【エンジン音付き】「Lamborghini V12」ランボルギーニのフラッグシップエンジン:パフォーマンスとエモーション
2021年6月24日
1963年にフェルッチオ・ランボルギーニは完璧なスポーツカーを作るために、自ら会社を設立しました。同年発表されたランボルギーニ 350GTに搭載されたのは、ジオット・ビッザリーニの下で開発されたバンク角60度の、12気筒のエンジンで、最高出力は320hpでした。このエンジンは、「牛がクルマを引く」というコンセプトに基づいた当時の一般的なレイアウトで、ゆったりとしたフロントに収められました。
当時も今も、加速や、加速時に体がシートに押し付けられる感覚はスーパースポーツカーの最高の魅力です。自然吸気V12エンジンは、そのスポーティーさ、応答性の良さ、振動のない推進で、直線的なパワーとスピードにおいては、時代を超え他の追随を許さない選択肢となっています。
フェルッチオ・ランボルギーニはV12を明確に希望していました。馬力が上がるごとにビッザリーニのボーナスを上げていたという逸話も残っています。自然吸気V12エンジンは、技術やサイズといった面では難しい課題の多いものでしたが、最高のランボルギーニモデルを実現するにはこのエンジンのほかにはありませんでした。こうして、350GTからランボルギーニV12の伝統が始まりました。
ランボルギーニの初代V12エンジンは、V12エンジンのベースとなり、後継モデルでは様々な改良が加えられました。400GT(1966年)ではボアとストロークを拡大して4.0L排気量をにアップし、最高出力は320hp/6500rpmに、最高速度は250km/hから270km/hpに向上しました。この新型4.0Lエンジンはいくつもの主要モデルのベースとなり、2+2のエスパーダ(Espada)(1968年)では、最高速度260km/hを発揮しています。330hpのイスレロ(Islero)(1968年)は、ハラマ(Jarama)(1970年)に進化し、ハラマ(Jarama)も当初の350hpから15hp増えてハラマ S(Jarama S)となりました。当時変化しつつあった時代と同様にスポーティーな2+2を求めていたフェルッチオ・ランボルギーニは、ハラマ S( Jarama S)を気に入っていました。
しかし、パフォーマンスは勇気だけで実現できるものではなく、科学に基づいていなければなりません。ランボルギーニは、エンジンを車体の中央に近づければ重量配分が向上することを認識していました。こうしてミウラ(Miura)(1966年)はこれまでの常識を覆しました。ミウラ SVの最終版以前のP400までは、エンジンとトランスミッションを一体化した4.0LのV12エンジンは、配置を車体のミッドリアに移し、横置きに搭載されました。ボディデザインも新しいレイアウトを反映し、伝説的なアイコンが生まれました。最高出力370hp、0-100km/h加速6.7秒、最高速度285km/hで、発表当時は市販車最速を誇ったミウラのエンジンをミッドリアに配したレイアウトは、ランボルギーニや他のハイパフォーマンスブランドに、新たな基準をもたらしました。
以後、370台のランボルギーニの“猛牛”は、牽引するのではなく押すようにクルマを駆動しはじめ、自然吸気エンジンを搭載したスーパースポーツカーのエンジニアリングにおける、革新的なアプローチを世に知らせることとなります。
最初のプロトタイプから、V12エンジンのサウンドはクルマが奏でるシンフォニーでした。ミウラではオーケストラは、ドライバーの耳のすぐそばで演奏していました。12のそれぞれの気筒が互いに調和し、動作しなければなりません。12人の卓越したバイオリニストが、最高の指揮者に導かれ、優れた研究開発と技術を結実させる一方で、ギアごとに上がる音の周波数が生み出すクレッシェンドが、V12のパフォーマンスがもたらす感覚的、身体的な魅力をさらに盛り上げました。
1960年代と1970年代初頭のモデルの成功に続き、カウンタック(Countach)(1974年)で再びエンジンの配置が変更されました。LP400という名称は、エンジンをリアに縦置き(イタリア語でLongitudinale Posteriore)したことと、4.0Lのエンジン排気量を表しています。シザードアをはじめとする大胆なデザイン、明確なニュアンスを持ったディテールは、ランボルギーニのスーパースポーツカーのデザイン言語に新たな歴史を刻み、300km/hの最高速度は、ドライバーの耳のさらに近くでサウンドを奏でました。
LM002(1986年)は、排気量5.2L、最高出力444hpのカウンタックのエンジンが、ランボルギーニ初SUVの心臓部に収められました。最高レベルのパワーとトルクを実現するLM002は、オンロードでもオフロードでも、V12のオーケストラと共に優れたパフォーマンスを発揮しました。
エンジンの搭載場所については既に最適なソリューションが確立されていたため、それ以上の選択肢はありませんでしたが、パフォーマンス向上させるための研究が止まることはありませんでした。5.7L、485hpのV12エンジンを搭載したディアブロ(Diablo)(1990年)は、LPというエンジンポジションの優位性をあらためて証明しました。それに加えて初めて4輪駆動システムを採用し、0-100km/h加速は4.5秒、最高速度は320km/hに達しました。
2001年の新フラッグシップモデルの発表により新世紀が幕を明けました。ランボルギーニの名高いV12エンジンはディアブロからムルシエラゴ(Murciélago)に引き継がれました。排気量6.2L、最高出力580hpから始まったムルシエラゴは、最高速度330km/hを誇る最後のスーパーヴェローチェバージョンではLP-670-4というその名が示すように、排気量は6.5L、最高出力は670hpに向上しました。
V12の最終章は、2011年に発売されたアヴェンタドール(Aventador)と、一新された6.5LのV12で幕を開けます。最高出力700hp、0-100km/h加速はわずか2.9秒、最高速度350km/hを誇るアヴェンタドールには、最高出力770hp、720NM/8500rpmのSVJのエンジンなど、今日までに4種類ものバリアントが登場しました。
サウンド
ランボルギーニ60度V12エンジンの歴史
Text&photo:アウトモビリ・ランボルギーニ