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【このZ3なんぼ?】BMW Z3 Mクーペがオークションにかけられた この日本人がデザインした希少なZ3の想定落札価格は?

2023年10月25日

BMW Z3 M クーペ(2002年式)がオークションにかけられた。このMクーペはファーストハンドで、走行距離はわずか33,000km、そして希少なカラーだ。しかし、予想価格はかなりのものだ!

BMWは現在のデザイン言語について多くの批判を受けている。過去を振り返ってみると、これはミュンヘンのBMWにとって目新しいことではないことがわかる。型破りな外観でBMWファンを鼻白ませたモデルは何度もあった。特に2000年代初頭のバングル(クリス バングル)がデザインした7シリーズ(E65)と6シリーズ(E63/E64)では、その反発は大きかった。そして、これら2つのモデルは今でもヤングタイマーとしてやや苦戦しているが、当初誤解されていた他のモデルは、真のコレクターズアイテムへと成熟した。

それは「Z3クーペ」のことである。BMWが1997年のIAAで「Z3」のエステートクーペのようなものを発表したとき、多くのファンが驚いた。その翌年に発表された「Z3クーペ」は、直列6気筒、後輪駆動、マニュアルトランスミッションといったBMWの長所を備えていたにもかかわらず、日本人の永島譲二がデザインした「Z3クーペ」は苦戦を強いられた。ドイツではその大胆なフォルムから、すぐに「ターンシュー(スニーカー)」の愛称で呼ばれるようになり、アメリカでは「ピエロの靴」として親しまれた。

18,000台弱が生産されたBMW Z3クーペ

しかし、そんな時代は終わった。1998年から2002年にかけて、世界中でわずか17,815台しか生産されなかった「Z3クーペ」は人気の高い名車となった。その中でも、「M3」エンジンを搭載した「Mクーペ」は特に人気が高い!

BMW Z3 Mクーペは、「スティールグレーメタリック」のカラーで15台のみが納車されたと言われている。

多くの点で特別な「Z3 Mクーペ」が、ボナムスのオークションに出品された。外装色「スティールグレーメタリック」(伝説的なM3 CSLの色)で納車された「Mクーペ」はわずか15台で、この個体は、BMWが公式に確認した、最後に製造された「Z3 Mクーペ」でもある。

Mクーペのファーストハンド

2002年に製造されたこのモデルは、2003年2月20日にBMWの従業員である最初の、そして唯一のオーナーに引き渡された。この「Z3 Mクーペ」にはいくつかの文字が記されているが(最初のオーナーはBMW GmbH)、ずっと1人のオーナーの手元にあった。

20年以上の時を経て、オリジナルの走行距離はわずか33,446km。「Z3」は事故も再塗装もなく、オリジナルのコンディションである。フロントの小さな石欠けは、オリジナルであることの証拠でもある。

Z3 Mクーペは過去20年間にわずか33,446キロしか走行していない。ボディワーク、機関共に最高のコンディションと言われている。

履歴はすべて記録されている。最終点検は2020年2月、走行距離31,811kmのときに実施され、その際にブレーキも全面的に整備されている。つまり、「Z3 M」の次のオーナーがこのクルマに乗りたいと思うのであれば、間違いなくマイナー点検の時期がやってくるということだ。

「Z3 M」はそのために作られた。最初のモデルは、「M3 E36」の3.2リッター直列6気筒エンジンを搭載してデリバリーされた。「S50」と命名されたこのエンジンは、「Z3」では321馬力を発生し、全長わずか4.03メートルの「Mクーペ」ではまずまずのパフォーマンスを発揮する。100km/hまでのスプリントはわずか5.4秒、最高速度は電子制御で250km/hに制限されている。

後期型は325馬力

2001年春、BMWはさらに改良を加え、「M3 E46」用の3.2リッター直列6気筒エンジン、「S54」を小型の「Z3」に移植した。「M3」の343馬力の代わりに、このエンジンは325馬力しか発生しない。18馬力のロスの理由は、短くなったエキゾーストシステムだ。その結果、0-100km/hのタイムはコンマ1秒向上した。

E46 M3に搭載されたS54エンジンは、BMW Z3 Mクーペでは製造の最後の2年間にのみ使用された。

一方、「S54」を搭載した後期の「Z3 M」は特に人気が高い。伝えられるところによると、「M3 E46」エンジンを搭載した「Z3 Mクーペ」は世界で1,112台しかデリバリーされなかった。そのうち左ハンドルのEU仕様は269台のみである。

ここに展示されている「Mクーペ」は、「スティールグレー/キウイ」というカラーコンビネーションと走行距離の少なさだけでなく、エンジンも含めて、本当に希少なものなのだ。

「スティールグレーメタリック」と「キウイ」レザーの組み合わせは極めて珍しい。

そのような希少性が、少額では手に入らないことは言うまでもない。近年、「Z3 M(ロードスター、クーペを問わず)」の価格はかなり高騰している。321馬力(243馬力にスロットダウンされた米国仕様ではない)の純正「Z3 Mロードスター」は、もはや3万ユーロ(約480万円)以下では手に入らない。

推定価格は10万~15万ユーロ(約1,600~2,400万円)

「Mクーペ」はもっと高価で、ここでは少なくとも4万ユーロ(約640万円)の予算が必要だ。走行距離が少ないモデルや希少な色の組み合わせは、6万ユーロ(約860万円)以上することもある。このことが、この「Z3 Mクーペ」の推定価格を説明している。10万ユーロから15万ユーロ(約1,600~2,400万円)の間である(最低価格なし)。

大林晃平:
BMW Z3をボンドカーと認めることには、個人的に異議があるという自説の駄文は先日アウトビルト内でも熱く語った(?)ばかりだが、
https://autobild.jp/28119/
今回はそのZ3のクーペ版のMロードスターのお話である。

とここでいきなりいちゃもんを付けるようで申し訳ないが、どう考えてもこの車、クーペといえるような流麗なデザインのボディを持っているとは言い難いし、ボディ形状も、3ドアハッチバックというか、ものすごくお世辞として盛って表現すれば「シューティングブレーク」といえなくもないような形状のボディを身にまとった車輛である。

スタイルの好き嫌いに関しては個人的な意見になってしまうし、趣味趣向の範疇だから、良い悪いをああだこうだ持論で述べても仕方ないとはいつも思う。それにオリジナルともいえるZ3はわが同胞の日本人デザイナーである永島譲二先生の作品だから、この場で大きな声で難癖をつけることには抵抗があるが、それでもこの車がものすごく格好いいかというと、ちょっとウーンどうかなぁという気持ちになってしまう。

もし熱烈なZ3ファンの方および、永島先生ご自身がこのページを読んでいたとしたら申し訳ありません、と先に謝っておきたいが、ロードスターもクーペもなんだかずんぐりむっくりとして、頭でっかちな感じがしませんか? オリジナルのZ3はどことなくやつ目ウナギみたいに見えてしまうし、クーペの方は魚で例えればマンボウみたいなイメージで、せっかくのBMWとしてのオープン2シーターや高性能クーペに必要な伸びやかさや流麗さといった言葉をどうにも描きにくい(前述の「ヤツメウナギ」に似ているというのは、過去のBMWデザインのオマージュなのかもしれないが、それにしてももっと何とかならなかったのか、と思う)。

ロードスターのリアデザインは妙に尻切れトンボでバランス悪いし、クーペに至っては本文中もあるように口の悪いジャーナリストによれば「ピエロの履いている靴みたいな恰好」だそうで、それはなんとも言い得て妙な表現であると共感してしまう。でもこの2台のうちから、どちらが好きか一台を選ばないといけないとしたら、僕はクーペの方を選びたい。別にハッチバックタイプが故の実用性うんぬんかんぬんではなく、クーペの方がプロテインを飲みすぎてしまった筋肉隆々スポーツマンを連想させるような、高性能を感じさせる迫力を感じるからで、これはこれで他の誰にも似ていないからだ。そう考えると、いっそのことボンドカーとして劇中に登場させるのであれば、ロードスターよりもクーペの方がよかったような気もするし、スペース的に余裕がありそうだから、Mも秘密兵器を装備しやすかっただろうが、おそらくZ3のデビュー時期と「トゥモローネヴァーダイ」の公開時期とのからみでそれはできなかったのかもしれない。なんとも大人の事情である。

世の中にはそういう考えの方も多いのか、日本市場で現在、中古の普通のZ3 Mロードスターが700万円台で推移していることが多いのに比べ、Z3 Mクーペの方はそれよりも若干高く、800万円程度で取引がされていることが意外と多い。

もちろんそれはクーペの方が、もともと販売価格が高く、台数も少ないということ理由かもしれないが、なんとなくクーペの方が恰好良く見えるからということではないのかな、とも思う。そしてボンドカーとして秘密兵器満載で出てくるのであれば、クーペの方がなんとなく似合っていたのではないか、とも思ってしまうのである。皆様はロードスターとクーペ、どちらの方がお好みでありましょうか?

蛇足ながらクーペの方がロードスターよりも、2.8倍ほど剛性が高いと言われている。なんでまたそんな中途半端な数値であるのかはわからないが、とにかく乗って、真剣にドライビングに没頭するのであれば、クーペの方がずっと骨太でホンモノの「M」ということであろう。

Text: Jan Götze
Photo: Bonhams