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世の中にこんなクルマあるの知ってましたか? ホンダS2000のテクノロジーのほぼすべてを備えたボクスホール シベット(オペル カデット)

2021年5月23日

オペル シベットCC(1982)。ホンダS2000のVTECエンジンを搭載したオペル シベットCCが販売中。このクレイジーなワイドボディモンスターは、古いオペルのスモールカーとホンダS2000を掛け合わせたものだ。何よりも不思議でおかしいことは、このイカれた作品が現在販売されていることだ。最新情報。

何これ?
オペルです。
でも中身はほぼすべて「ホンダS2000」だ!
そもそも、この世に、こんなクルマが存在していること自体を知らない人が多いのではないだろうか。
この「シベットCC」は、世界で最もクレイジーなオペルの改造車のひとつかもしれない。
厳密に言えば、これはオペルの英国ブランド、ボクスホールの作ったモデルだ。
しかし、イギリス製「シベット」はドイツではオペルとして販売されており、厳密にいえば、そのベースとなったのは、「オペル カデットC」だ。
第二に、ボンネットにどのようなロゴが貼られていようと関係ない。
そのボディの下には、エンジンからコックピットまで、実はホンダの「S2000」が入っているのだ。
この個体は現在、アメリカの「bringatrailer.com」でオークションにかけられた。

エンジン、トランスミッション、サスペンションはホンダS2000のものを使用
この「シベットCC」は1982年に製造され、2008年にイギリスからアメリカに輸入されたものだ。
オーナーがどのようにしてオペルを、なぜ日本車に偽装することを思いついたのかは不明である。
いずれにせよ、2000年式の「ホンダS2000のエンジン」を、この小さなボクスホールに移植した。
従って、ボンネットの中には、2リッター4気筒の自然吸気エンジンが搭載されている。
VTECエンジンは9000rpmまで回転し、最高出力241馬力を発揮する。
新しい排気システムと吸気口のおかげで、この個体の性能はそれ以上になるはずだ。
このエンジンは、そのパワーをリアアクスルに伝達する。
ホンダ製ロードスターの6速マニュアルトランスミッション、リミテッドスリップデフ、ブレーキシステム、リアアクスルサスペンションも、この「シベット」に採用されている。
さらに、ホイールアーチには、「S2000」譲りの16インチホイールが装着されている。
タイヤはトーヨー プロクセス(Toyo Proxes)スポーツで、サイズはフロントが225/50、リアが245/45だ。
そして、ビルシュタイン社製のコイルオーバーサスペンションがボディを路面に近づけている。

S2000のVTEC自然吸気エンジンを搭載し、パフォーマンスと楽しさを向上させた。ちょっと様々な補器類やパーツのレイアウトに無理があることは見ての通り。

カーボンパーツを使用したワイドボディキット

ボディについて言えば、ボクスホールのベースを彷彿とさせる部分があるだけだ。
カーボンパーツをふんだんに使ったボディキットにより、「シベット」の横幅は大幅に拡大されている。
しかし、写真を見る限りでは、隙間の寸法が気になるし、ロケットバニー風のネジが見えるのも、なんだか粗末な感じがする。
また、「S2000」用のサイドミラーと大型の補助ヘッドライトを4つ装着しているとのことだ。

プラスチック製のボディキットの魅力を無理にでも好きになる必要がある。しかし塗装をすればもっと良くなるはずだ。

コックピットのほぼ全てがホンダ製

しかし、内部を見てみると、もっと驚くべきことがある。
なんと、「S2000」の内装がほとんどそのまま使われているのだ!
ダッシュボード、計器類、スタートボタン(ちゃんと動く!)、ステアリング、センタートンネル、シフター、シートなどがホンダのものだ。
大判のカーボンパネルを使って不揃いのパーツをなんとか「フィット」させている。
運転席のフットウェルには消火器があり、4点式シートベルトで安全性を確保している。
そして、エアコンやパワーウィンドウが高級感を演出している。

S2000のダッシュボードはシベットを左ハンドルにしており、カーボンパネルで覆われている。細部の仕上りなどはあまり気にしてはいけない。

落札価格は約12,000ユーロ

売り手によると、このボクスホール/ホンダには、若干のサビといくつかのへこみがあり、走行距離は不明とのことだ。
2020年にマスターシリンダーを含むクラッチ、エンジンオイル、リアタイヤを交換している。
この車は現在アメリカのノースカロライナ州にあり、「bringatrailer.com」でオークションにかけられ、最高入札額は15,750米ドルだった。

まあこういうクルマに、ああだこうだと、目くじらをたてて細かい部分をあげつらったり、重箱の隅を楊枝でほじくるようなことをしたりしてはいけない。
世の中にはいろいろな人もいて、こういうクルマもあるんだなぁ、と楽しめばそれで十分だろう。おそらくこれを作った人は、ホンダのVTECのあの回転感や、「S2000」のハンドリングがどうしても自分の「オペル カデット」に欲しくて、合体させたのだろうから、その熱意を誉めてあげるべきで、少なくとも私にはそういうアイディアは思いつかないし、もちろん合体させようという情熱のかけらも持っていない。
だから頭に浮かんだアイディアを形にして、ちゃんと走るようにしたオーナーにもし遭遇したら、「よくやったね」と一杯おごってあげたいほどだ。でもその席で、譲ってくれると言われたとしても、このクルマを買うような度量も男気も僕にはない。あくまでもそっと見ているだけでおなか一杯である。

Text: Moritz Doka
加筆: 大林晃平
Photo: Bring a Trailer