されることもあり、その場合にはたいていヘタクソ棒(コーナーポール)と、純正愛車セットが未使用でトランクに納まっていたり、レースのシートカバーが予備分(つまり2セット。1セットをクリーニングに出すときにもう1セットを使うのだという)がついていたりする。そういうクルマを見つけた時には、ぜひぜひ思い切ってハンコをついていただきたいものではあるが、このヨーロッパの600SELもそんな一台だったのだろう。スイスのどこかの山の上の高級住宅街(神戸の六麓荘みたいなところ)にひっそりと30年近くお住まいだったW140 さん、なのかもしれない。

それにしても600万円とは、その価格に関しては正直高い、と思うが、これがヨーロッパでの標準価格なのだろうか? さすがに距離は少なく、いくらその程度が良くともW140にこの価格というのは日本ではあり得ない。
わが国でこういう特上物件に巡り合った時に、驚くのがその価格で、なんでこの程度の良さでこんなに安いのだろう、とつぶやいてしまうことも多いほどで、その価格はたいてい2ケタ万円くらいが相場である(100万円を超えないくらい)。
だが、この時代のメルセデスベンツはやはり物がよろしい。維持費がかかっても乗ってみたい、と思わせる怪しい魅力と圧倒的な存在感が、今のSクラスとの大きな違いである。

Text: Jan Götze
加筆:大林晃平