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日独ホットハッチ一騎打ち!ホンダ シビック タイプR対VW ゴルフ GTI クラブスポーツ 果たして勝者は?

2021年8月31日

シビック タイプRがゴルフ GTI クラブスポーツと競演。300馬力のVW ゴルフ GTI クラブスポーツが320馬力のホンダシビック タイプRに挑む。さて勝者やいかに。

昔々、その昔・・・、「フォルクスワーゲン ゴルフGTI」は、スポーティなコンパクトカーの代表格であり、他の追随を許さない存在だった。 現在、多くのメーカーが、似たような「ホットハッチ」を生み出しており、その性能は、しばしば、「GTI」のレベルを明らかに上回っている。 そこでVWは、現行の「GTI」のトップモデルに、「クラブスポーツ」という名称を与え、公式に300馬力を設定した。

ゴルフ GTI クラブスポーツが、今回、第10世代のシビック(2017年以降)に挑戦する。「シビック」シリーズの現在のトップアスリートは、「タイプR」と呼ばれ、320馬力を前輪にのみ伝達、性能を発揮する。この馬力プラス「タイプR」の巨大なリアウイングは、伝説の「GTI」の第8世代モデルにどのように立ち向かうだろうか?

見た目だけではわからない、シビックの個性

巨大なリアウイング、3本のテールパイプ、豪華な20インチホイール・・・、「タイプR」は、見た目にもその意思を強く感じさせるものだ。レーストラックでは、「タイプR」は、レースカーのように躍動し、かつスムーズで、問題にならないほどの走行性によって、「クラブスポーツ」に勝っている。それに比べて、「クラブスポーツ」は、ほとんどお行儀がよすぎる。そして明確にレイアウトされている標準型「ゴルフ」のようにインテリアもこの傾向を引き継いでいる。素晴らしい空間、上質な素材、それは典型的な「ゴルフ」だ。

一方、「シビック」はスポーツに徹している。十分なスペース、確かな作り、シンプルな操作性は、ホンダにもある。さらに、横方向のサポートが素晴らしく、深く組み込まれたスポーツシート、グリップ感のあるアルカンターラのステアリングホイールだけでなく、ペダルにはアルミニウムが使われ、センターコンソールにはナンバー入りのバッジが付けられている。もちろん、「ゴルフ」もアルミペダルや赤いトリムパーツ、底面が平らになったステアリングホイールなどで、お行儀の良い、他の「ゴルフ」のモデルとの差別化を図っている。しかし、そのシートは、しっかりとしたサポート性というよりも、快適性を重視したものとなっている。

形態は機能に従う: 大きなウイングを持つシビック タイプRは、明らかにパフォーマンス指向である。

スプリントでは、クラブスポーツがタイプRにテールを見せる

VWでは、接続性が向上し、ナビゲーションシステムもスマートになり、デジタル機能が充実している。しかし、音量や温度などは、モニター下部のスライダーで設定する。なるほど、大音量や静粛性はステアリングホイールでも操作できる。しかし、温度の調整はやりにくく手間がかかる。「シビック」のようなクラシックなロータリー式の方がよほど簡単だ。

「GTI」は、縦方向の動きの気持ちよさと、快適な乗り心地を備えた、「速いGT」として説得力があり、「タイプR(レース用)」は、活発なクロスダイナミックカーとして興奮させられる。例えば、ハノーバー近郊のコンチドロームハンドリングコース「コンチネンタルタイヤのテストコース」では、「シビック」は、「GTIクラブスポーツ」に、1秒差をつけてゴールしている。そして、より強烈なドライビングエクスペリエンスを提供する。2リッターのターボは、低回転域では目立たない、大容量4気筒のような印象を与える。しかし、これは欺瞞的なもので、4,000rpmを超えたあたりから、怒涛のような唸り声が鼓膜を震わせ、ワイルドな「タイプR」は力強く前進していく。

ちょっと中途半端な感じ: クラブスポーツのサスペンションは、普段使いではバランスが取れているものの、サーキットではどうもしっくりこない。

静止状態からの加速では、明らかに「クラブスポーツ」に軍配が上がる。400Nmのトルク(シビックと同じ)は、500回転早く得られ、2リッターのターボは、下から上まで、同じようにパワフルで、光速DSGのおかげで、100km/hまで5.5秒で到達する。「シビック」は0.6秒遅れており、その差は、200km/hまでには、3.6秒に拡大する。

クラブスポーツのバランスはラップタイムを犠牲にする

「シビック タイプR」が「GTIクラブスポーツ」を追い抜けるのは、高速道路での駆け引きがあってこそ、であり、250〜270km/hでの最高速度に関しては疑問の余地はない。しかし、話はサーキットに戻る。そこでは、「クラブスポーツ」の素晴らしくバランスのとれたサスペンションが、やや中途半端な印象を与える。コーナーでは、「タイプR」に比べて、前輪の押し出しがやや強く、ボディの動きが激しくなるのだ。電気機械式リミテッドスリップデフとアダプティブダンパーとの連動は(ノーマルのGTIの方が、明らかに走りが鈍い)、助けにはなるが、エンジニアが奇跡を起こすことはできない。

そしてコンチドロームは、日本のスポーツカーが、どこでスコアを稼いでいるのかを容赦なく明らかにする。「シビック」は、かなり硬めのスプリングとダンパー、硬めのマウント、そしてより一貫したレーシングデザインに頼っている。このため、日常的な使用では、かなり不快感を覚えるが、限界に達すると、実に楽しいマシンとなり、非常に速いのだ。

2つの面で上回る: タイプRは、コンチドロームでのラップタイムと価格の面でクラブスポーツを上回っている。

チェックアウト時にも日本車はドイツ車に勝つ

「タイプR」のディファレンシャル、高い剛性、そして正確さと反応の良さを兼ね備えたステアリングは、車を完璧にコースに沿って走らせ、素晴らしく正確で短い6速ボックス(ゴルフのDSGのように中間スロットル機能付き)は、ギアチェンジの際に、無駄な時間をほとんど与えず、完璧なプレッシャーポイントを持つ均等に配分されたブレーキは、コーナーへのアプローチを楽しくしてくれる。確かに「クラブスポーツ」の方が、100km/hから1.5m早く停まるが、そのペダルフィールは、よりソフトで明確ではない。

誤解のないように、価格の話をしておこう。「シビック タイプR 」の42,650ユーロ(約554万円)という価格は、決してお買い得とはいえないものの、それでも特別なクルマが手に入ることには間違いない。そして、この車は本当にすぐにレースに参加でき、余分なものを追加する必要は一切ない。

一方、「GTIクラブスポーツ」では、19インチホイール(825ユーロ=約10万円)やアダプティブダンパー(1045ユーロ=約13万円)などが追加で必要となる。最終的には43,285ユーロ(約567万円)が請求されるが、これも極めて妥当な金額だ。問題はその保証期間だ。ホンダがあえて3年保証を提供しているのに対し、VWはわずか2年とケチだ。

第2位 400点中283点: ホンダ シビック タイプR GT
日本製ホットハッチは、コーナリング時やレース場で何よりも輝きを放つ。しかし、日常的な使用においては、少し譲歩する必要がある。価格: 42,650ユーロ(約554万円)より

第1位 400満点中290点: VWゴルフGTIクラブスポーツ
普段使いに強く、それでいて遅くはない。妥協のないレーサーというよりは、楽しい車だ。価格: 41,415ユーロ(約538万円)より

結論:
多才な「クラブスポーツ」に、タイプRが7点劣っているのは些細なことなので忘れてほしい。本当の意味でのコンパクトスポーツカーを探している人は、ホンダを気に入るだろう。一方で、あらゆる場面で使えるクルマを求めている人は、ゴルフに行き着くだろう。

本当にこの2台は、自分がどこに主眼を置いて自動車を選択するかによって勝敗が決まるという良い見本だろう。今や、「シビック タイプR」と「VWゴルフGTI」は、どちらも優劣のつけがたいレベルの仕上がりを持っているということでもあるし、その性能は、少し前ならばスーパースポーツカー級のものでもある。

価格はどちらもかなりの高価格ではあるが、他の車(例えばゴルフの普通のモデルとか、メルセデスベンツの同クラスのモデル)が、押しなべて価格を上昇させていることを考えれば、驚くほどの価格ではないし、性能や内容を考えれば納得のいくレベルなのではないだろうか。

それにしても、この2台のような、純粋な内燃機関の一騎打ち、もうこれが最終ラウンドなのかもしれないと思うと、やはりなんとも寂しい。

Text: Gerald Czajka, Henning Klipp
加筆: 大林晃平
Photo: Thomas Ruddies / AUTO BILD