初テスト 新型電動SUV VW ID.4 GTXに初試乗 果たしてその性能と評価は?
2021年7月13日
パワフルなVW ID.4 GTXのファーストテスト。純粋なEVで299馬力、全輪駆動、そしてスポーティなルックス。VW ID.4 GTXの登場だ。最後の3文字であるGTXで、VWはEVの世界へGTIを投入しようとしていることを意味する。以下に初テストレポートをお届け。
GTX。
この3文字は、1983年5月に発売された「シロッコII」に付いていたもので、専用のフロント&リアエプロンとそれに合わせたサイドシル、14インチのホイール、112馬力の1.8リッターエンジンを備えていたが、新型「ID.4 GTX」は、まるでこの3文字を今に蘇らせたかのように振る舞っている。
「GTX」の広告では、「もっと楽しく、もっとスポーティに(More Fun and Sports)」というコピーが使われている。
その「もっと楽しく、もっとスポーティに」は、真実のものである。
しかし、オプション費用など、料金の問題については後ほど明らかにする。
まず何より、新しい「VW ID.4 GTX」の世界へ、ようこそ。
このコンパクトSUVは、魔法の3文字を持つ最初のVWからのSUVスポーツモデルであり、最初の試乗テストの後、我々は確信をもって言うことができる。
このモデルはパワーがある、と。
システム性能は299馬力で、GTXは十分なパワーを持っている。
これまでのところ、「ID.4」は純粋な後輪駆動車で、後輪軸に204馬力を発生させることがわかっている。
「GTX」では、大きな電動モーターはそのままで、フロントアクスルにもう1基、ハイパフォーマンスのための電動モーターを追加している。
これにより、109馬力が追加で加わり、システム出力は299馬力となっている。
もちろん、両方の車軸に、それぞれのモーターを搭載することによって、全輪駆動モデルとなっているところが、普通の「ID.4」と異なる。
「GTX」の場合は、プロップシャフトも車軸間のクラッチもなく、2台のファンマシンは互いに電子的にネットワーク化され、シャシーやブレーキの制御システムともリンクしている。
そして、ドライビングダイナミクスマネージャーは、各システムの調整を行う。
「GTX」では、スタビリティコントロールと全輪駆動制御をネットワーク化することで、ドライビングダイナミクス、トラクション、安定性をトップレベルに保つことができるようになっているとのことだ。
解説はこれくらいにしておこう。
縦横方向のダイナミクスがすべてのラインで納得できる
では、実際に乗ってみてどうか?
まず、ドイツの道路交通法に準拠した加速性能をテストした。
0から100km/hまでは6.2秒。
我々が乗ることによって、2.2トンを超える車重のこの車にしては驚異的な数値だ。
もちろん、電気自動車の低重心によるロードホールディングの良さは健在だが、「GTX」ではドライビングフィジックス(ドライビングにおける物理的要素)にさらに磨きをかけている。
ステアリングホイールで指示した通りに車が進むように、コーナリング中に電子制御機器が車輪を制動したり、ブレーキをコントロールしたりしてくれる。
この機能は、フロントの電動モーターが常に作動する「スポーツ」のドライビングモードで特に楽しめる。
もしもバッテリーの残量表示に目を凝らしていなかったら、このコーナー攻略は永遠に続いていただろう。
一度、「ID.4」をオーバーステアさせてしまったが、スタビリティプログラムは、ブレーキもかけることなく、安心して走ることができるのだ。
さて、ここで大切なバッテリーの話をしなければならない。
77kWhの大容量で、最大480kmの「顧客志向」の航続距離を実現したと、VWは言う。
我々のテストでは、204馬力バージョンの「ID.4」で361kmを計測したので、まあまあ妥当なところだと思う。
「ID.4 GTX」は、リアアクスルにドラムブレーキを採用している
「GTX」はそのルックスにも注目だ。
20インチのアルミホイールを標準装備し、試乗車は21インチで、フロントに235mm、リアに255mmのタイヤを装着している。
フロントのブレーキディスクは、直径358mmの特大サイズだが、リアにはドラムブレーキが装着されている。
299馬力の車にドラムブレーキって、マジですか?
その通りだ。
でも大丈夫なのである。
減速はほとんど電動モーターが行うので、日常の走行ではブレーキほとんど必要ないからだ。
さらにドラムブレーキパッドは、車の寿命まで使えるように設計されているとフォルクスワーゲンは言っている。
実際、通常モデルの「ID.4」は、100km/hでブレーキをかけたとき、わずか34.5mで止まったので、性能も十分以上である。
そうそう、「GTX」はきらびやかだ: ハニカムグリル、15mm低くなってより強調されたリアエプロン、座り心地の良いパイロットシート、フラットなスポーツステアリングホイール、赤のコントラストステッチが施されたレザーダッシュボード。
バッテリーを搭載した後輪駆動モデルよりも、5,500ユーロ(約73万円)高い、5万415ユーロ(約670万円)という価格に相当するパフォーマンスと使い勝手にも、期待が持てる。
ただし、その価格は、エコ補助金の7,975ユーロ(約106万円)を差し引いた金額で、この「GTX」の3文字を背負ったクルマの実際の価格は800万円近いため、決して安くはない。
テクニカルデータ: VW ID.4 GTX
● エンジン: フロント非同期モーター、リア永久磁石式同期モーター ● 最高出力: 220kW(299ps) ● 最大トルク: フロントモーター162Nm、リアモーター310Nm ● 駆動方式:全輪駆動、インプットギアボックス ● 全長×全幅×全高: 4582x1852x1637mm ● 乾燥重量: 2224kg ● ラゲッジコンパートメント: 543~1575リットル ● C0-100 km/h加速: 6.2秒 ● 最高速度: 180km/h ● 消費電力 18.2kWh/100 km ● CO2排出量: 0g/km ● 価格: 50,415ユーロ(約670万円)より(補助金7,975ユーロ=約万円を差し引いた金額)。
結論:
ガソリン車ではカルト的存在のGTI同様、GTXもVWのEVモデル中のカルト的存在になり得るかもしれない。スポーティな外観、全輪駆動による完璧なシャシー、299馬力による痛快な加速。しかし、エコ補助金を差し引いたとしても50,415ユーロ(約670万円)というのは本当に高い。
AUTO BILDテストスコア: 2+
EVは基本的にSUVとマッチングがいい、というのもそのボディの容量とか重さを考えるとコンパクトカーやセダンよりも適合性が優れていると思う。今回の「ID.4 GTX」はノーマルのモデルを高性能にし、全輪駆動としたモデルだが、その完成度などを考えると最良のフォルクスワーゲンEVなのではないか、という判断もできよう。
高性能でスタイリッシュ、そしてフォルクスワーゲンというブランド、安心して選べる一台だが、やはり補助金を差し引いても800万円という価格だけはネックになろう。いずれEVの価格が下がり、もう少しお財布にも優しくなった時、その時まで個人的には静観していたい(というか、買えない)。
あとは2トンを優に超えてしまっている車重、この部分をなんとか技術のブレークスルーで解決してほしいものである。
Text: Andreas May
加筆: 大林晃平
Photo: Volkswagen AG