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走行距離237kmのほぼ新車 30年前のプジョー309GTi その衝撃のお値段は?

2021年4月28日

誕生から30年、オドメーターには237kmしかない、文字通り新車状態の希少なプジョー309GTiがこの度イギリスで販売され、購入された。その販売価格とは? すべての情報をお届け。

プジョーの「309」は、最近では本当にエキゾチックな存在となっている。
あなたが最後に「309」を見たのはいつだろうか?
街で見かけたとしても、それが1985年から1993年にかけて製造されたプジョーのミッドレンジモデルであることに気づかなかったか、あるいはずいぶん昔のことだろう。
なぜなら、「309」は絶対に目立たないクルマの部類に入るからだ。
しかし、この車は決して失敗作ではなく、むしろその逆だった。
全生産期間中、「プジョー309」は160万台以上も販売されたのである。
そして、1989年の夏からは、この保守的なモデルに、今や伝説となった「プジョー205GTi」の1.9リッター4気筒エンジンを搭載したスポーティな「309」の「GTi」モデルも発売された。

そんな「プジョー309GTi」が、今回、新品の状態で販売されたのだ。
そしてその価格は驚くべきものだった。
なんと、この赤い「プジョー309GTi」は、29,994英ポンド(約465万円)で、落札されたのだった。
この「309 GTi」がユニークなのは、事実上の新車であるという理由からだ。
30年経っても、アナログのオドメーターには、237kmしか表示されていない。
その背景とは?

309 GTiは25年間も保管されていた

ディーラーの「SMC Heritage」は、広告で詳しく説明しているが、この右ハンドルの「プジョー309 GTi」は、1991年2月27日に、地元のプジョーディーラー、「Charters of Aldershot」で、最初で唯一のオーナーに引き渡された。
購入者はその「GTi」を登録したが、1991年8月末までに登録を抹消し、その後、すぐに海外で仕事をすることになったため、ガレージにずっと保管していた。
それから25年後の2016年になって、130馬力のプジョーが眠りから覚めて、車の人生で初めての車検を受けた。
その時点で記録された走行距離: 200km。

30年経ってもプラスチックバンパーも赤い塗装も驚くことに色あせていない。

わずか930キロの乾燥重量

「309 GTi」の歴史を振り返ってみよう。
その歴史は決して楽なものではなかった。
生産当時、プジョーは「205GTi」を「309GTi」の約5倍販売しており、「405」の160馬力のエンジンを搭載して、さらにパワフルになった「309GTi 16V」でも、その販売台数を変えることはできなかった。
専門家の試算によれば、現在、市場には、「205GTi」が15台に対して、「309GTi」は1台という比率でしか見つからないという。
そのため、3ドアと5ドアの2種類がある「309」は、まさにエキゾチックな存在となっているのだ。
「205GTi」をはじめとする、プジョーのホットハッチがコレクターズアイテムとして注目されている中、「309GTi」はまだそれほど注目されていない。
かつてのオーナーは、「309 GTi」の走りの良さを、弟分の「205GTi」よりも評価している。
「309GTi」の車重は、「205GTi」よりも20kgほど多い930kgであるが、それでもわずか930kgである。
1.9リッター4気筒エンジンは、130馬力(1992年からは120馬力)を発揮し、全長4.05メートルの「309GTi」を8.0秒でスムーズに0から100km/hまで加速させた。

しかし、それだけでは販売台数を伸ばすことはできなかった。
最近では、良い309GTiを入手する機会はますます稀になってきている。
今はもう手に入らない「SMCヘリテージ」の「309GTi」は、同社によれば世界で最も走行距離の少ない「309GTi」だという。
そのため、このホットハッチが無事故・無塗装で、オリジナルのままの状態であることは言うまでもない。
最初のオーナーは、当時からこの「GTi」を長く乗ることはないだろうと認識していたらしく、保管中にバッテリーを外したり、さまざまな部品を保存したりして、損傷を防ぐための予防措置をとっていたという。
ちなみに、この「309GTi」は、今でも雨を知らないと言われている。

GTiのロゴが入ったマッドフラップのような小さなディテールは、現在、コレクターの間で高い人気を誇っている。

2016年には半分以下の価格で販売

29,994英ポンド(約465万円)の「309GTi」は、決してお買い得とはいえない。
しかし、これが一種のタイムカプセルであり、当のコレクターにとっては非常に興味深いものであることを忘れてはならない。
注目すべきは、「309GTi」が、昨年2019年2月に、1万6000ユーロ(約211万円)弱でオークションにかけられたことだ。
つまり、この2年間で2倍以上の価値になったということである。
「309GTi」の希少性のために、現在では価格の目安をまったく見つけられないほど難しくなっている。
現在、ドイツで販売されている「309GTi」は1台のみで、価格は8,200ユーロ(約108万円)と言われているが、こちらはすでに15万km走行している個体だ。

「プジョー309」と聞いて一番先に頭に浮かぶのは、「カーグラフィックTV」のキャスターを今も務める、松任谷正隆さんのことである。当時、「アルファスッド」からの乗り換えで、「ランチア デルタ(インテグラーレになる前のHF)」か、「309」か、とことん迷った挙句、「309GTi(3ドア)」をチョイスしたのだった。

その時はなんでこんな地味な方の、はっきり言って「デルタ」よりも、弟分の「205」よりもチャーミングでもなく、妙な感じのデザインのクルマを選んだのだろう、と思ったが、今となっては「309」をチョイスした意味がとてもよくわかる。
つまり、「205」よりも「デルタ」よりも、よりフランス的で、プジョー本来の持っている地味で丈夫で、実用的であるという目標に「309」は明確に到達しているのではないか。そして十分に運転することの楽しさや速さも兼ね備えている。さらに、「205」よりもちょっと大人で、少数でマイナー、というポジショニングもエンスージャストには刺さるポイントなのではないだろうか。
どの車も大きくなってしまった昨今、今では「309」は小さな自動車である。でもその小ささ、軽さ、そして飄々とした存在感はなんともプジョーらしい。500万円という価格はちょっと驚くが、どうしても「309」の新車をもう一度欲しいという人が世の中にいるのであれば、これはきっと最初で最後の一台であることも確かである。

Text: Jan Goetze
加筆: 大林晃平
Photo: ebay/spectrummotorcentreltd