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GRハチロクの誕生???ちょっと思いつかないユニークな発想のチューニング

2021年5月16日

カローラレビン(AE86)はドリフトのアイコンと言われ続けているが、GRヤリスの3気筒エンジンに載せ替えるという発想のチューニングは、今まで誰も考えたことがない。以下にレポートする。

ドリフトのアイコンモデルと言えば?
そう、エーイーハチロク(AE86)だ。
伝説のドリフトマシンと言えば?
そう、カローラレビンだ。

トヨタ カローラレビン(AE86)に異なるエンジン?
「AE86」は伝説の漫画「頭文字D(イニシャルD)」の影響もあり、ドリフトマシン用の改造のベースとして人気があり、「エンジンスワップ(交換、載せ替え)」は基本的に当然のことと言うか常套手段だ。
しかし、それら載せ替えようのパワーユニットは、「スープラ」の2JZ6エンジンや、日産200SX(輸出用シルビア)のSR20DETエンジンであることが多い。
しかし、日本の「ダディーモーターワークス(Daddy Motor Works)」は、それとは違うアプローチをとっている。
オーナーの大藤氏は、「GRヤリス」に搭載されている、強力なターボ3気筒を「ハチロク」に移植したいと考えているのだ。

同じ排気量で1気筒少ない

GRヤリスに搭載されている3気筒エンジンは、標準の4気筒に比べて大幅に短くなっているが、同時に背も高くなっている。

日本では、「GRヤリス」のG16E-GTSは、1.6リッターの排気量で272馬力、370Nmのトルクを発生する。
これですでに、様々なテストを通じて、四輪駆動の「ヤリス」では、ドライビングプレジャーが確保されていることが確認されている。
その「ヤリス」に搭載された3気筒エンジンが、「AE86」に230kg弱の軽量化を実現させたが、このことが後輪駆動のカローラレビンにどのような影響を与えるかは、まだ誰にもわからない。
また、「ダディーモーターワークス」は、エンジンチューンナップによって、更なるパワーアップを施すことができるはずだ。
いずれにしても、冷却システムなども考慮して設計されている。
オリジナルの「4A-GEU」4気筒エンジンよりも、エンジンが大幅に短くなったため、フロントエンドには大型のウォータークーラーやインタークーラーを搭載するためのスペースが確保されているからだ。

過去40年から様々なトヨタのパーツ

エンジンだけでなく、その他のパーツもトヨタのさまざまなモデルから集められている。
トランスミッションには、「トヨタGT86」のマニュアルギアボックスを使用している。
リアアクスルは「S110クラウン」のもので、デフはドイツで「レクサスIS」として販売されている「アルテッツァ」のものを流用している。
リアのドラムブレーキは、「トヨタ エスティマ(本国ではプレビア)」のディスクブレーキを流用している。
つまり、1980年代初頭の「カローラレビン(AE86)」は、過去数十年のトヨタ車の「ベスト オブ ザ イヤー」のような存在なのである。

GRヤリスのエンジンが新品パーツとして買える

現在、ドリフト用「カローラレビン」はまだ製作中だ。
次の東京オートサロン(2022年1月)までには完成するはずだという。
それまでに大藤氏が、この「AE86」に何をするのか、興味深いところだ。
今から自分で改造しようと考えている人は、「GRヤリス」のエンジンを日本で新品パーツとして購入することができる。
費用は、排気系を含めて約6,600ユーロ(約88万円)。
ただし、アドオンパーツや配線などは別料金だ。
問題はベース車両の「AE86」を入手することだろう。
アニメ「頭文字D」でタクミの豆腐タクシーとして主演したおかげで、トヨタ カローラレビン(AE86)の状態の良い中古品は、とっくに2万ユーロ(約266万円)を超えているからだ。

標準状態の86はこんな感じだ。写真は、1983年のクーペバージョン、もちろん輸出仕様だ。

「ハチロク」、もちろん今トヨタの販売店で売っている「86」ではなく、昔の「ハチロク」はいつまでも人気が終わらないクルマであり、こういうクルマがあるということはトヨタにとっても大きな財産であるといえる。
「ハチロク」は、「トヨタ2000GT」とは違い、大量生産されたし、価格も普通のクルマであったといってよい。だからというべきか、今でも多くの人に愛されつつ、峠やサーキット(の駐車場)などでまだまだ大活躍中なのである。そこが大切にコレクションされたり、一年の天気の良い日だけ大切に運転されたりする「2000GT」と大きく異なる。
そんな「ハチロク」に「GRヤリス」のエンジンを積む、というのは生粋のハチロクファンからしたら「なんだよぉ」なのかもしれないが、年並みにかなわないエンジンに疲れを感じ、これからもハチロクをガンガン運転することで喜びを感じるオーナーにはいいのではないだろうか。
いっそのことフルタイム4輪駆動のシステムも移植してしまえばいいのに、とも一瞬思ったものの、「ハチロク」の魅力はFRであることであり、テールスライドやドリフトであることも確かである。そう考えると特性さえも大きく変わってしまうフルタイム化は、やってはいけない愚行なのだろう。

Source: Speedhunters, Daddy Motor Works
Text: Moritz Doka
加筆: 大林晃平
Photo: youtube.com/DADDYMotorWorksOfficial