【007祭り】One Car Is Not Enough: 1台だけじゃぜんぜん足りない MI6のカンパニーカー「ボンドカーの系譜をたどる」 Part2

413

1969年封切りの『女王陛下の007』はシリーズの第6作目になる。ボンドカーはアストンマーティンDBS。“Q”に秘密装備はなかったが、人生で唯一結婚したボンドのウェディングカーとなった。だが地味なボンドカーということは間違いなく、実際に市場においてもこのモデルは比較的に不人気である。そしてそれは、たった一作だけ出演したジョージ レイゼンビーの姿ともどこかオーバーラップしてしまうのである。(レイゼンビーの英語はオーストラリアなまりがあまりにひどく、撮影後にすべて吹き替えられたという。しかし本人はそのことに気がつかなかったとも伝えられている)(Photo: Werk)

『007 ダイヤモンドは永遠に(1971)』ではジル セント ジョン演じるボンドガールのティファニー ケースがフォード マスタング マッハ1に乗った。(それにしても、ボンドガールの名前はどれもだいたい隠語ではあるが、ティファニー ケースとは、『ダイヤモンドは永遠に』というタイトルにひっかけたことは間違えない)ラスベガスのカーチェイスシーンの中でボンドは右側2輪走行で路地に入り、途中で(いつのまにか)左2輪ですり抜けるという撮影ミスがあり、これは007映画史に残るミスである。(Photo: Werk)

クルマによる脱出シーンはボンドカーに限らない。『007 ダイヤモンドは永遠に』では宇宙研究ステーションからの脱出に月面車を使った。だがこのマシーンはえらく作りが悪く、パラボラアンテナは鳥かごみたいだし、走るたびにアームがボヨンボヨンと動いてしまうのは興ざめ。(そもそもこの作りじゃ、カプセルから酸素が漏れちゃうし、月面の凹凸を超えられそうにない)
(Photo: Werk)

『007 黄金銃を持つ男(1974)』では、市内のカーディーラーに展示してあったAMCホーネットを盗み(おいおい)、目を見張るようなスタントを演じた。悪党スカラマンガを追走するボンド(ロジャー ムーアの2作目である)は、破壊された橋を飛び越え、空中でノーズを進行方向に向けたまま車体を360度回転させてみせた。当時最高のコンピュータを使用して徹底的にジャンプ台の角度や速度などを計算 & 解析したこのシーンは多くのファンにとって印象に残るシーンの一つだろう(残念ながら映画では、スローになったり、妙な効果音がつけられたりした編集が、おおいに速度感をそいでしまってはいるが)。(Photo: Werk)

ショーン コネリー演じるボンドのお気に入りはアストンマーティンだったが、ロジャー ムーアの出演作ではロータスが多く使われることになった。エスプリの最初の登場は『007 私を愛したスパイ(1977』)』で、初期のエスプリS1が登場。(内装はチェック柄である)

写真はボンドガールを演じたバーバラ バック(ロシアのスパイで、アニヤ アマソワ少佐。暗号名は「XXX(トリプルエックス)」。意味は18歳未満、お断り)とロジャー ムーア。

『007 私を愛したスパイ』に登場するエスプリS1は地上を走るだけではなく、敵のキャロライン マンロー演じる「ナオミ」が操縦するベルヘリコプターに追われて海中に……だがあっという間に潜水艦に変身するのでご安心を。
“水対空”ミサイルなどを備えており、水中攻撃の備えは完璧だったし、海岸に上がるシーンでは魚を海水浴客にプレゼントするなどサービスも満点である。
なお、サブマリンになった姿のロータス エスプリをデザインしたのは、ケン アダム、特撮技術ディレクターはデレク メディングス。デレクはサンダーバードにも関わったスタッフでもあり、ケン アダムともども007に長年撮影に貢献した超一流スタッフである。モーリス ビンダーの影絵もそうだが、当時のスタッフはキラ星のごとく素晴らしいメンバー勢揃いである。

なお、サーの称号を受けたロジャー ムーアは1973(『死ぬのは奴らだ』)~85年(『美しき獲物たち』)の間に制作された合計7作品でジェームズ ボンドを演じ、2017年5月23日に89年の生涯を閉じた。ショーン コネリーのボンドよりもやさしく甘いボンド像だが、娯楽映画としては、ロジャー ムーアのボンド作品が一番楽しい、という声がファンの間では大きいのも事実である。(Photo: Getty Images)

(Photo: Werk)

海中へエスプリごとダイブする直前にボンドが助手席のロシアの女スパイ、アニヤ・アマソワ少佐に話し掛ける。
その時のセリフ、
“Can you swim ?”は、
ロジャー ムーアだから言えるセリフでショーン コネリーでは似合わない。
ロータス社がイオンプロに売り込んでエスプリが採用されたらしいが、実際に撮影するには数台のエスプリが必要となる。しかし、ロータス社の所有車輌だけでは不足した為、コーリン チャップマン個人所有のエスプリまで駆り出られたという。
それにしてもボンドガールとかタイトルのネーミングって際どいものが多い。
「プッシー ガロア」とか、いいのかな?
Pussyは子猫ちゃんという意味だが、性的なスラングとしても使われている。
その他にも、
Holy Goodhead (なんて上手な??だ!)
ゼニア・オナトップ(They you are on a top)
トリプルエックス(XXX)
と果てしなく続く。
「私を愛したスパイ」の主題歌は「Nobody does it better」というのだが、アメリカ合衆国の何処かの州では放送禁止になったらしい。
「貴方ほど〝それ″が上手い人はいない」と解釈できるそうだ(;^_^A)。

 『ムーンレイカー(1979)』のブラジルロケで、タキシード姿でMPラッフェルとともにポーズを決めるロジャー ムーア。(アルミホイールが微妙にダサい)。実際に映画の中ではMPラッフェルをボンドカーとして使用することはなく、ちょい役として使用しただけであるが、ブラジルの車としての選択と登場の意味は間違っていない(同様に、途中でわざわざ登場するコンコルドも同様の意味を持っている。当時はブリティッシュエアウェイズがコンコルドを、ブラジルに就航させていた、という事実こそが大切なのである)

『ユア アイズ オンリー(1981)』の504と2CV(角目なので、2CV6)のカーチェイスシーン。このシーンは宮崎駿の「ルパン3世カリオストロの城」のシーンに影響を受けたといわれており、実際にそうと思われる、似たようなシーンが登場する(栗の木の枝や網の中をユーラスに突破するシーンなどがその一例)。なお、ボンドあやつる黄色いシトロエン2CVはこの映画用にモディファイされており、シトロエンGS用のエンジンに換装されていた。 (Photo: Werk)

“Q”が準備したボンドカー、最初に登場する白いロータス エスプリ ターボは「特殊な防犯装置搭載」というステッカーを貼ってあったにもかかわらず、敵がサイドウインドーを割った瞬間に自爆してしまう。仕方なくボンドはキャロル ブーケ演じるメリナ ハブロックの黄色い2CVに乗ることとなり、独特のシフトレバーに戸惑うシーンさえ出てくる。

映画に公開に合わせ、メーカーのシトロエンは作中に登場したのと同じ明るいイエローに塗装した2CVを限定販売、弾丸が貫通した跡を示すステッカーや、007のロゴステッカーまで用意された。 (Photo: Werk)

第12作『007 ユア アイズ オンリー(1981)』の後半のボンドカーは派手なカラーのロータス エスプリ ターボ。スパイがこんな目立つ車にのってどうする、とは思うが、それこそが娯楽映画の中の娯楽映画である。特別なQ装備は登場しなかったが、ショーン コネリー演じるボンドのお気に入りはアストンマーティンだったが、ロジャー ムーアの出演作ではロータス エスプリが代表的なボンドカーといえよう。オリン製のスキーがなんとも時代を表して格好いい。

ドアに貼られた007のステッカーはもちろん撮影時にははがされ、ついていない。(あたりまえだ)。イタリアにおける撮影中に着ているロジャー ムーアのジャケットにも誇らしげに007のロゴが入っている。 (Photo: Werk)

(Photo: Getty Images)

『007 ユア アイズ オンリー』の1シーン。GPビーチバギー(?)に乗った敵のエミール ロック (演じるのはマイケル ゴダード)がイタリアの砂浜にてボンドに攻撃をしかける。ボンドがちょっと浜辺には不釣り合いなドレスシャツでいるのは、この日の朝までカサンドラ ハリス演じる「リスル伯爵夫人」と一夜を共にしていたためであるが、最初のボンドガールはわりとあっけなく殺されてしまう、の法則通り、リスル伯爵夫人はこのバギーにはねられ死んでしまう。ちなみにカサンドラ ハリスは後のピアース ブロスナンの妻だったが39歳にてがんで逝去している。
(Photo: Picture Alliance)

おやじ! ガソリン満タン! 
『007 オクトパシー(1983)』のオープニング シークエンス、つまり話の枕で使用したアクロスターBD5。もちろん実機であり、ちゃんとこの機体を使って撮影したそうだ。なお、ロジャー ムーアはボンド役を降板したい意向だったが、最終的に説得されて次回作の『美しき獲物たち』まで出演した。(Photo: Picture Alliance)

新しいボンドに新しいボンドカー。『007 リビング デイライツ(1987)』ではティモシー ダルトンが4代目ジェームズ ボンドに就任し、ボンドカーとしてアストンマーティンV8ヴァンテージ ヴォランテが登場。秘密兵器はミサイル、レーザー発射砲、タイヤから伸びるスパイクとサイドから出るスノースキー板と自爆装置。危険な爆発物、満載の車輛である。なお、冒頭のシーンでは珍しくアウディ200に乗っているボンドの姿が見られるが、いまひとつしっくりこない。(オープニングのシーンで登場するSASのランドローバー ディフェンダーの方がしっくりと似合う。 (Photo: Werk)

007 ゴールデンアイ(1995)』では『007 ゴールドフィンガー』と『007 サンダーボール作戦』で活躍したアストンマーティンDB5が復活、5代目ボンドとして華々しく登場したピアース ブロスナンがカンヌの裏山で適役のファムケ ヤンセン演じる「ゼニア オナトップ」の赤いフェラーリ355とバトルを演じた。当時、この映画を見た故徳大寺有恒氏(当時アストンオーナーだった)は「どう考えてもあんなの無理、無理」とコメントしていたものである。

それにしてもこの撮影シーンを見る限り、ブロスナンは妙に嬉しそうにボンド役を演じているが、それもそのはず、実は4代目ボンドに就任するはずだったが、CMの関係で延期になってしまい、待ちに待ったボンド役がついにきたから、である。(Photo: Werk)

『007 ゴールデンアイ』ではボンドカーに初めてBMWが起用され、この後しばらくはBMWがボンドカーとしてスクリーンに登場する。この写真は発表間もないZ3にボンドとイザベラ スコルブコ」演じるボンドガール:ナターリア シミョノヴァの撮影シーン。ただしZ3が登場するのはQの開発研究室と、この2つのシーンだけで、あっという間にセスナに乗り換えてしまう。(BMWがボンドカーに決定したのは、映画の途中から、といううわさもあり、つまり急ごしらえの付け加えシーンである可能性も高い) (Photo: Werk)

ボンドカーではないが『007 ゴールデンアイ』にはボンドカーとしてT54戦車も登場する。ボンドがロシア陸軍の戦車をかっぱらってサンクトペテルブルグの街をめちゃくちゃに破壊しながら、ウルモフ将軍を追走する。なんだか正義の味方にあるまじき行為ではあるが、モンティー ノーマン作曲のジェームズ ボンドのテーマをバックに、戦車で豪快に街を破壊するこの景気良さこそが、当時の007映画の勢いを象徴していた、ともいえよう。
なお、この写真を見てもわかるように、キャタピラーにはゴムの保護カバーがつけられており、路面を傷めない配慮がなされてはいた。だが盗んだ戦車で古都や止まっている車輛を破壊しまくるとは、英国情報部の後始末が心配になってしまう。 (Photo: Werk)

レンタカー、返却するぜ!
第18作の『007 トゥモロー ネバー ダイ(1997)』で、はBMW750iLを携帯電話によるリモート操作で操ったり、ルーフ下のロケットランチャーや、自動タイヤ空気圧復帰装置、BMWロゴ下の金属のこぎりなどの新兵器でハンブルクの駐車場を舞台にカーチェイスを繰り広げたりする。Qがレンタカー会社AVISの係員として赤い背広(同社の制服である)を着て登場し、「車両保険は?」とか「同乗者保険は?」などと冗談交じりに話し、最後に「傷つけずに返却してくれよ」というセリフに対するボンドの行為が、このシーン。でも、ちゃんとAVISの会社に落下する、というのがオチとなっている。この頃の007はそういったノリの娯楽映画であり、それはそれで観る方としてはおおいに肩の力を抜いて満喫することができた。最近のように、出生の秘密や、MI6内部のゴタゴタ人事問題など、娯楽映画にとっては邪魔な、いい迷惑でしかないのだから。
なお、この無人走行シーンの撮影は、リアシートに運転席を設置した750を複数用意し、リアシートにスタントマンが潜り込んで運転したそうである。おつかれさま。(Photo: Werk)

ピアース ブロスナンがボンド役を演じた4作品のうちBMWは3回登場しているが『007 ワールド イズ ノット イナフ(1999)』でボンドカーを勤めたのはZ8。遠隔操作機能、サイドロケットランチャーなどを装備し、大活躍かと思いきや、途中でチェーンソー付きヘリコプターに真っ二つにされ、大した活躍もしないまま、桟橋から海へと沈んでしまう。なんだかボンドカーも、それを提供したBMWもそれで本当によかったのだろうか?なお、撮影用の車輛は実車のZ8ではなく、FRPで型を取ってそっくりに作ったレプリカだったという。
(Photo: Werk)

撮影中のスナップ。これで見る限り実車かな、とも思うが、どうやら中身はアメリカンV8のレプリカだったという。このZ8でBMWボンドカー時代は終焉を迎え、次回には「あの」アストンが、ちょっとやりすぎの装備テンコ盛りで復帰することとなる。(Photo: Werk)

次ページ  『007 ダイ アナザー デイ』 アストンマーティン ヴァンキッシュ

「ボンドカーの系譜をたどる」 Part1はこちら