初テスト オペルからのレトロルックEVスポーツモデル マンタGSe ElektoroMODに初試乗&レポート
2021年7月31日
以前、当サイトでレポートしたように(「続報 オペル マンタAのレストモッド電動バージョンを隅から隅までレポート」)、オペルは電動モーターを搭載したマンタAを現代に蘇らせた。マンタGSe ElektroMODとして、70年代のカルトカーは道路に戻って来る。そして、80馬力のガソリンエンジンの代わりに、147馬力の電動モーターを搭載しているため、非常に静かな走りを実現している。以下にそのインプレッションをお届けする。
今回、電気自動車として復活した「マンタ」は、大きな話題となっている。
なぜなら、オペルファンや自動車愛好家などから、欧州圏内で静かながら熱いセンセーションを巻き起こしているからだ。
SNS上では、
「最高だ」
「前よりずっといい」
という声が上がっている。
「マンタA」は、118Nmという痩せ枯れたトルクと、元気のないオートマチックで、15秒という長い時間をかけて、0から100km/hまで苦労して、たどり着いた。
しかし、70年代のカルトカーは、いまや、しっかりとした馬力と太いトルクを兼ね備えた電気自動車、「マンタマンタGSe ElektroMOD」として蘇ったのだ。
放浪中のアイデアがカルトなストローラーに
1970年から1975年にかけて、498,553台が製造された「タイプA」は、ジョージ ガリオンによる総合芸術作品であり、丸いフロントヘッドライト、フェラーリのような丸いテールライト、60馬力から140馬力までのエンジン(後者はかなり珍しい)を搭載し、17万台もの台数を、アメリカに出荷したほどの人気モデルだった。
そしてそのカルトカーの復活を、2020年、マンタの50周年を記念して、タウヌス山中でハイキングをしていたフランスのオペルのデザイナー、クエンティン ヒューバー(31歳)と、ピエール=オリビエ ガルシア(43歳)の2人が思いついたのだ。
「マンタを現代に蘇らせるのだ」と。
その後、まず、オレンジ色のオペルが登場し、そして今、私たちはこのイエローフラッシュをまとった現車と対面している。
電気自動車のマンタAにはマニュアルトランスミッションが搭載されている
写真を見てもらえばわかるように、目立たないようにローダウンされている。
旋盤工としての訓練を受け、「カデットCクーペ」の政策を担当した、コンセプトワークショップの従業員でもあるマーティン ゲーベル(49歳)は、「1cmから2cmの間ですね」と言う。
ゲーベルをはじめとする、オペルの従業員20名は、4〜5ヶ月かけて「GSe ElektroMOD」を製作した。
そして、我々に、この貴重な黄色い宝物を託してくれたのだ。
この電気自動車は、フロントに147馬力のシンクロモーター、後ろにバッテリーを持ち、後輪駆動でマニュアルトランスミッションというスペックとコンビネーションだ。
この電気自動車「マンタ」の4速シフトは、とても簡単だ。
2速でスタート、すぐにクラッチを離す、当たり前だがエンストはしない。加速する、フーッと離れていく、またクラッチ、3速、離す、フーッ、そうやって4速で150km/hまで上がっていく。
タコメーターは備わっていない。
なるほど、クラシックカーの新車時の走りはこんな感じなのか。
サスペンションはフロントがタイトで、リアは少し柔らかめに設定されていて、後ろ足に常にトラクションがかかる設定になっている。
1970年代に作られたデザインは、今でもとても魅力的だ。
駐車場に止めてじっくりと見てみる。
ペトリの3本スポークの革製スポーツステアリングの後ろには、ポインターの代わりにデジタルコクピットがあり、その横には、オペルミュージアムでDJが無限ループでプレイしている映像を映し出すスクリーンがあり、カラフルな照明、クールでクレイジーな雰囲気が感じられる。
「モッカ」のデジタルピュアパネルを「マンタ」に移植し、「アダムS」の素晴らしいパイロットスポーツシートを装着している。
フロントには、オペルのバイザー、LEDヘッドライトとデジタルウェルカムセレモニーを備えたガラス製のグリルがある。
リアでは、丸いテールライトからLEDスポットライトを作り出している。
オリジナルのミラーのプラスチックキャップと同様に、3Dプリンターで製作されている。
ナンバープレートは自照式で、テールライトの間にはオペルのフラッシュが刺繍され、トランクリッドには新しい「モッカ」のロゴで、「マンタ」と書かれているため、リアは一段低くなっている。
そして、この車は道路上で合法的に走ることができるよう、きちんと車検を受け登録されている。
そして、再びイグニッションキーを回し、クラッチを踏み、2速ギアを入れ、加速させてみる。
周りからは熱い視線を感じる。
BMWのドライバーは、高速道路で、「2シリーズ」に急ブレーキをかけ、我々のクルマの隣を走り、見て、親指を立てる。
オペルのボス、マイケル ローシェラー(52)も親指を立てている。
なぜなら、「E-マンタ」は2020年代半ばをめどに、SUVとして量産される予定だからだ。
それもいいが、我々は、むしろ、この「マンタGSe ElektroMOD」、をこのままの形でシリーズ生産化を熱望、切望する。
一般的にはSUVのほうが需要はあるとも言えるし、その通りであるとも思うが、もう他社からSUVは雨後の筍のように、覚えきれないほど多くのモデルが登場しているし、後出しとは言え、そういうジャンルで埋没してしまうのではないか、という心配もある。
であるならば、このマンタのようなモデルをアドバルーンでもよいから、EVとして発表し、イメージリーダーとする考えだって大いにありだと思う。
せっかく格好よくまとまっているし、新しいジャンルのEVとして発表したとしたら、オペルにとって、そのブランドイメージを高めることにも貢献できるのではないかと思う。
EVの可能性は、SUVやシティーコミューターだけでは決してない、そういう提案が今や、ステランティスという巨大な企業の一員になったオペルからあってもよいのではないだろうか。
Text: Andreas May
加筆: 大林晃平
Photo: Opel Automobile GmbH