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その価格30億円超 世界一高価な自動車 ロールス・ロイス ボート・テイル その理由は?

2021年6月11日

ロールス・ロイス ボート・テイルは世界で最も高価な新車である。このロールス・ロイスは、約2,000万ポンド(約31億6千万円)すると言われている。しかし、何がこのクルマをそんなに高価にさせているのだろうか? そして、ジェイ・Z(Jay-Z)とビヨンセは実際にこのボート・テイルを購入したのだろうか?

多くの自動車ファンにとって、ロールス・ロイスはラグジュアリーの象徴だ。しかし、既製品のロールス・ロイスでもまだ満足できない場合には?そんなときには、英国の高級ブランドのポートフォリオに欠かせない存在となった、新設のコーチビルディング部門がある。2017年に発表された「スウェプテイル(Sweptail)」に続く、第2弾のプロジェクトとして、ロールス・ロイスは今回、真新しい「ボート・テイル(Boat Tail)」を発表した。これは、3台限定のラグジュアリーコンバーチブルで、2,000万ポンド(約31億6千万円)という驚異的な費用がかかると言われている。噂を信じるならば、最初の1台はラッパーで実業家のジェイ・Zと、その妻、アメリカのトップ歌姫の一人、ビヨンセに送られることになるという!と、少なくとも、ある関係者が、イギリスの日刊紙「The Telegraph」にそう語ったと言われている。

伝えられるところによると、この噂にはいくつかの根拠がある。例えば、「ボート・テイル」の壮大なバタフライスターンには、開閉式のパラソル、テーブル、2つのスツールが置かれているだけでなく、シャンパンクーラーも設置されており、「アルマン ド ブリニャック(ジェイ・Zのお気に入りのシャンパン)」を、完璧な6度の一定温度に保つことができるとされているのだ。ジェイ・Zが「スペードのエース」とも呼ばれるこのブランドの50%を、モエ・ヘネシー社に売却したのは、2021年初頭のことだった。さらに、「ボート・テイル」のブルーの色合いのひとつは「ブルーアイビー」と名付けられているが、偶然にもジェイ・Zとビヨンセの娘の名前は「アイビー」だ。

ボート・テイルのパーティートリック。充実したピクニックキットが常備されている。

さらに、この「ボート・テイル」は、ジェイ・Zとビヨンセが大好きなコートダジュールでのリラックスしたクルーズのために設計されている。だが今のところ、これらの点はすべて純粋な推測であり、ジェイ・Zとビヨンセが本当に約2,000万ポンド(約31億6千万円)もする「ロールス・ロイス ボート・テイル」のオーナーになるという決定的な証拠はない。「The Telegraph」誌によれば、ジェイ・Zはフロントのロールス・ロイスのバッジの下側に、ビヨンセはリアのバッジの下側にそれぞれサインをしたと言われている。

そして、この「ボート・テイル」は、ブガッティの「ラ ヴォワチュール ノワール」よりもさらに高価だ。しかし、「ボート・テイル」が特別なのはなぜだろうか?誰が所有しているかにかかわらず、ロールス・ロイスは世界で最も高価な新車といわれており、その価格は約2,000万ポンド(約31億6千万円)という驚異的なもので、1,670万ユーロ(約22憶5千万円)のワンオフモデルであるブガッティの「ラ ヴォワチュール ノワール」をも大幅に上回っている。2017年には、ロールス・ロイスの「スウェップテイル」がこの「世界一高い自動車」のタイトルを保持していた。これは、現代のロールス・ロイス初のコーチビルドプロジェクトから生まれたモデルだった。圧倒的な反響を受けて、第2のプロジェクトである「ボート・テイル」が納車後すぐにスタートした。全部で3台のクルマが作られるが、それぞれが高度な個性で明確に区別されることになっている。しかし、その3人の購入者は、ある一点で一致した。それは、”Show me something I’ve never seen before”(いままでに見たことのないものを見せてくれ)である。

ボート・テイルのために1800個以上の新パーツを設計

そして4年後の2021年、ロールス・ロイスの「ボート・テイル」は、間違いなく特別なものとして完成した。5.8mの「ボート・テイル」のために、1,813個ものパーツが新たに設計された。その多くは、ヨットスタイルのスターン(船尾)であると思われる。この記事では、その詳細をすべて紹介することはできないが、特別に豪華なピクニック用品が見どころのひとつであることは間違いない。ロールス・ロイス社は、エンジンや性能に関する情報をまだ公表していない。しかし、「ボート・テイル」には実績のあるV12が搭載されることが推測される。また、残りの2台が完成するまでにどれくらいの時間がかかるのかも、現時点では不明だ。

最初、このニュースを見た時にはつい計算間違いをしてしまい、価格は3億円か、と思ってしまったが、実は30億円なのであった。3億円だって十分高価で、普通の「ロールス・ロイス ファントム」が6台も買えるというのに、30億円だと「ロールス・ロイス ファントム」が60台、もう少しお安い「ロールス・ロイス ゴースト」だと100台くらい買える(大量に買うことで、きっと値引きしてくれるという期待も含めて)。

ここまで一台の自動車に払うかどうかは別として、30億円で買えるものは、かなりの大きさのメガヨットだったり、これまたかなりの性能のプライベートジェット機であったり、相当な大きさの別荘だったりと、どれも私には縁がないものばかりである。おそらく(というか絶対)、この「ロールス・ロイス ボート・テイル」を購入される方は前に記した品々はすでにお持ちであろうし、自動車だって数えきれないほど持っているに違いない。パラソルが立ったり、シャンパンが冷え冷えになったりするような装備だって、実際にそういう高貴な方々がお使いになるとは到底思えないが、あくまでもパーティーやお友だちを招いての「お遊び」の席で、「一回も使うことのない装備を見せて、楽しむ」。そんなギミックアイテムなのだろう。

そう考えるとこの「ロールス・ロイス ボート・テイル」そのものだって、実際に乗って楽しむかどうかは怪しいし、そういう乗るための自動車ではないともいえる。あくまでも遊びの中で、自分がいかにお金を持っているかを主張するアイテムであり、それを現実化するメーカーが、いよいよこの21世紀に再び本気になったのだと思う。

これからもこういう超少数の限定モデルやワンオフ、ベントレーのような再生産モデルなどがまだまだ発表されるだろう。そしてそれは私たちの目を楽しませたり、友人とのおしゃべりのネタになったりするのだから、どんどんやってほしい、とも思う。世の中には、こういうとんでもないクルマがあるからこそ、愉しく、ああだこうだとバカ話のネタになりえるのである。

Text: Jan Götze
加筆: 大林晃平
Photo: Rolls Royce