デザイン比較 新型メルセデスSクラスと新型メルセデスCクラス どこがどう異なるのか クイックチェック
2021年7月3日
新型Cクラスは、しばしば「ベビーSクラス」と呼ばれる。しかし、この2つのセダンは、デザインの仕掛けも含めて、まったく異なる方向性を持っているといえる。以下、レポートをお届け。
言うまでもなく、メルセデスの「Cクラス」と「Sクラス」は、まったく異なる市場セグメントに属している。
大型のセダンはプレステージ性と豪華さを、小型のセダンは日常的な実用性と少しのスポーティさを表現している。
この2つのモデルは、そのそれぞれの主張を外の世界に向けて、明確に発信しなければならないことは明らかだ。
ブランドの系列やデザイン言語の一貫性があるにもかかわらず、デザインの違いは一見しただけではわからないほどだからだ。
そこで我々は、新型の「W223メルセデスSクラス」と「W206メルセデスCクラス」を直接並べて比較してみた。
新型Cクラスはよりスポーティな外観になった
新型「Cクラス」は、そのニュールックスで、これまで以上にスポーティな印象を与えている。
全長約4.75メートル(先代より+6.5cm)という長さを実現するために、メルセデスはシルエットをウェッジシェイプにした。
つまり、フロントはしゃがんでいて、フロントオーバーハングは短く、パッセンジャーセルは後ろに下がっている。
この印象を強めているのが、いわゆる「キャットウォークライン」だ。
デザイナーの言葉を借りれば、これはウィンドウエッジの下にある、リアからフロントに向かって伸びる折り目のことで、リアに向かって着実に傾斜している。
このラインがライトまで届かないのは、視覚的に車を短くするためだという。
また、フロントとリアは比較的アグレッシブなデザインとなっている。
フロントでは、細いヘッドライトとずんぐりとした台形のグリル、そして2分割されたテールランプが内側に向かって傾斜している。
Sクラスはより長く見える
「Sクラス」では、「Cクラス」のように前方に向かって流れるウェッジシェイプではなく、後ろに下がって重心を高くしている。
これは、スリーポインテッドスターの起立したグリルがボンネット上の高い位置にあることから始まる。
「Sクラス」では、側面全体に広がる「キャットウォークライン」がリアに向かって傾斜している。
これにより、5.29メートルのロングホイールベース車でも、より長く見えるようになっている。
そして、「Cクラス」よりもリアのクロームトリムが多くなっている。
テールライト上のトリムストリップの形で、自動的に視線が上に向けられる。
テールライト自体は水平に配置されており、仕上がりに落ち着いた印象を与える。
要するに、「Cクラス」と「Sクラス」は、似たようなデザインを、それぞれ独自の解釈で採用しているのだ。
「Sクラス」と「Cクラス」はそっくり、と言われているが、実際に並べてみるとそんなことはあまりなく、かなり異なったデザインを持っている2台なのであった。
それは当たり前で、「Sクラス」と「Cクラス」とでは車の性格が違うからで、「Sクラス」を単純に縮小したら「Cクラス」になるなどという、簡単で都合の良い話なわけはない。
つまり高度な技術とトリックを使い、この2台が兄弟に見えるように、あえて仕向けているわけで、そうでもなければこれほどの相似性を持つことはできなかったであろう。そしてプロのデザイナーであれば、もっと様々なディテールや、巧みなデザイン手法などを解説できるだろうし、どちらが先にデザインされたのか(まあ「Sクラス」ではあろうけれど)、といった謎解きも可能となるだろう。
さてさて、そろそろ次期モデルが噂され始めた時期メルセデス・ベンツEクラス(コードネームW214となるはず)は、この中間サイズで登場し、見分けのつきにくいそっくりの3兄弟となるのだろうか。ちょっと楽しみにしていたい。
Text: Peter R. Fischer and Moritz Doka
加筆: 大林晃平
Photo: Daimler AG