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これまたラグジュアリーなモーターホーム登場 ビュルストナーの提案する新しいモーターホームのコンセプトとは?

2021年8月24日

ビュルストナー リセオ ギャラリー(Bürstner Lyseo Gallery): モーターホームのニューコンセプト。ビュルストナー社は、全く新しいコンセプトのリビングルームを備えたモーターホームを発表した。可変式リビングルームは、走行中はキャンピングカーを経済的でフラットな状態にし、停車中は広々としたスペースを確保する。

小さなものの中に、大きなものを収容することは、モーターホームにとっての、常なる課題であり続ける。
スマートな折りたたみ式のソリューションは、旅先での生活において、常に最高の結果をもたらす。
ビュルストナーは、このテーマで、まったく新しいアイデアを提案する。
それは、形を変え、使っているときだけ、姿を見せるリビングルームだ。
このように、「リセオ ギャラリー」というモデルは、フラットなセミインテグラル(半一体型車両)のように経済的に走りながら、静止しているときには、巨大な空間を提供する。
ビュルストナー社のボスである、イェンス クロマー氏は、「ギャラリーはまだプロトタイプですが、決して遠い未来の研究ではありません」と強調し、「この状態では、車両は比較的量産に近い状態です」と、続けた。

ビュルストナー リセオ ギャラリー: ルーフ部分は実質的にポンプアップされている
「リセオTD 685」や「TD 695ギャラリー」のように、近い将来、独自のモデルとして市場投入が計画されている。
つまり、エアリールーフは、独自のレイアウトを持つことになるのだが、中を一目見ただけでわかるように、これは良い判断だ。
室内の右手には上階へと続く固定階段がある。
そして、この階段は、クローゼットとしても機能している。
ボタンを押すと、後方のガレージにあるコンプレッサーが起動し、90秒後には、空気が二重になった特殊なファブリックを押し上げ、フロントルーフ部分を押し上げる。

ルーフ部分を開くとこんな感じになる。豪華で気持ちよさそうな寝室だ。壁は二重になった特殊な布でできており、そこに空気が送り込まれる。これにより、屋根がまっすぐな形になる。

軽量、高断熱、そして高耐久

この部品は、テクニカルテキスタイル(繊維)に精通した、ドイツのサプライヤーと共同で開発・製造したものだ。
空気圧技術者も協力して、開発したこのソリューションは、さまざまな面で革新的だ。
まず、ルーフの重量は、量産時で約25kgしかなく、最大7cmのエアクッションで断熱性が高く、耐久性にも優れている。
バルブを開くと、部屋から空気が流れ出すようになっている。
ルーフは自力で元の位置に戻っていく。
次のステップは微調整で、「ギャラリーコンセプト」での、テストも予定されている。
その開発では、積雪荷重、断熱性、耐風性などを証明する必要があった。
また、耐久性のために、風洞実験が行われる。
風洞では、時速180kmの暴風雨がルーフに襲いかかった難なく耐え、空力的にも巧みに風の抵抗を減らすことを証明した。

走行中、ルーフ部分は折りたたまれる。これにより、空気抵抗が減少する。そして、キャンピングカーは、フラットな半一体型車両のように走行する。

停車中は広いスペースを確保し、走行中は抵抗を減らす

ニーディック氏と彼のチームは、このアイデアを実現するのにわずか18ヶ月しかかからなかった。
これは特に、ビュルストナー社が投資した、開発用の新しいバーチャルリアリティシステムを使用したことによるものだ。
開発者は、「プロセスが大幅にスピードアップしました」と語る。
常にモデルを構築する手間を省き、迅速に、さまざまなシナリオを体験することができるようになっている。

ビュルストナーは、このエアリールーフソリューションについて、すでに2つの特許を申請している。
ただ、キャッチーな名前がまだないという。
エンジニアのニーディックは、「私たちは今のところ、単に”Klappalkoven”と呼んでいます」と語る。
言うまでもなく、マーケティングには、何かキャッチーなネーミングが必要不可欠だ。
そこで、余計なお世話ながら、我々のアイデアから生まれた名前を提案したい。
「スマートエアスイート(Smart Air Suite)」というのはどうだろうか?

ルーフ部分の壁には、二重構造の特殊な生地を使用している。コンプレッサーポートから壁に空気を送り込み、屋根部分を上昇させる。プロトタイプでは、約90秒で全てのプロセスが完了する。
下部のリビングエリアには、シックで風通しの良い豪華な空間がある。
右側の壁には、5つの快適なステップがあり、上の階につながっている。その下には収納スペースが備わっている。
キッチンエリアの様子。
ギャラリーのシックなリアエンドには窓はない。
リアには、車長が6.89メートルしかないにもかかわらず、非常に大きな収納スペースが用意されている。

結論:
リビングルームはかさばる。
そして小型のモーターホームはタイトなインテリアを強いられる。
ビュルストナーのアイデアは、この問題に終止符を打つ。
ギャラリーは、静止しているときには贅沢な空間を提供し、走行時には風の抵抗を巧みに減らす。
我々はこのシステムに興味津々で、最初の試乗が非常に楽しみだ。

キャンパーは欲しいが、あの大きな図体の車輛をおいておくべきところがないし、運転も不安、というのは誰にも共通した気持ちだろう。もちろん、大きければ大きいほど、「現地」では快適で、広々とした空間を堪能できることは言うまでもないが、大型バスを毎回運転していけるキャンプ場も、日本ではそうそう存在しているわけではない。
そういう考えでみると、この使うときだけ、大きくできるピュルストナーのシステムはなかなか賢く、有効なのではないだろうか。
コンプレッサーで空気を入れて、自立させるというシステムも、大丈夫なのだろうか、と最初は訝しげに見てしまったが、実際には空洞実験さえも行っているというから、かなり本気に仕上げられているのだろう。
おそらくこのシステムであれば、他の車にも転用可能だし、形状的にも違うものにも発展できるだろう。なかなか面白い発想だし、こういうものを、実際に生産し、提案するというのは実に柔軟な発想で楽しい。ぜひ日本のクルマ(最近流行している、軽自動車のキャンパーにはぴったりなのではないだろうか)にも、後付け可能なようにしてほしい、と願う。

Text: Thomas Wirth
加筆: 大林晃平
Photo: Magali Hauser / AUTO BILD