ラグジュアリーな特別仕様車 ルイ・ヴィトン、グッチ、エルメスなどが手がけるクルマたち
2026年11月4日
ルイ ヴィトン、グッチ、MCM、エティエンヌ アイグナー、エルメス: ファッションブランドが、高級から中級までの量産車を次々と独自の仕立てを施してきた。我々がとびきりスタイリッシュなモデルを紹介する!
なんということだ! ブランドを中心に人生が回っている世界中の人々が、大いに色めき立っている。ラゲッジメーカーのルイ・ヴィトンと、ポルシェのレストモッドを手がけるシンガーが、共同で2台のカスタム ポルシェ911を披露したのだ!

Photo:Singer/Louis Vuitton
シンガーとルイ・ヴィトンによるポルシェ911:贅沢な旅のための2台の911

Photo:Singer/Louis Vuitton
911クーペとカブリオレは贅沢に仕立てられ、スーツケース、バッグ、衣類、ヘルメット、取り外し可能な時計、そしてサーフボードまで備えている……そう、本当なのだ。写真を見ると、どうにもAIで作ったように思えてしまうが、革好きとブランド愛好家にとって夢のようなこのクルマは実在する。

Photo:Singer/Louis Vuitton
自動車メーカーとバッグメーカーの協業は50年以上前から
魅力的なアイデアではあるが、目新しいものではない。考えてみれば、それも当然だ。クルマは移動や旅のためのものであり、できればその姿も格好よくありたい。スーツケースやバッグにも同じことがいえる。どちらの世界にも、強い吸引力を持つブランドが存在する。そして何より、どちらの世界にも、新しい商品に必要以上のお金を払うことをいとわない顧客がいる。しかも、桁違いに多くのお金を。
AMC ホーネット グッチ スポーツアバウト(1972年):ファミリーワゴンにラグジュアリーを

Photo:Bring a Trailer
アメリカン モーターズ コーポレーションとグッチオ グッチSpAは、早くも1972年に手を組み、「AMC ホーネット グッチ スポーツアバウト」を送り出した。今の視点から見ると興味深いのは、ベースとなったコンパクトワゴンのAMC ホーネット スポーツアバウトが、高級車ではなく、むしろ実直で庶民的なクルマだったことだ。それでもグッチは、グリーンとアイボリーのシート表皮とドアパネルに、オレンジがかった赤のアクセントを組み合わせた。このグッチパッケージの追加料金は141.75ドルだったという。

Photo:Bring a Trailer
AMCは、ホーネット スポーツアバウト グッチを4,835台販売した。こうしたコラボレーションをもっと増やしていれば、この自動車メーカーの助けになったかもしれない。1987年、クライスラーが同社を買収し、AMCブランドは廃止された。グッチが先にAMCを買ってくれなかったのは残念だ。

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キャデラック セビル グッチ エディション(1979年):マイアミへようこそ
アメリカ市場ではAMCがラグジュアリーの頂点とは見なされていないことを、誰かがグッチの人々に教えたのだろう。キャデラックなら、もっと華やかさが期待できた。ただし、キャデラック セビルIの傾斜したリアが、多くのクルマ好きからからかわれることまでは、グッチも予想していなかったに違いない。

Photo:Gucci
ほかのモデルとは異なり、ここではラゲッジブランドが自動車メーカーと直接協業したわけではない。カスタマイズは、アルド グッチとインターナショナル オートモーティブ デザイン社との共同事業だった。グッチ仕様のセビルは、デトロイトにあるキャデラックの工場ではなく、マイアミで架装され、現地のブレイマン キャデラックを通じて販売された。

Photo:Gucci
このキャデラックに装飾をちりばめたのは、創業者の息子であるアルド グッチ博士本人だったという。ある雑誌には、彼のこんな言葉が掲載されている。「この自動車には強い思い入れがある。私がこれまでの人生でデザインしてきたものとは、根本的に異なるからだ」。
マイアミのブレイマン キャデラックは、この「グッチラック」を「セーブルブラック」「コルトンホワイト」「ポストロードブラウン」の3色で販売した。

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ある資料によると、ラゲッジセットを含むキャデラック by グッチの価格は19,900ドル。グッチ仕様ではないモデルのおよそ1.5倍だった。
レンジローバー MCM(1986年または1987年):これほど1980年代らしさを詰め込んだクルマはない

Photo:Götz von Sternenfels / AUTO BILD
それは、もはや1980年代に始まった話ですらなかった。「ヴォーグ」という名前だけで、レンジローバーは伝統的で無骨なクルマの世界から抜け出し、世界で最もファッショナブルなショッピングストリートへと進出していた。そこへ1986年、あるいは1987年、ドイツ版ルイ・ヴィトンともいうべきミヒャエル クローマー ミュンヘン(MCM)が、レンジローバー ヴォーグに目を向けた。

Photo:Götz von Sternenfels / AUTO BILD

Photo:Götz von Sternenfels / AUTO BILD
ミヒャエル クローマーは、副変速機のシフトブーツから天井まで、MCMロゴ入りのレザーを室内全体に惜しみなく使った。このおしゃれなヴォーグのカスタマイズを手がけたのは、デュッセルドルフのアウト ベッカーだ。
さらに、当然のように専用のラゲッジセットも用意された。革張りのラゲッジカバー下のスペースを活用できるよう、特注されたものだ。
VW ゴルフ1 カブリオレ エティエンヌ アイグナー(1990年):レザーブランドなのに布張り

Photo:Hans-Joachim Mau / AUTO BILD
この特別仕様車には、少々矛盾したところがある。ミュンヘンにあるエティエンヌ アイグナーの会社は、主に革製品を作っている。ところが、VW ゴルフ1 カブリオレの特別仕様車「エティエンヌ アイグナー」の内装は布張り。正確にはジャカード織りの生地だ。革が使われているのは、シートのパイピング、ステアリングホイール、シフトまわり、室内のドアハンドルだけである。

Photo:VW
その理由は、この特別仕様のゴルフ カブリオレをデザインしたのがアイグナーではなく、VWの社内デザイナー、グンヒルト リリェクイストだったことにもあるのかもしれない。彼女には自由な裁量が与えられ、アイグナーが提供したのは、ほぼブランド名とエンブレムだけだった。もっとも、同社はVWのスタッフをミュンヘンへの「インスピレーション旅行」に招待してはいる。リリェクイストはこう語る。「発表までは一切口を出さず、最後に完成したものを承認してくれたのです」。
1.8リッターエンジンと98馬力を備えたアイグナー カブリオレは、一流のファッションブティックの前に気負いなく駐車するのにぴったりだった。35,890マルクでクルマを買った後に、まだ買い物をするお金が残っていれば、の話だが。
ブガッティ ヴェイロン16.4 Fbg par エルメス(2008年):パリのレザーをまとった1001馬力
シートを張り替える? シフトブーツを縫う? ブガッティと特別仕様車「ヴェイロン16.4 Fbg par エルメス」を企画するにあたり、エルメスはそれだけでは満足しなかった。ラジエーターグリルのメッシュまでもが、無数のHで構成されている。

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ヴェイロンの室内は、ほぼ全面が2色のカーフレザーで張り替えられた。裕福な顧客は、「エボニー/ヘンプ」と「エボニー/ブリックレッド」という色の組み合わせから選ぶことができた。

Photo:Bugatti/Hermès
「ブガッティ ヴェイロン16.4 Fbg par エルメス」の「Fbg」は誤植ではなく、フォーブルの略だ。エルメスの本社が、パリ8区のフォーブル サントノーレ通りにあることに由来する。

Photo:Bugatti/Hermès
エルメス仕様の価格は、100万ユーロ(約1億8,500万円)+付加価値税という、よく知られたヴェイロンのベース価格よりも少々高かった。当時の報道によれば、ブガッティ ヴェイロン16.4 Fbg par エルメスは155万ユーロ(約2億8,675万円)+税。両社が純粋に芸術的な関心だけで協業したわけではないことが、何となく察せられる。
この特別仕様車によって、両ブランドは昔の縁もよみがえらせた。1920年代、エットーレ ブガッティは、ブガッティ ロワイヤル用の特注スーツケースをエルメスに作らせていたのだ。
フィアット500 by グッチ(2011年):黒、白、そして緑・赤・緑
「一緒に誕生日を祝おう!」。フィアット500 by グッチの発想は、おそらくそんなところだったのだろう。何しろ2011年はイタリア統一150周年、そしてグッチ創業90周年にあたっていた。
AMC ホーネット グッチ スポーツアバウトや、グッチがデザインしたキャデラック セビルからは、ずいぶん時が流れていた。そこでフィレンツェのグッチは、再び自動車メーカーに接近することにした。相手は、北西へ400km離れたトリノのフィアットだ。

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グッチのクリエイティブディレクター、フリーダ ジャンニーニと、フィアット チェントロ スティーレが描いたのは、黒と白の夢だった。フィアット500、そして後に加わったフィアット500C、つまり折り畳み式ルーフを備えたカブリオレ セダンには、白か黒のボディカラーしか用意されなかった。室内も黒と白でまとめられ、シートにはポルトローナ フラウ製のレザーが使われた。

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グッチらしい例外が、おなじみの緑・赤・緑のストライプだ。このストライプは、シート、シフトノブ、フロアマット、シートベルト、イグニッションキーにもあしらわれていた。

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もちろん、フィアット500に合わせたコレクションも用意された。革製品、スポーツスーツ、ジャケット、ドライビンググローブ、サングラス、時計などだ。
目指すのは、ファンを喜ばせること。そして、その過程でしっかりと稼ぐこと。ここに挙げたどのケースでも、おそらく両方の目的が達成されたのだろう。
Text: Frank B. Meyer

