NEW PEUGEOT 9X8 HYPERCAR-レースのためのデザイン
2021年7月8日
プジョーは、2022年のFIA世界耐久選手権(FIA WEC)でのデビューを目指し、最新世代のハイパーカー「PEUGEOT 9X8」を発表いたします。ハイブリッド・パワーユニットを搭載し、全輪駆動のトランスミッションを採用したこの“ハイパーエフィシェント”なプロトタイプは、ロードカーとレーシングカーの双方で環境問題に対して責任あるパフォーマンスを実現するという、プジョーのNeo-Performance(ネオ・パフォーマンス)戦略に合致しています。プジョー・スポールのエンジニアリングチームとプジョー・デザインの共同作業により、9X8は生まれました。流れるようなライン、リアウイングのないデザイン、そして力強いブランド・アイデンティティにより、9X8はモーターレーシングの新時代の到来を予感させます。そのイノベーティブなテクノロジーとネコ科の動物のようなスタンスは、紛れもないプジョーの特徴を備えています。
PEUGEOT 9X8は、1992年と1993年にル・マン24時間レースで勝利を飾ったプジョー905と、2009年にフランスのクラシックレースで優勝したプジョー908の直接的な後継者であり、ブランドの最新の耐久レーサーです。このあたらしいプロトタイプは、グローバルなモータースポーツの世界で長年にわたって成功を収めてきたプジョーが、一目でそれとわかるブランドの強力な個性を備えたコンペティティブなマシンを提供していくことを意味しています。プジョー9X8は、ブランド主導のプロジェクトであり、ネオ・パフォーマンスというビジョンに基づいています。ネオ・パフォーマンスのビジョンとは、プレミアム・スポーツの血統と、卓越したスタイリング、効率性、そして将来のロードカーに引き継ぐことのできる技術的な知見を組み合わせたものといえるでしょう。
プジョー9X8のフォルムとエアロダイナミクスは、プジョー・スポールのテクニカル・ダイレクター、オリビエ・ジャンソニ(Olivier JANSONNIE)の下で働く開発エンジニアと、プジョー・デザイン・ダイレクター、マティアス・ホッサン(Matthias HOSSANN)が率いるデザインチームの協力が実を結んだ果実です。
彼らのアプローチは、FIA (Fédération Internationale de l’Automobile) とACO (Automobile Club de l’Ouest) が策定した、耐久レースの主要カテゴリーであるLMP1の後継となるLMH(ル・マン・ハイパーカー)のレギュレーションに基づいています。このクラスでは、エアロダイナミクスに関するあたらしい技術規則が適用され、自由度が増しました。そのため革新的なマシンを生み出すことができるようになり、デザインチームの貢献度もより高まりました。プジョーのエンジニアとデザイナーは、この機会を最大限に利用しました。そして創造的なプロセスのもと既成概念からの脱却を果たし、まったくあたらしいジャンルのハイパーカーを生み出したのです。
ヘリテージと先進性を融合させたネーミング
プジョーの新しいハイパーカー、その挑戦者の名前は「プジョー9X8」です。
“9”は、ブランドのアイコンとなった「プジョー905」(1990年~1993年)と「プジョー908」(2007年~2011年)という、近年の最高レベルの耐久レーシングカーに採用されているネーミングを継承しています。
“X”は、プジョーハイパーカーの全輪駆動技術とハイブリッド・パワートレインを意味し、モーターレーシングの世界におけるブランドの電動化*戦略を体現しています。
“8”は、208、2008、308、3008、5008、そして先日、このハイパーカーを製作したエンジニアやデザイナーの手によるPSE(PEUGEOT SPORT ENGINEERED)の名を冠した最初のクルマとなった508 PSEに至るまで、プジョーの現在のモデル名すべてに使われているサフィックス(接尾語)です。
2022年のFIA世界耐久選手権には、2台のプジョー9X8が参戦する予定です。
前例のないエクステリアとフィニッシュ
「9X8はあくまでプジョーであるゆえに、オリジナルのスケッチは、今にも飛びかかろうとする大きな猫を描いたものでした」とプジョーのデザイン・ダイレクターであるマティアス・ホッサン(Matthias HOSSANN)は述べています。「プジョー9X8の全体的なラインはブランドのスタイリングキューを表現しており、そのスリークでレーシー、かつエレガントなフォルムは感情とダイナミズムを刺激します」
未来のドライバーたちは、デザインチームの仕事に驚き、そして魅了されました。
「ここまでのスタイリングを採用したレーシングカーは初めてだ」と、ケビン・マグヌッセン(Kevin MAGNUSSEN)はコメントしています。
アメリカ人ドライバーのグスタボ・メネゼス(Gustavo MENEZES)も同じ言葉を口しました。「プジョーは9X8でモータースポーツのあたらしい一章を記しています。わたしたちは、その書かれた物語を演ずることになるでしょう!」
9X8のフロントとリアのライティングシグネチャーは、3本の爪のようなストロークで構成されており、プジョーのロードカー同様のトレードマークとなっています。また、ブランドのあたらしいライオンヘッドロゴは、マシンのフロントとサイドにバックライトで表示されます。ボディとコックピット内のセレニウム・グレーとクリプトナイト・アシッド・グリーン/イエローのコントラストは、508と508 SWで導入されたあたらしいPEUGEOT SPORT ENGINEERED(508 PSE/508 SW PSE)のカラースキームを反映しています。
デザイナーは、9X8のインテリアにも細心の注意を払いました。
「コックピットは、これまでのレーシングカーは機能的なだけで、ブランドのアイデンティティを持たないものでした。ですが、わたしたちは特別なアプローチを取りたかったのです」とマティアス・ホッサン(Matthias HOSSANN)は強調します。「われわれのカラースキームとプジョーのインテリア・スタイリング・シグネチャーであるi-Cockpitを組み合わせることで、9X8のコックピットは独自の雰囲気を醸し出し、車載カメラで撮影してもそれがプジョーのマシンであることが一目でわかるようになっています」
エクステリアでは、彫刻的なホイールが、すっきりとしたシャープな構造のサイドの面とバランスのとれたラインに貢献ています。ウィングベントによってタイヤの上部は露出しており、完璧にインテグレートされたサイドミラーによって空気の流れが妨げられることなくマシンの上を通過することがイメージされるようになっています。
「わたしはプジョー・デザインとプジョー・スポールのチームを知っており、彼らはつねに質の高いイノベーティブな作品を生み出していることも知っています。しかし、それでも9X8には率直に言って圧倒されました。とにかく素晴らしいのです」と、プジョーCEOのリンダ・ジャクソン(Linda JACKSON)は語っています。「その革新的で流れるようなラインが、パワフルなブランド・アイデンティティを醸し出しているのは見事というほかありません」
“ウイングレス”- ル・マンハイパーカー・レギュレーションの可能性を最大化
プジョー9X8のリアエンドのデザインは、ブランドの特徴であるクローエフェクト・ライティングが施されており、リアライトはワイドなディフューザーを挟むように配置されています。その上には「We didn’t want a rear wing」と書かれています。
リアウイングは、1967年にル・マン24時間レースに参戦したシャパラル2Fで初めて採用されたものです。半世紀以上もの期間、採用されてきたそれが疑問視されたのは今回が初めてでしょう。9X8の革新的なリアエンドは、プジョー・スポールのエンジニアリングチームの研究から生まれたものです。
「あたらしいル・マン・ハイパーカーのレギュレーションは、性能の向上を平準化するために策定されました」とプジョー・スポールのWECプログラム・テクニカル・ダイレクターであるオリビエ・ジャンソニ(Olivier JANSONNIE)は語っています。「9X8を設計することは情熱的な経験でした。というのも、わたしたちには、マシンのパフォーマンス、特にエアロダイナミクスを最適化するために、発明や革新的な思考に関してまったく自由に、常識にとらわれない方法を探ることができたからです。レギュレーションでは、調整が可能な空力デバイスは1つだけと規定されており、リアウイングについては規定されていませんでした。わたしたちの試算とシミュレーションにより、リアウイングがなくとも高いパフォーマンスが可能であることがわかりました」
ステランティスのモータースポーツ・ダイレクターであるジャン-マルク・フィノ(Jean-Marc FINOT)は以下のようにコメントしています。「プジョー9X8にリアウイングを付けないことは、大きな革新的なステップです。われわれは、この機能をなくすことができるほどのエアロダイナミクスを達成しました。でも、どうやってとは聞かないでください。できる限り秘密にしておきたいと思っていますから!」
リアウイングをなくすことで、ここ数十年来見られなかったような流麗なシルエットを自由にデザインすることができました。実際、デザイナーはエンジニアと協力して、このチャンスを最大限に活用し、ダイナミックで彫刻的なシェイプを調和させてホイールアーチの間にすっきりとした面を造形しました。
“ハイパーエフィシェント”なハイブリッドパワートレイン
2020年9月、耐久レースの新クラス「ル・マン・ハイパーカー」への参戦が発表されて以来、パリ近郊のベルサイユにあるファクトリーでは、9X8の開発に熱が注がれています。予定通り、PEUGEOT HYBRID4 500KWパワートレインを構成する内燃機関であるリアに搭載された2.6ℓツインターボ、500kW(680馬力)の90度V6エンジンは、4月からベンチでマイレージを重ねています。
一方、フロントに搭載された200kWのモーター・ジェネレーター・ユニットと7速シーケンシャル・ギアボックス、そしてバッテリーは、ベンチテストの検証スケジュールに沿って組み立てられています。このパワフルで技術的に洗練された高電圧(900ボルト)高密度バッテリーは、プジョー・スポールとトタルエナジーズの子会社であるサフト(Saft)が共同開発しています。
ジャン・マルク・フィノ(Jean-Marc FINOT)は、「われわれが必要とするエネルギーについての目標は、完璧な信頼性と完璧なコントロールです」と説明しています。「ル・マンは、ピットインの回数で勝敗が決まるもはや24時間のスプリントレースになっています。新型ハイパーカーの優れたエネルギー効率は、ロードカーの世界でもまもなく見られるであろうことを予感させます。このことは、パワートレインからエアロダイナミクスに至るまで、あらゆる面で超高効率の達成に貢献しなければならないプジョー9X8パッケージの作業に基本的な影響を与えました」
ル・マン、それはプジョーの実験室
新型車は、空力的、機械的、電子的な効率性に加えて、耐久レースの世界におけるプジョーの広範なエンジニアリングの専門知識を披露することになります。ル・マン24時間レースは、過酷なレースとして知られており、レース中に走行する5,400kmの距離は、F1のフルシーズンの走行距離に近いため、効率性と信頼性の両方が重要となります。
「PEUGEOTが耐久レースに参加するのは、スポーツとしての側面だけではありません」と、リンダ・ジャクソン(Linda JACKSON)は言います。「耐久レースは、わたしたちに極限の実験室を提供してくれるモータースポーツであり、だからこそ、ル・マンとの結びつきが強いのです。レーストラックでの結果よりも重要なのは、24時間という極限状態の中で、わたしたちの技術や研究成果を証明する機会を与えてくれることです。ル・マンは、われわれが現在開発しているロードカーの燃料消費量、ひいてはCO2排出量を削減するためのハイブリッドシステムや技術を検証するための競争的な環境を提供してくれます。プジョー・スポールのチームは、自分たちの研究が市販車に反映されているのを見て、誇りに思っています。わたしたちの顧客にとって、ル・マンはわたしたちのクルマの品質を証明する実験室なのです」
【ドライバー自身の言葉を紹介】
ポール・ディ・レスタ(Paul DI RESTA /スコットランド出身/35歳/元F1ドライバー/2010年DTMチャンピオン):「誰もがハイパーカーがどんなものかと思っていたでしょう。そして、ここにそれが実現しました。9X8のアグレッシブで革新的なスタンスと強力なブランド・アイデンティティは大きな驚きです」
ロイック・デュバル(Loïc DUVAL/フランス/39歳/2013年ル・マン24時間レース優勝/2013年世界耐久選手権チャンピオン):「マシンを正面から4:3のアングルで見たときも、横から見たときも、正面から見たときも、そして後ろから見ても素敵だと言うマシンがありますよね。9X8は、まさにどの角度から見ても最高です」
ミッケル・イェンセン(Mikkel JENSEN/デンマーク/26歳/耐久レースドライバー/2019年ELMS LMP3チャンピオン):「9X8のラインは、ここ数カ月で発表されたり、ほのめかされたりしたものとはまったく異なります。このようなスタイルのものはこれまでに試みられたことがないため、このクルマで勝利することに成功すれば、歴史的な瞬間となるでしょう」
ケビン・マグヌッセン(Kevin MAGNUSSEN/デンマーク/28歳/元F1ドライバー/IMSA耐久レースドライバー):「これはかつてないものといえるだろう。本当にレースの未来そのものだ。レーシングカーの実際のデザインにこれほど多く関わったのは初めてのことです。リアウイングがないというのも大きな驚きでした。あたらしい時代の始まりを感じています」
グスタボ・メネゼス(Gustavo MENEZES/アメリカ/26歳/世界耐久選手権ドライバー/2016年LMP2ル・マン24時間優勝/2016年LMP2世界チャンピオン):「9X8は、モーターレーシングのあたらしい章の始まりを告げるものです。この10数年は、LMP1プロトタイプが中心でした。9X8で象徴的な未来を創造する時がついに来たのです」
ジェームス・ロシター(James ROSSITER/イギリス/37歳/元F1、ALMS、SUPER GTドライバー):「これほどの創造性は予期していませんでした。このデザインは本当に破壊的です。プジョーのハイパーカーは限界を押し上げました」
ジャン=エリック・ベルニュ(Jean-Eric VERGNE/フランス/31歳/元F1ドライバー/2度のフォーミュラEチャンピオン):「プジョー 9X8は革命的です。設計・デザインを担当したチームは、長い間モーターレーシングで見られなかった方向を指し示しています。見事のひとこと!」
PEUGEOT 9X8 – テクニカルデータ
クラス:ル・マン・ハイパーカー(LMH)
全長:5,000mm
全幅:2,080mm
全高: 1,180mm
ホイールベース:3,045mm
パワートレイン:PEUGEOT HYBRID4 500KW (全輪駆動)
リアドライブトレイン:500kW(680hp)、2.6ℓツインターボ90度V6、ガソリン内燃機関+7速シーケンシャルトランスミッション
フロントドライブトレイン:200kW 電動モータージェネレーター+1速減速機
バッテリー:プジョー・スポール、トタルエナジーズ、サフトの共同開発による高密度の900ボルトバッテリー
燃料と潤滑油 :トタルエナジーズ
プジョーコール TEL:0120-840-240
Text&photo:Groupe PSA Japan