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初テスト アウディの新型電動スポーツカー アウディRS e-tron GTをレーストラックで試乗 その性能と評価をレポート

2021年8月9日

流行の最先端を行く電動スポーツカー、アウディRS e-tron GTで、レーストラックを走る。新型の電動スポーツカー、アウディRS e-tron GTの重量は、およそ2.4トン。その力強さは、レーストラックではどうなのか? テスト&レポート!

シャープなボディデザインと、強大なパワー – 「テスラ モデルS」は、電気自動車のトレンドのきっかけとなった。
その事実は否めない。
そして、今、誰もがそれに追随している状況だ。
まず、「ポルシェ タイカン」が登場し、すぐにBMWが「i4 M50」を発表した。
アウディも負けてはいない。
速やかに「e-tron GT」をレースに投入し、ブーストモードで最大646馬力を発揮する「RS」も用意した。
私たちは、アウディが、この電動スポーツカーレースで、今後勝利を収めることができるかどうかをテストするために、難易度の高いビルスターベルグリンクサーキットに持ち込んでテストしてみた。

RS e-tron GTのシャープなルックスとパッケージング

アウディが、量産型の「e-tron」を、スタディモデルに忠実に基づいて仕立て上げたことには、敬意を表する。
デザイン手法としては、ずんぐりむっくりとした肩幅で、フラットなルーフラインを備えている。
車幅は、ほぼ2メートルだが、高さは1.41メートルしかない。
93.4kWhのバッテリーは、シャシーと一体化しており、21インチの4つのホイールは、ダブルウィッシュボーンで支えられている。
さらに、「RS」モデルには、エアサスペンションが標準装備されており、走行状況に応じて適応的に反応し、圧力調整によってサスペンションを快適なものからスポーティなものへと調整する。
また、「RS」のリアアクスルには、電子制御式ディファレンシャルロックが標準装備されている。
そして、トルクベクタリングが、内側の後輪にブレーキを介入させることで、リアエンドを旋回させて俊敏性を促進することができるようになっている。

スタディモデルに非常に近い仕上がり。e-tron GTは、その骨太なルックスとエクストラフラットなルーフラインでアピールする。

ヘビーウェイトは特にタイヤにとってタフなものとなる

しかし、パーダーボルン近郊のレーストラックでは、このシステムは限られた範囲でしか機能しない。
というのも、このシステムが、その効果を最大限に発揮する前に、フロントアクスルが多くの半速カーブや、吊り下げカーブで、すでに落ち着きを失ってしまうからだ。
兄弟車ともいえる「タイカン ターボS」のほうが、そのヘビーなウェイトにもかかえわらず、レーストラックでは、優れた動きを見せていた。
アウディもまた、同じ意味で、このウェイトという欠点を備えている。
ドライバーが乗っていない状態での、ほぼ2.4トンというウェイトは、タイヤにとっては大きな試練だ。
その結果、「RS e-tron GT」は、エイペックス(APEX=コーナーのもっとも内側の部分)からエイペックスへと、アンダーステアを起こす。
今回、我々が、意図的にラップタイムを記録しなかったのは、このアウディが、そのために作られたモデルではないからだ。
したがって、結論として、厳密に言うならば、「RS e-tron GT」は、サーキット走行には適したモデルではない。
その重さがネックとなっているのだ。

過ぎたるは及ばざるが如し: 2.4トン弱のRS e-tron GTは、598馬力を誇るにもかかわらず、サーキット使用には適していない。

アウディの高級グライダーは、高価な喜びに満ちている

しかし、598馬力(ピークパワー)のハイエンドグライダーの主な喜びは他にある。
縦方向のダイナミクスに関しては、公式には3.3秒で、0から100km/hまで到達し、高速道路のトップスピードには、5秒以内で到達する。
しかしこの車はサーキットでは、そのプラットフォームの性能を十分に引き出すことができていない。
「タイカン ターボS」は、ローンチモードで、761馬力と1050Nmという驚異的なパワーを発揮し、我々が計測した、2.8秒で、0から100km/hにまで到達した。

「RS e-tron GT」は、「タイカン ターボS」より、5万ユーロ(約660万円)近く安い、13万8200ユーロ(約1,824万円)に設定している。
加速性能が若干劣るものの、それらは実際には、ほとんど気にならないだろうから、あまり議論の対象とはならないだろう。
また、「e-tron」は、実際には、異次元のレベルで加速し、オプションのセラミックブレーキで、しっかりと制動し、現時点では、「テスラ」や「タイカン」よりも、多くの人々から注目を浴びているのは事実だ。

プレシャスなパワーを備えたGT: アウディは、RS e-tron GTのベース価格を、なんと、138,200ユーロ(約1,824万円)に設定している。

結論:
最もパワフルな「e-tron GT」は、果たして本物の「RS」だろうか?
我々はそう思う。
しかしあえて言うなら、純粋なスポーティな精神が欠けている。
それを持っているのはアウディでは「R8」だけだ。
すべての「RS」モデルがそうであるように、このアウディも常に快適性を維持するスポーティなパフォーマンスを提供している。
AUTO BILDテストスコア: 2

いくらパワーがあっても、それが魅力的なクルマかどうかは全くの別問題である、そのいい例が今回のサーキットテストの結果になったのだろう。
アウディの高い技術力でEVであろうがなかろうが、素晴らしく完成度の高い自動車であることは想像がつく。だが2.4トンもの質量のある物体がサーキットでガンガンに走行したらどうなるか、それは物理的に考えても無茶がありすぎる。
サーキットに関わらず、スポーツカーの大切なファクターの一つは軽いこと、である。軽いということはすべての領域で良い方向に作用する、と言ってもよい。それは地球上であるかぎり物理の上で導き出された答えである。
今回のテストが終わった段階でこのクルマがどうなっていたか…。おそらくタイヤは全滅、ブレーキも相当なダメージを受けているのではないだろうか。重いクルマをパワーでねじ伏せるというのはそういうことであり、必ずどこかにしわ寄せがくるということを忘れてはならない。それはサーキットだけでなく、一般道でも同じことである。

Text: Alexander Bernt
加筆: 大林晃平
Photo: Olaf Itrich / AUTO BILD