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【動画付き】クラシック オブ ザ デイ 多くのBMWファンに衝撃をもたらしたデザイン BMW7シリーズ(E65)+V12物語

2021年8月4日

良きにつけ悪しきにつけ、レジェンドデザイナーである、クリス バングルのデザインしたV12搭載BMW 760Li(E65)は7シリーズの歴史上もっとも長いボディを持つ7シリーズだ。BMWの4代目7シリーズのデザインは、90年代のデザインラインと決別し、多くのBMWファンに色々な意味で衝撃をあたえた。現在でも、強靭な760Li(E65)のデザインは際立っている。

あれからすでに20年。
2001年、4代目となる7シリーズのBMWが市場に投入されたとき、センセーションとスキャンダルが混在した。
「こんなBMWは初めてだ!」、と。
2002年秋には、6気筒と8気筒のディーゼルエンジンを搭載したモデルが登場した。
そして、2003年1月からは、新たに12気筒エンジンを搭載した「BMW 760i」がトップモデルとして登場した。
「BMW 760Li」は、ボディが14cm長くなったことを除けば、技術的には「BMW 760i」とほぼ同じである。
しかし、その希少性は変わらず、わずか9,660台が販売され、その単価は116,000ユーロ(約1,500万円)にも及んだ。

パワー: 445馬力の巨大なV12

第4世代の7シリーズ(E65/66/67、2001年から2008年まで製造)のデザインで物議を醸した当時のBMWのチーフデザイナー、クリス バングルは、このクルマで自動車業界全体のデザインの未来を指し示したとも考えることができる。
現在、自動車には「7シリーズ」のような凸と凹のラインがあふれている。
クリス バングルは、BMWに移る前に、「クーペ フィアット」というアイコンモデルをデザインしたことでも知られる。
「BMW 760Li」は、技術的にも2000年代初頭の最も精巧な車だった。
「760」のボンネットの下には、4バルブ技術と直噴、完全可変バルブ制御システム「バルブトロニック」を初めて組み合わせた「N73」が搭載されている。
この12気筒エンジンは、445馬力を発揮する。
そして、2.2トンのマシンは、0から100km/hまで5.4秒で加速する。
最高時速は電子制御で250km/hに設定されている。
760iおよび760Liは、先代モデルよりもパワーが向上した一方で、燃料消費量は10%減少している。
6速オートマチックトランスミッションの操作は、ステアリングコラムレバーで行う。

N73エンジン: ロールス・ロイス ファントムにも、搭載されている6.75リッターのアップグレード版。

iDriveはボタン戦争に終止符を打つ

クリス バングルは、インテリアのデザインでも新境地を開拓した。
ボタン一つで操作できる「iDrive」コントローラーは、これまでのようなスイッチの乱雑さからコックピットを解放するために設計された。
しかし、この新しいコンセプトの操作は、かなり手こずる。
一般的には、マニュアルをよく読んでから操作しなくてはならない。
足元に温風を送るにしても、シートを調整するにしても、ステアリングホイールのボタンで変速するにしても、760Liは直感的に操作できない。
奇妙なトランクの高さも、当時は多くの人を悩ませた。
現在、7シリーズE65は、安価で手に入るが、トラブルなども多く、メンテナンスなど、その維持費の高さがネックになっている。

登場した当時、物議を醸した7シリーズE65でデビューしたオペレーティングコンセプト「iDrive」。

このクリスバングルのデザインした「7シリーズ」が登場した時、これを見た多くの人は「BMWどうした?」と思ったはずである。というのも、この一つ前の「7シリーズ(007の「トゥモローネバーダイ」に登場した、リモコンで走るあのモデル、ですね)」が、あまりにも格好よく、スマートで都会的だったからで、今でもあの「7シリーズ」をベストデザインという人は多い。
それからすると、この「E65 7シリーズ」は、まず妙な位置についたウインカーや、ぼやけたようなライトユニット形状など、顔つきそのものが悪い。
続いて、ぼってりしたトランク形状(この後に多くの他車にコピーされることにはなるのだが)が、あのスリークだったBMWと程遠い。そして、内装もオートマチックトランスミッションのセレクターを廃したコンソールの処理や、複雑で理解が難しいコマンダーなど、とにかく全体的に面妖なイメージを与えてしまったのが人気薄の原因なのだと思う。
しかしそれから時間が経つと、世の中の多くの自動車がこの「7シリーズ」のような形になったり、コントローラーを持つようになったりしてきているのは皮肉というか、BMW(クリス バングル)に先見の明があったというべきか、とにかく世の中が追い付いたのだろうか。
あのお爺さんのような顔つき(マイナーチェンジで後期モデルは幾分マシになったとはいえ)を除けば、この「E65」、今見ると、そんなに妙ちくりんなクルマじゃないじゃん、というのが今の僕の正直な感想である。

Text: Matthias Techau
加筆: 大林晃平
Photo: Roman Raetzke / AUTO BILD