このクルマなんぼ? 走行距離13万6千kmのこのポルシェ911(996)カレラSカブリオ 価格は?
2021年6月4日
メンテナンスの行き届いたポルシェ911(996)カレラ4カブリオが現在eBayで販売されている。この第5世代のポルシェ911は、徐々にネオクラシックとして成熟しつつある。しかしまだ車そのものは比較的安い。ここでは、eBayで販売されているメンテナンスの行き届いたコンバーチブルの911を紹介する。
1997年から2006年まで生産された996型の「ポルシェ911」は、現在、最も手頃な価格で911に乗ることができるモデルであることは明らかだ。
「996」は、水冷ボクサーエンジンを搭載した「初代911」であるだけでなく、安価なエントリーモデルである「ボクスター(タイプ986)」と技術的に密接に結びついていた。
特に、涙目のような形のフロントヘッドライトを持つ「911」の外観は、当初、ポルシェファンから多くの批判を受けていた。
2001年のモデルチェンジでは、オレンジ色のパーツが透明なガラスの後ろに移されたため、フロントの印象はちょっとだけ改善された。
2000年の「ポルシェ996カレラ4カブリオ」は、現在eBayで、29,996ユーロ(約400万円)で販売されている。
「996」シリーズの価格は、ここ数年、人気の高まりとともに継続的に上昇している。
クラシックデータ社によれば、「カレラ4カブリオ」の市場価格は、コンディション1で32,900ユーロ(約440万円)、コンディション2で25,000ユーロ(約335万円)、コンディション3で17,500ユーロ(約235万円)となっている。
つまり、今回出品された996には、まだ値段交渉の余地があるとも言える。
なお、出品されている「996」は「ミレニアムエディション」ではない。
売り手は広告タイトルに「ミレニアム」という言葉を使っているものの、出品されているポルシェは限定モデルの「ミレニアムエディション」ではないことに注意が必要だ。
この特別シリーズは、911台限定で、黒緑紫の玉虫色の特別塗装「バイオレットクロマフレア(Violett chroma flair)」が施されていた。
専用の特別装備や、センターコンソールには、連番のアニバーサリーバッジが用意され、比較にならないほど高価なものだった。
クラシックデータでは、このスペシャルエディションの「カレラ4」をコンディション2でも4万ユーロ(約540万円)、コンディション3では2万8千ユーロ(約375万円)としている。
ただし、このエディションからはコンバーチブルバージョンは生産されていない。
今回出品された黒の「911カレラ4カブリオ」は、これまでに13万6,000kmを走行している。
水冷6気筒ボクサーエンジンは300馬力を発揮し、わずか5.2秒で0から100km/hまで加速する。
最高速度は280km/hだ。
装備も充実しており、電動レザーシートやウィンドウ、エアコン、サウンドシステムなどはちゃんと整備されているようだ。
業者によれば、「996」のエンジンは500km前に1万ユーロ(約134万円)でオーバーホールされているとのこと。
全体的に見て、この2000年モデルの「996」は、出品写真では非常に手入れの行き届いた印象を受ける。
しかし、今後に必要とされるはずのメンテナンスや修理にはお金がかかることを理解しておくように。
特にポルシェセンターに行かなければならない場合はそうだ。
追加作業を伴わないマイナーインスペクション(点検整備)でも650ユーロ(約8万7千円)かかる。
フリーの専門家はもっと安くやってくれるが、メンテナンスブックレットのPZスタンプ(ポルシェセンターによる点検や整備の承認印)は転売のための保証となる。
初期の3.4リッターの水冷ボクサーエンジンでは、クランクシャフトのオイルシールがよく漏れる。
シリンダーボア面の変形やピストンの横滑りによるエンジン損傷も発生した。
エンジンの修理や交換を行ったかどうかは、必ず車両履歴で確認してほしい。
走行特性や安全性はほぼ新車レベルで、完全に亜鉛メッキされたボディはサビも見当たらない。
それにもかかわらず、腐食を発見した人は、その原因を探すべきだ。その部分は素人が補修した事故のダメージかもしれないからだ。
内装のプラスチックは、決して高品質で経年変化に強いとは言えず、経年変化で見苦しくなることもある。
薄い革張りは、特に運転席側がすり減りやすい。
「996」には、壊れるもの、摩耗するものなど、交換部品がほぼすべて用意されている。
ポルシェクラシックでは、公式のオリジナルパーツプログラムで、このモデルをサポートしている。
しかし、独立したパーツディーラーでも、中古部品や再生部品など、多くの部品を扱っている。
たとえ「996」が他の「911」に比べて最も安価であったとしても、「996」は歴代の911のDNAをしっかりと受け継いでいるので、クラシックシーンでの活躍が期待できる。
もちろん、ポルシェであるからにはそれなりのメンテナンスやスペアパーツのコストは軽視できるものではないが・・・。
バカボンに出てくるお巡りさんの目玉のようなライトを持つ「996」も、実は「GT3」とか特別なモデルはまったく値落ちせず高い状態のままであるが、普通の、特にティプトロニックで不人気の色で、ライトのカバーが黄色く変色してしまっているようなモデルは、かなり値落ちして、買いやすくなっているといえよう。
それでも20年も経っているクルマが、200万円以上もするということは、普通の人間には理解できない世界かもしれないが、あのポルシェがこんな値段で買える、ということは自動車好きの購買欲を刺激することも間違いない。
だが維持にはそれなりの費用もかかるし、正直言って「996」の中には、性能や格好の面などで内容的に魅力に欠けるところあるため、安いからぜひ買いです、とは言い切れないものも確かである。今回の一台はカレラSのカブリオレということもあり、なかなかいいなぁと思う人も多いだろう。もし好きならば、この一台はなかなか悪くないと個人的には思うが、あのライトの部分だけはやっぱり馴染めない、というのが正直な感想である。
Text: Matthias Techau
加筆: 大林晃平
Photo: eBay/home_eric