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【新着情報】かっこいいレトロモデル ボルボP1800 レストモッドとして復活

2020年9月9日

ボルボ P1800 レストモッドという選択

1800シアンはボルボからの息を飲むようなレストモッドモデルだ。ボルボのレーシング部門、シアンは伝説のP1800をベースに、レトロクーペを開発している。そしてそのレトロクーペには、426馬力が備わっていて、完全に運転補助なしで、天文学的な価格が付いている。

一か月ほど前にお伝えした、不思議なボルボ プロトタイプを取り巻く謎が解けた。
【スクープ? 伝説のボルボP1800の復活? 不思議なボルボのテストカーの正体は?】 
テープで覆われたP1800のカバーの下には、スウェーデン車のブランドファンだけでなく、多くのクラシックカーファンに喜びの涙をもたら、レストモッドプロジェクトがあったのだった。
ボルボの親会社、ギーリーのレーシング部門であるシアンは、ボルボの現在の環境と安全への取り組みに対する、完全なアンチテーゼを表す車両を開発。
ニュースとしてもっとも喜ばしいのは、このクーペがワンオフのままではないということだ。

※レストモッド(Restomod)とは、「Restore」と「Modify」あるいは「Modernize」を組み合わせた造語で、「レストアと共に、改造&現代風にアレンジした車両」のことだ。

カーボンとスチールで強化されたシャシー

P1800シアンの鍵となるデータは、まるでサラブレッドのレーシングカーのようなサウンドだ。990キログラムの乾燥重量のボディには、426馬力と455Nmのトルクを発揮するエンジンが備わっている。その2リッター4気筒ターボは、ボルボのツーリングカー、「C30」や「S60 TC1」にも搭載されているパワーユニットだ。シフトは、ホリンガー製のマニュアル5速トランスミッションによって行われ、1速は左後部に位置している。リアアクスルにはリミテッドスリップデフがあり、後輪の間でパワーを配分する。オールディーズシャシーがねじれるのを防ぐため、スチールとカーボンで強化されている。

リアセンターのスポーツエキゾーストパイプは、どうやらオリジナルのP1800には似つかわしくない音を出すようだ。

ブレーキブースター?ありえない!?

シャシー側には、前後ダブルウィッシュボーンのフルアジャスタブルコイルオーバーサスペンションが装着されている。ブレーキはAPレーシングの4ピストンキャリパーをフロントに採用し、18インチのセンターロック付きホイールを装着している。ちなみに、当初は電気駆動も検討されていたという。シアンレーシングの創設者、クリスチャン ダール氏によれば、60年代を純粋に思い起こさせるために内燃機関を採用することが決定されたという。ESPやABSなどの運転補助装置が全くないことも、これに当てはまる。ブレーキブースターさえも見当たらない。

リアに移設されたグリーンハウスは、P1800シアンをさらにロングノーズにしている。

プラス50万ユーロ(約6,350万円)

レーシングインテリアの上に伸びる魅惑的なボディワーク。見た目はP1800に酷似しているが、すべてカーボン製で、寸法も変更されている。グリーンハウスはさらに後方に配置され、ホイールアーチが大きくなったことで、大きなホイールとワイドなトレッドのためのスペースが確保された。トランクリッドから中央に突き出たフューエルフィラーキャップや、中央のスポーツエキゾーストなどのディテールによって、このクルマは完成している。P1800シアンは、かつてのポールスターのレーシングカーを彷彿とさせる、「レベルブルー(Rebel Blue)」で塗装されている。P1800シアンはワンオフのままではなく、2021年からレトロ愛好家に向けて限定生産小シリーズで販売される予定だ。ただし、50万ユーロ(約6,350万円)未満で作品を完成させることはできないため、最高品質のコンポーネントを搭載した超限定生産、小シリーズのレトロクーペは、1台当たり相当な高価格モデルとなることが予想される。
はてさて、コレクターズモデルとなるかどうか、正式なデビューと価格発表が待たれるところだ。

P1800のプロポーションがやや変わったことで、ポールスターP1の思い出がよみがえる。

先日掲載した、ちょっと謎のボルボP1800 とは、これだったのか、という謎がとけた。解けてみれば、ワンオフではなく限定生産ながら、ちゃんと生産される、という点が実に以外であった。そしてその価格に関しても、うーんと唸らざるを得ない価格であった…。

写真を見る限り、その完成度も、細かい部分のディテールなども大変凝ったもので、そりゃこれだけ手の込んだものを作れば仕方ないでしょう、という気もしないではない。昨今こういうレストモッドの車を発表&発売することは多く、それらは大変高額で、なかにはナンバーがつきません、と断言している車もあるなど、様々だ。昔の素材、製造方法をそのままで(つまり信頼性も、維持することの大変さも昔と同じということだ)、という車もあるし、このボルボP1800 のように現代の技術と改良を施し、今の世の中の交通環境の中でも十分実用となるように配慮された一台もある。ボルボのテクノロジーと製品レベルで作られたのであれば、このP1800 の完成度は高いだろうし、いい加減なつくりでは決してないだろうことは想像もつく。だが6,000万円以上という価格が適正なのかどうかは、ちょっと私には判断つきにくい。それほどのお金を払って、あえてボルボP1800 を買う人はいるのだろうか?

それでも……ふと思うのは、これはスウェーデンやヨーロッパの人たちにとっては、私たちよりも特別な1台なのかもしれない、なと。私たちにとってのベレGとか、ギャランGTOのように(なんてことのない車であっても)、どこか思い出の中に残る青春の1台。それがヨーロッパ人にとってはボルボP1800 だとしたら、懐メロを聴くような懐かしさでボルボを選ぶのかもしれない。

Text: Moritz Doka
加筆:大林晃平
Source: cyanracing.com
Photo: Cyan Racing