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プライスチェック! 今が買い時? これらのV12コレクターズカー7台 勝者と敗者

2021年6月12日

メルセデス600SL、BMW 750i、他。クラシックV12価格チェック&市場分析。コレクター向け12気筒のクラシックカーが安く買えるようになっている! 12気筒エンジンは複雑で高価なイメージがある。修理や整備やメンテナンスのコストが高いという不安が価格を押し下げる。そのため、一部のV12クラシックカーは現在かなり安くなっている(むろん、高くなっているモデルも存在するが)。以下、12気筒エンジンモデルの市場分析。

12気筒エンジンはエンジン構造の王道だ。
しかし、中程度の修理でも、経済的には大きな損失となるのが悩ましいところだ。
マーケットオブザーバーであるクラシックデータ社の担当者は、「多くの購入希望者にとっては、V12の魅力よりも高額な維持費への恐れの方が勝っています。それが価格の下落圧力になっているのです」と語る。

一番安い。BMW 750i(1987~94)は5,300ユーロ(約71万円)から。

BMW 750iは市場で最も安価なV12エンジン車だ
80年代後半のBMW 750i(E32)は、5,300ユーロ(約71万円)という超安値で、マルチシリンダーのエリートクラブへの切符を手に入れることができる。
戦後初のドイツ製V12(5.0リッター/300馬力)は、現在、場末のディーラーで、格安で販売されている。
しかし、正しいメンテナンスの欠如や維持費を考えると、お得な夢は見られない。
むろん状態の良い個体はそれなりの価値を維持しているが・・・。

また、「R129」シリーズの「メルセデス600SL」も、維持のコストを考えると購入意欲が減退してしまう1台だ。
このシリーズで最も高価なモデルである8気筒の「500」の価格は、今や「600SL」を追い越してしまった。
同等のコンディションであれば、394馬力の12気筒の方が数百ドル(数万円)安く、大差でトップだったデビュー年の1992年とは比較にならないほど下落した。
今日、愛好家たちは、その長所と短所を比較している。
V8エンジンを搭載したモデルは、価格が数百ドル安くなるだけでなく、そのメリットとデメリットを比較検討する必要がある。
さらに、V8モデルは200キロも軽く、ハンドリングもより機敏で、320馬力しかないにもかかわらず、実質的には同じくらい速いのだ。

長い間、過小評価されていた初期のジャガーXJ-Sは、愛好家の間で人気が高まっている(コンディション2で20,200ユーロ=約272万円)。
Photo: Christian Bittmann

V12ジャガーも安価だが、たいていメンテナンスがものすごく必要となる。
イギリスのジャガーブランドのV12セダンも魅力的な価格で取り引きされている(6,500ユーロ=約87万円から)。
かつてのプレステージカーの中には、過去数十年の間にかなりのメンテナンス履歴が蓄積されているものも少なくない。
それでも初期の「ジャガーXJ-Sとダブルシックス」は長い間過小評価されていたが、現在、愛好家の間ではその人気が高まりつつあり、今では状態の良い個体は希少となり、2万ユーロ(約270万円)以上の価格で取引されている。

Photo:Werk
Photo:Werk

ロールス・ロイスの「シルバーセラフ」の価格は下落しており、現在、コンディション2で、4万7,000ユーロ(約634万円)となっている。
「シルバーセラフ」は、1930年代の「ファントム」以来のV12エンジンを搭載したロールス・ロイスである。
しかし、BMWエンジンであることから、生粋の英国車マニアは猜疑的に見ており、クラシックとしてのステイタスはまだ見えてこない。

ランボルギーニLM002: 憧れのエキゾチックカー
一方、高額なコレクターズアイテムの場合は、技術的な複雑さを恐れる必要はない。
2018年に4,210万ユーロ((約56億8千万円))という金額で落札された「フェラーリ250GTO」は、販売価格記録を更新した。
フェラーリやランボルギーニと書いてあれば、高価なワークショップの請求書は現金で支払われるのが普通というのが常識だ。
さらに特に希少価値の高い車は、現在需要が高い。
近年、最も価格を上げているクラシックカーのひとつが、「ランボルギーニLM002」だ。
中東の首長を顧客対象とした「ランボルギーニLM002」は、総生産台数301台とランボルギーニにとってはセールス的にはヒットしなかったが、最近ではエキゾチックなものへの欲求の高まりや、ヒストリックなSUVへのトレンドの恩恵を受けている。
現在、コンディション2のランボの価格は、26万ユーロ(約3,500万円)以上もする。
これは2015年に比べて75%の値上がりだ。
以下に、コレクターカーの間でのその他の勝者と敗者を紹介する。

無敵の1台: フェラーリ250GTO(1964)はオークションで42,100,000ユーロ(約56億8千万円)という価格で落札された。 Photo: Courtesy of RM Sotheby’s

コンディション3で5,300ユーロ(約71万円)、80年代後半のBMW 750iは、マルチシリンダーのエリートクラブへのチケットとなる。戦後初のドイツ製V12(5.0リッター/300馬力)は、現在、砂利採取場のディーラーで販売されている。
しかし、メンテナンスの遅れや維持費の問題から、お買い得感は薄れつつある一方で、状態の良い個体は若干値上がりしている。
Photo: Roman Raetzke / AUTO BILD

メルセデス600SL(R 129)。デビューから3年後の1992年、R129はメルセデス史上初のV12エンジンを搭載したSLとなった。

愛好家の間では、賛否両論ある。また、V8モデルは200キロも軽く、ハンドリングも機敏で、320馬力しかないにもかかわらず、実質的には同じくらい速いのだ。クラシックデータによる600SL(1992~93年、394馬力)の価格は、コンディション2で22,200ユーロ(約300万円)、コンディション3で14,800ユーロ(約200万円)というものだ。

シルバーセラフ(「シルバーエンジェル」)は、1930年代のファントム以来となる、V12エンジンを搭載したロールス・ロイスである。BMWの血統を持つこのモデルは、英国マニアに複雑な想いを与え、クラシックの地位はまだ見えてこない。価格は急落し続けている。クラシックデータによるロールス・ロイス シルバーセラフ(1998~99年、326馬力)の価格は、コンディション2で47,000ユーロ(約634万円)、コンディション3で36,000ユーロ(約486万円)というものだ。

長い間、過小評価されてきたジャガーの初期型XJ-Sが、愛好家の間で人気を集めている。状態の良い個体は今や希少で、2万ユーロ(約270万円)を超えて取引されている。今後も価値の上昇が見込まれ、平均的な車との差は大きくなるだろう。クラシックデータによるジャガーXJ-S(1975~81年、287馬力)の価格は、コンディション2の場合で、20,200ユーロ(約272万円)、コンディション3の場合で12,200ユーロ(約164万円)となっている。

中東の首長を顧客対象としたランボルギーニLM002は、総生産台数わずか301台で、当時はヒットには至らなかったが、最近ではエキゾチックなものへの欲求の高まりや、ヒストリックSUVへのトレンドの恩恵を受けている。値上がり率は75%と、近年のクラシックカーの中では最も高い利回りを記録しており、その傾向はまだまだ上向きだ。クラシックデータ社によるランボルギーニLM002(1982~93年、375馬力)の価格は、コンディション2の場合は260,000ユーロ(約3,500万円)、コンディション3の場合は162,000ユーロ(約1,782万円)となっている。

ブガッティの再建者であるロマーノ アルティオーリは、EB110においてはほとんど成功しなかった。しかし、スーパースポーツカーへの関心が高まったことで、2015年以降、ミッドエンジンボライドの価格は30%上昇した(購入者はミハエル シューマッハ、ブルネイのサルタン、他)。クラシックデータによるブガッティEB110 GT(1991~95年、560馬力)の価格は、コンディション2で80万ユーロ(約1億800万円)、コンディション3で52万ユーロ(約7,000万円)となっている。

絶対王者: 米ペブルビーチでおこなわれた2018年のオークションで、フェラーリ250GTO(1964)はオークションで42,100,000ユーロ(約56億8千万円)という価格で落札された。これによって、64年式フェラーリ250GTOは世界一高い自動車販売価格の新記録を樹立した。

12気筒エンジン、それは究極の内燃機関であると同時に、複雑で設計もメンテナンスも大変難しいエンジンでもある(世界中で壊れない12気筒エンジンは、センチュリーくらいのものだ)。
BMWもメルセデスベンツもジャガーも、私の知っている12気筒エンジンは、それはそれは気難しく、燃費も悪く、そして値下がり(値落ち)が速かった。しかしそれでも12気筒エンジンにはロマンが溢れ、12本ものピストンが祝福するクルマは他とはやはり別格の存在感を醸し出す。
この世に、もう新しい12気筒エンジンがこれから生まれてくる余地は残っていないのかもしれないが、だからこそ今までに生を受けた12気筒エンジン車は、どの車も同じように、これからも歴史の中に燦然と輝いているのではないかと思う。

Text: Martin G. Puthz
加筆: 大林晃平
Photo: Tom Wood ©2018 Courtesy of RM Sotheby\’s