SUVクーペ対決 アウディQ3対BMW X2対ルノー アルカナ 果たしてその結果は?
2021年7月12日
新型ルノー アルカナが、プレミアムSUVクーペのQ3とX2に挑戦する。新型ルノー アルカナは、キレのあるクーペのシルエットと適正価格で人々を魅了する。今回の比較テストでは、Q3スポーツバックとX2に挑戦する。果たしてその結果は? 以下にレポート。
ルーフをフラットにして、値段を高くする。
その方法で、特にドイツのプレミアムメーカーは、標準的なSUVに、美しいデザインのハッチバックモデルを作り、ハイシートでのオートクチュールには、当然ながら美容サーチャージを課している。
そして今、フランスもこの分野に参入して来た。
「ルノー アルカナ」は、弟分の「キャプチャー」のプラットフォームを使用している。
しかし、ドイツ車とは異なり、フランス車の価格は高騰していない。
果たして、フランス製SUVクーペは、「アウディQ3スポーツバック」や「BMW X2」から主役の座を奪うことができるだろうか?
アウディQ3スポーツバックに軍配
クーペのシルエットは、見た目はシックだが、後部座席のスペースの面ではデメリットをもたらす。
「Q3スポーツバック」では、頭を一番倒さなければならず、荷物も一番積めない。
これはロードフロアの下にハイブリッドモジュールを搭載しているためでもある。
一方で、フロントに座る「Q3」のドライバーは、広々としたスペース、ゆったりとしたシート、そして最先端のデジタルワークステーションに迎えられる。
目の前のデジタルディスプレイに表示されるナビマップ、気の利いた音声アシスタント、分かりやすいタッチコントロールなど、ここでは自分の家のようにくつろぐことができる。
これは「X2」にも当てはまり、iDriveが操作構造を分かりやすく案内してくれる。
しかし、BMWの場合、アウディやルノーに比べて、ステアリングホイール(かなり引き出されている)とBピラーの間の距離が手のひらサイズで狭いため、決して乗り込みやすいとは言えない。
また、「X2」のアナログ丸型メーターは見栄えが良いものの、その下にあるデジタルディスプレイは表示の選択肢が少ない。
アルカナのシャシーには、まだまだ最適化の余地がある
「アルカナ」は、大画面のアップライトスクリーンを搭載したフロントランナーの一角を担おうとしていることは認めるが、まだまだ成功には至っていない。
グラフィックスやボイスコントロールは基本的なものだし、シートポジションが高すぎる上に、シートの形状や硬さが不足している。
さらに石畳の上では、「アルカナ」はさまざまな方向からきしむ音がする。
しかし、アウディでさえ、このような試練を平然と受け止めているわけではなく、センタートンネルからははっきりとしたガタガタ音が聞こえてくる。
この点、BMWは模範生だ。
また、ドアのジョイント部分にシールを追加したおかげで、高速道路での風切り音は「X2」では最も控えめなものとなっている。
「アルカナ」は、走行性能については特に不満はないが、パワーデリバリーについては不満がある。
搭載されている140馬力の4気筒は、かなりスムーズに走るが、時折不便に感じるデュアルクラッチオートマチックのせいで、少しぎこちなく感じる。
また、アンダーダンピングされたシャシーは、まだ微調整が必要だ。
車輪の倒れ方が不自然だったり、ちょっとしたデコボコ道でも絶対的な安心感が得られなかったりする。
「アルカナ」の回避行動は、あまりにも鈍すぎる。
合成ステアリングはフィードバックが少なく、ESPは常に1秒のショックを必要とし、その後、さらに激しく制御される。
慣れるまでには時間がかかるが、常に安全ではある。
「X2」のセッティングは、BMWにしては、スポーティすぎると思える。
このスポーティさは、気配りの行き届いたデュアルクラッチや、遅めながらも定評のあるESPコントロール、タイトな操作性を持つ太いステアリングホイールリムなどによっても好影響を与えているといえよう。
一方、アウディではまったく逆のことが起きている。
十分に正確なステアリングは非常にスムーズに機能し、電子制御のロードガードは極めて早く厳密にブレーキをかけ、DSGは操縦時に時々ギクシャクする。
楽しさがないのだ。
しかし、悪路での走行時には優れた性能を発揮する。
調整式ダンパー(980ユーロ=約13万円)のおかげで、「Q3」は路面の凹凸を最も冷静に受け止めることができる。
しかし、エンジンは4000rpmを超えると大きく唸り、BMWの3気筒よりもさらに洗練されていないサウンドになる。
試乗車の価格は、アウディが45,225ユーロ(約600万円)とBMWが45,750ユーロ(約608万円)であることから、「Q3」と「X2」には、ルノーに比べて、約15,000ユーロ(約200万円)の追金が要求され、これは「アルカナ」の30,150ユーロ(約400万円)の50%分の金額にも相当する。
第3位 800満点中499点: ルノー アルカナTCe 140 EDCインテンス
コストが明確に前面に出ているかたちで、デビューは成功したと言える。しかしまだまだ洗練の余地がある。
価格: 30,150ユーロ(約400万円)より
第2位 800満点中517点: BMW X2 sDrive 18i Mスポーツ オートマチック
スポーティさは際立っているが、その分、快適性の面ではやや劣る。とはいえ、アウディとは僅差だ。
価格: 42,550ユーロ(約608万円)より
第1位 800満点中523点: アウディQ3スポーツバック35 TFSI DSG
インゴルシュタットの車は、快適性と接続性において決定的な優位性を持っている。
価格: 39,750ユーロ(約600万円)より
結論:
美しい形状のためにリアのヘッドルームを少し犠牲にする人のための、3台のSUVがここにいる。
「アウディQ3スポーツバック」は主にゆったりとした走りを好む愛好家に、「BMW X2」は陽気なダイナミックドライバーに、そして「ルノー アルカナ」は、より合理的なことを優先する人にアピールする上に、かなり安価だといえる。
普通のSUVでは飽き足らない人のための、クーペSUVモデルも、各社からいよいよ出そろった感がある。今回はそんなジャンルから、定番のBMWとアウディ、そして新新参の「ルノー アルカナ」という3台の比較テストとなった。
残念ながらアルカナは3位になってしまったが、これには200万円近く安いという事実を加味して考えてあげてもよいのではないか。200万円違えば、違うセグメントと言ってもいいし、その価格を考えればかなり善戦したと言ってもいい。
ルノーもそうだが、シトロエンもプジョーも、昨今では長足に進化し、ドイツのライバルと比較しても、圧倒的に劣る部分などないばかりか、価格面では有利になっている場合も多い。今回もそういう意味では、ルノーなかなかやるじゃないか、そう個人的には思った。
一方、「Q3」と「X2」の差は本当に僅差で、おそらくもうほとんど完成度という面では甲乙つけがたいはずであるが、あらゆる面でオールマイティーなのはおそらく「Q3」であり、「X2」は、よりパーソナルでスペースユーティリティよりも走行性能優先、という感じなのだろう。いずれにしろどの車を選んでも絶対的に劣っているという部分はないはずだし、今や、SUVも、選択に悩むほどの数が世の中存在していることは確かである。
Text: Gerald Czajka, Berend Sanders
加筆: 大林晃平
Photo: Olaf Itrich / AUTO BILD