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水陸両用車その2 この「キャラバンボート」 文字通りキャラバンとボートです 日本にはない発想

2020年8月8日

キャラバンボート: チボー キャラバンボート(Tchibo DepartureOne)、水陸両用

キャラバン? それともとボート? キャラバンボートはその両方を兼ね備えている。休日を楽しみませんか? ドイツにあるチボー社は、すぐに動く屋形船(ハウスボート)に変えられるキャラバン(牽引型キャンパー)を提供している。しかし、1点、注意すべきことがある!その問題点とは?

そのことは、チボー社の技術により、ティータイムでの夢物語ではなくなった。独ハンブルクに在るチボー社は、様々なツアーに加えて、携帯電話の契約、衣料品、小型家電、そして花の販売に加え、車のリースさえも行っている総合会社だ。しかし、何よりも、今やチボー社ではいわゆる「キャラバンボート」のようなものも展開しているのだ!完全にゼロから開発された「デパーチャーワン」は、キャラバンと移動式ハウスボートが一つになったもので、陸上だけでなく水上でも快適でゆったりとした休暇を過ごせるように設計されている。

陸上では、「デパーチャーワン」は専用のボートトレーラーでキャラバンとして使用することができ、牽引力2.5トン以上の四輪駆動車で牽引することができるという。標準的な2アクスル特殊トレーラーにしっかりと固定されているので、通常のキャラバンのようにどんなキャンプ場にも出掛けて行くことができる。そしてその状況から湖や川では、10分もあればハウスボートになる。「デパーチャーワン」は15~20センチの喫水で航行可能となるため、浅い内陸の水域でも問題なく機能する。

2種類のバージョンが用意されている

キャラバンとハウスボートの組み合わせには2つのサイズが存在する。長さ7メートルで最大5名まで乗車可能な「デパーチャーワンM」と、長さ1メートルで最大6名まで乗車可能な「デパーチャーワンXL」の2種類のバージョンだ。幅はどちらも2.35メートルだ。どちらのバージョンを選んでも、ガスコンロ、シンク、冷凍冷蔵庫を備えたキッチンが標準装備されている。ダイニングエリアにはテーブル、最大4人用の寝台、トイレとシャワーが備わっている。さらに、温水ボイラーを備えた独立した暖房システムが標準装備されている。船尾にはハーフルーフ付きのテラスがあり、屋根はサンデッキとして使用できる。メーカーは、「デパーチャーワンM」に400キログラム、より大きい「デパーチャーワンXL」に500キログラムの積載量を保証している。

オプションでアップグレードすれば、大型のXLバージョンも近海で使用可能だ。
©Tchibo

海上では無免許運転が可能だ

2種類のサイズに加えて、様々なモーターも提供されているが、これは別途購入する必要がある。15馬力のパワーユニットを使用すれば、ボートは免許なしで運転することができる(ドイツ国内での話。ちなみに日本では2馬力までは無免許で可能)が、ボートの免許を持っている人であれば、50馬力までアップグレードすることができる。さらにまた電動モーターも利用可能だ。このパワーユニットはオーストラリアから来ており、チボー社はドイツ コンポジット社(Deutsche Composite GmbH)と共同で「デパーチャーワン」を開発&販売している。そのアルミニウム構造のおかげで、キャラバンボートは特に軽く、燃料を多大に消費しないで航行可能となっている。またその素材の特性上、完全にリサイクルも可能だ。

ボートの運転免許がなくても15馬力エンジンのハンドルを握ることができる(ただし、ドイツ国内での話)。©Tchibo

たくさんのお金で多くの贅沢を

しかし、モバイルハウスボートには、1点注意すべきことがある。それは決して掘り出し物ではないということだ。「デパーチャーワンM」は105,315ユーロ(約1290万円)、大きい「デパーチャーワンXL」は少なくとも117,215ユーロ(約1465万円)する。むろん価格にはエンジンは含まれていない。若干耳寄りな話題ではあるが、チボー社は、XLバージョンのニューオーナーに、完全自動コーヒーマシン「エスペルト コーヒー(Esperto Caffe)」とコーヒー2 キロをプレゼントしているという。冗談なのか真剣なのかはわからないが、とにかく船上でエスプレッソを味わうことはできる。15馬力のエンジン(5267ユーロ=約65万円)を搭載した場合、16歳以上なら運転免許証なしですべてのドイツ国内の水路(ライン川を除く内陸および海上)を航行することができる。ボートの運転免許所有者は、30馬力(7549ユーロ=約94万円)、または50馬力(9280ユーロ=約116万円)のどちらかからパワーユニットを選択できる。

ダイニングエリアはロフト風になっていて、パノラマウィンドウが多いため、室内が広く見える。 ©Tchibo

追加装備を選べば装備は充実するが、それに伴ってもちろん価格はさらにアップする。用意されている装備は、溜まったものは全て2400ワットで蒸発させる廃水フリーのガストイレ、船外グリル、自給自足のための水処理システム、リアビューカメラ、サンデッキ用のウォークインソーラーシステムなどだ。また、2名の追加宿泊者のためのスペースを提供する昇降式ルーフベッドも追加で注文できる。キャラバンボートは、www.tchibo.de/caravanboatで2020年末まですぐに購入可能だ。キャラバンボートは、購入者からのオーダーと要望に応じて、それぞれのスペックで製造される。しかし、購入者は、新しい車両の準備が整うまでに最大10ヶ月かかることがあるので、忍耐強く待つ必要がある。さらにキャラバンボートは、ハンザ同盟都市ハベルベルク(ザクセン=アンハルト州)にあるキービッツベルク造船所において手作業で製作された後、現地でピックアップすることができる。また、追加料金を払えば、配送することも可能となっている(ということは、受けとりにいかないと、別料金がしっかりかかるということだ)。

「デパーチャーワン」のアルミ船体は海水に強い。 ©Tchibo

このキャラバンボート「デパーチャーワン」の難点をあげつらうことは簡単だ。耐久性だって、高価なことだって、そして乗る場所(水面に上げおろしのできる岸を持った、かなり凪いだ状況の水面が必要だろう)などなど、ちょっと考えただけでも、これで大丈夫かな、という点は簡単に思いつく。

だがそれでも僕はこの商品を生み出したことを、率直に面白く夢のある商品である、と評価したい。ボートでそれなりのクオリティーのものであったならば、この金額は「ごく普通」のものともいえるし、ヨーロッパのみならず、アメリカやオーストラリアなどでは、この「デパーチャーワン」を楽しめるような環境などいくらでもあるだろうし、日本だって地方に行けば楽しめる場所はきっとあるはずである。そもそもこういう楽しい商品、今の日本に見当たらないでしょう?

まずはともあれ、こういう商品を考え、きっちり製品にしたことを素直に評価したいし、夏の楽しい夢とするのであればその形もなかなかスタイリッシュで格好いいではないか。だれでも思うことと考えることはできる。しかし、それを様々な苦難を克服しながら形にする、ということは強い意志と行動力が必要となるのである。昔は日本にもそういうメーカーや町工場があったのだが…。

Text: Adele Moser
加筆:大林晃平