【ユーズドカーチェック】中古を買うなら911、なのだろうか?
2020年3月4日
ポルシェ911 (997): ユーズドカーテスト
911に3万ユーロ(約375万円)というリスクをかける?デビュー以来14年、いまや997シリーズ911でさえ、価格的には手の届かない存在ではなくなった。しかしその一方で、購入を考えている人は何かあった時には高価なリスクを覚悟しておかなければならない。
正直なところ、夢を見ている間にあるクルマがどうしてもほしくなったことはないだろうか? もしそうなったらどうするか? あなたが単純に不合理な人間であり、幸いにしてあなたが苦心して貯めたお金が家族用の新しいSUV、あるいはハウスローンの返済に使われずに、そのお金はポルシェ911を所有するという夢を実現するために費やされたとしたら?
もし中古であれば、911は少しの節約、少し背伸び、あるいはおばあちゃんへのおねだりで手に入れることのできるレベルにある。
確かに、いまや993シリーズ911までの空冷モデルは貴重なコレクションとなった。最初の水冷式911である996シリーズの目玉焼き型ヘッドライトは、911純粋主義者たちの楽しみを損なうだけにとどまらなかった。
しかし、その後継の997シリーズ911はどうだろうか? 2004年にクラシックラウンドヘッドライトへの原点回帰とともに、再びファンの心をつかみ、今ではかつてないほどタイムレスで魅力的なモデルと称されるが、その魅力的な997の初期カレラおよびカレラSモデルは、約3万ユーロ(約375万円)という価格から売りに出されている。果たしてこのアイコンモデルその割安価格に見合うものだろうか?
想定価格3万ユーロ(約375万円)のバーゲン911がエンジンオーバーホールワークショップで見つかることがある。それは果たして大丈夫なのだろうか?
新しいエンジン2万5千ユーロ(約312万円)という壁
ポルシェのユーズドカーに興味があるならこのハンブルクの東にある会社の名をおぼえておくべきだ。スポーツカーサービス、アレックス・フォン・ブリッテルスドルフは、ポルシェの面倒を様々なかたちで診てくれ、修繕してくれる。997も数台、ガレージの内外に置かれていた。彼らは997のアキレス腱もよく理解している。
3.4リットルから3.6または3.8(カレラS)への切り替えにより、クランクシャフトオイルシールが制御不能になる問題も起きやすくなったし、ピストンの摩耗速度も増加した。その結果、25万kmでダメになるマシンもあれば、5万km以下でダメになるマシンもある。
どちらにせよ、その場合にはとても高い修理費が必要となる。エンジンのオーバーホールは2万ユーロ(約250万円)、新しいエンジンだと2万5千ユーロ(約312万円)の壁を簡単に超える。
ブリッテルスドルフは、「我々のお客さんの中には、911に持っているすべてのお金を使った人がいます。もし6か月後にエンジンが耳障りな音をたてるようになれば、その時点でその人の911ドリームは終わりです」と語る。
そしてそれ以外の維持費も家計を圧迫する。標準的な作業でさえ、あらゆる生活上の計画を粉砕する事態を招く可能性を秘めているからだ。
「ポルシェ公認保証(Porsche Approved Guarantee)」に入れば多少の安全は約束される。しかしそれには、高価なポルシェ公認のワークショップでのメンテナンスを受ける必要があり、またそれを受けるには年間1600ユーロ(20万円)という莫大な料金がかかる。その投資は15年以上車を愛用したい、または所有したいというごく少数の人たちのための必要経費だ。 さらにその場合にはタイヤに至るまで、100パーセントメーカーオリジナルなものの使用が求められる。
コスト | |
検査 | 600-900ユーロ(約7万5千~1万2千円) |
スペアパーツ価格(工費&消費税込み) | |
オルタネーター(AT) | 1163 euros(約14万5千円) |
スターター | 1011 euros(約12万6千円) |
ウォーターポンプ | 559 euros(約7万円) |
マフラー | 2116ユーロ(約26万4千円) |
フェンダー塗装 | 1276ユーロ(約16万円) |
左右フロントブレーキディスク&パッド | 796ユーロ(約10万円) |
慰め:価値の損失は大きな役割を果たさない
ハンブルクでポルシェのスペシャルショップを経営するデニス・ノイマンは、「いずれにせよあまり節約はできない。安い部品を使って修理すれば、売るときに叩かれる」と警告する。だが、通常4万ユーロ(約500万円)の新車は3年後にはおよそ半分の価値となるが、丁寧な扱いで、少ししか使用されていない997であれば価値を失うことはないともいう。
911はそれ自体が最高の性能を発揮するようにできていて、エクストラなものを備え付ければ付けるほど重くなり、壊れる。その代わり、完全なメンテナンス履歴を持つオリジナルを購入することをお勧めする。たとえリスクを完全に排除できないとしても、このスポーツカーのアイコンと同じくらい忠実で愛情のあるオーナーたちが存在するからこそ、そういうモデルがいつの時代も存在することも事実ある。夢は生き続けなければならないようにできているのだ。
Photos: Thomas Ruddies
我々のお勧め997代替モデル第1号:マセラティ・クーペ(2005)
390馬力モデルは2万5千ユーロ(約312万円)くらいから見つけることができる。
ただし信頼性には大きな問題も多く、安いからと言って迂闊に手を出すのは禁物。
我々のお勧め997代替モデル第2号:メルセデスSL500(2005)
306馬力のSL500は2万ユーロ(約250万円)くらいから見つかる。我々のSL500のテスト評価は5点中4点だが、911ほどのダイレクトな運転感がないことと、もはやSLには特別なアイコンが見つけにくい。SLK(SLC)という弟と見分けがつきにくいのだから。
日産350Zもオプションに入る?
おそらく。300馬力2006年モデルなら1万5千ユーロ(約187万円)くらいから見つかる。我々の350Zのテスト評価は5点中3.5点だ。故障は少なく、実用的ではある、でもポルシェが欲しい人には、まったく説得力は持たない。