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ガチンコ勝負 VWゴルフR-ラインとBMW 118iが激しく競い合う 果たしてその勝者は?

2021年6月7日

比較テスト: BMW 1シリーズ対VWゴルフ。この2台は日常生活のためのスポーツウェアだ。

VW ゴルフR-LineがMスポーツパッケージを装着したBMW 1シリーズに対抗。1.5リッターのガソリンエンジンを搭載したゴルフには、130馬力のバリエーションも登場。比較テストでは、BMW 118iと対戦した。レポート。

通行人はちょっと驚いている。
「うわー、ゴルフRかなー?」
申し訳ないがこれは130馬力の外見のみR仕様だ。
「R-Line」は、4本のテールパイプダミー、18インチホイール(490ユーロ=約6万5千円)は、追加コストで多くの快適性を奪うものの、ゴルフをハイパフォーマンスに見せている。
1.5リッター3気筒で136馬力のBMW 1シリーズも、「Mスポーツパッケージ」と10ミリのローダウンで、楽しいスポーツバージョンに見える。

ハンドリングの面でゴルフは追いつけない

「ゴルフR-Line」は、4気筒、気筒休止、48ボルト電動システムとスタータージェネレーターによるマイルドハイブリッドのほか、ロータリースイッチをなくしてすっきりとしたコックピットを採用している。
2003年に「ゴルフ4」を購入し、今、ゴルフ8に乗り換えようとしている人は、親指で操作するギアシフトのコントロールスイッチがあるだけなので、やや戸惑うだろう。
センサーフィールドや、純粋なタッチスクリーンでの操作は、ややこしく、人を不安にさせ、スマートフォンに慣れていない人には、笑顔というよりも、むしろ緊張感を与える。
そこで登場するのが、音声による操作だ。
しかしこれまた、オンラインベースなので、車がネットワークに接続されていないと、例えば興味のある場所を検索するときに女性は途方に暮れてしまう。

わかりにくい。ゴルフでは、ボタンのないタッチスクリーンの操作に戸惑うことがよくある。

「コネクティビティ」は比較的遅いが、アシスタンスシステムは、少なくとも言葉の上では、かなり正確に働いている。
「アクセルペダルから足を離してください!」というのは、セーリング、つまりエンジンを切った状態で走行しているときのクルマからの要求だが、我々はもっと親しみやすい言葉を提案する。
「流れに任せてください」、と。

1シリーズのチューニングは少し厳しい印象

インテリアも「親しみやすさ」が求められる。
Bピラーから先は硬質プラスチックのみ。
それは以前のVWの方が高貴に見えたし、必ずしも贅沢な車輌価格を正当化するものではない。
前述のオプションであるフラット断面の18インチホイールは、ゴルフの15段階の減衰力を持つアダプティブダンパーの快適性を著しく低下させる(1045ユーロ=約14万円の追加料金)。
しかし、「Mスポーツパッケージ」と10mmローダウンを装着した試乗車のBMWは、石畳ではさらに厳しく、粗い印象を受けた。
アダプティブダンパーは、「BMW 1シリーズ」の「120i」以降にのみ搭載されている。
また、「1シリーズ」には7速デュアルクラッチオートマチックが搭載されており、VWのトランスミッションよりも少し高めにギアを回転させることができるようになっている。

正直、あまり快適ではない。Mパッケージは1シリーズを、より硬く、より低くする。

「118i」は3気筒しかないので、走行性の犠牲が予想される。
しかし、先日、他の1シリーズで批判した直進性の不安定さは、このスポーティなスタイルのモデルには当てはまらなかった。

チェックアウトの際にはBMWがVWに負けるのか?

横方向のサポートが充実していて、座面が長いゴルフの模範的なシートに対して、BMWは多くの調整オプションを備えている。
どちらもそれぞれの方法で最高のものだ。
これはブレーキ性能にも当てはまる。
素材の選択がより洗練されていることに加えて、BMWの利点は、ロータリープッシュダイヤルによる操作が分かりやすく、気が散らないことだ。
ボイスコントロールはよりスムーズで自然に動作し、ヘッドアップディスプレイは特に見やすくなっている。
全体的に楽しい「1シリーズ」の調和を乱しているのは、ステアリングのクセだ。
低速域では、昔のGメルセデスのような妙な硬さを感じるが、高速道路では再び調和がとれた感じになる。
ゴルフのステアリングは、よりリニアで、より自然で、丸みを帯びている。

高価なコンパクトカー。ゴルフは36,160ユーロ(約485万円)、BMWはなんと40,120ユーロ(約538万円)だ。

BMWは、購入価格、ステアリング、洗練性、燃費でポイントを落としており、回転半径も大きい。
ゴルフは、実用的なディテールでも得点を稼いでいて、 通りすがりの人を驚かせることはできないものの、満足させることはできるだろう。

第2位 800満点中532点: BMW 118i
わずかに速い加速性、より優れた操作性、高級感があるが、そのエンジンを考えれば価格が高いのが難点だ。ステアリング、スムーズさ、快適さでもポイントを失う。

第1位 800満点中555点: VWゴルフ1.5 eTSI
バランスのとれたシャシーとステアリングはいつも通りで、経済的だ。しかし、DSGの作動ややインフォテイメントシステムの操作性は、乗るものを神経質にさせ、やや混乱させる。

結論:
どちらも最高の走行安全性、第1級の制動性能、良いシートを備えながら、価格は控えめだ。
「ゴルフ」のパワートレイン、シャシー、ステアリング、「1シリーズ」の操作性、インフォテイメント。
この2台のそれぞれの良い部分を1台にまとめて、ほぼ最適なコンパクトを組み立てることができたらと理想的なのだが・・・。

こういう風に、2台の良い部分がひとつになったら、というのは昔からよくある話で、例えばメルセデスベンツの足回りに、BMWのエンジンとか、そういうのが少なくとも以前は定番だった。
今回注目すべき点は、フォルクスワーゲンの良いところがパワートレイン(つまりエンジンやトランスミッション)、シャシー、ステアリングという部分であり、一方BMWの良いところがスイッチなどの操作性、だというところである。
これは本来逆のハナシのように思えてならないのだが、今やそういう時代になってしまったというのはなんとも面白いが、複雑にも思う。
操作性の悪いフォルクスワーゲン、エンジンやシャシーに魅力のないBMW…。そんなことに何時ごろからなってしまったのだろうと感じると同時に、クルマはやっぱり乗ってみなければ、イメージだけでは何もわからないのだなあ、と痛感した次第である。

Text: Rolf Klein, Mirko Menke
加筆: 大林晃平
Photo: Olaf Itrich / AUTO BILD