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街角のディーバ(歌姫)たち ほぼ普段使いには適していないクラシックモデル×26台 日本からも1台

2021年4月27日

日常性に乏しいクラシックカー。それは日常的な怠け者だ。彼らは休日に遊ぶことしかできない。多くの魅力的なクラシック作品は、日常生活においては、まったくの役立たず、であることがわかる。したがって、これらのクラシックとヤングタイマーは、とても日常のディーバ(歌姫)とはなり得ない。

時の流れは、古い車の見方を簡単に変えてしまう。
多くのクラシックカーは、何の気なしにドリームカーに分類される。
結局のところ、購入を決断するのはいつも意志と心なのだ。
そして、「欲しい」という気持ちが勝って、未来のオーナーが意気揚々と銀行に行き、ここで紹介する車がコレクターの目の前に置かれることも少なくない。
しかし、その前に、新しい旧車の特徴を明確にしておく必要がある。
実際にそれらのヒストリックカーを手にしてから後悔しても遅いのである。

日常性テストの敗者
多くのクルマは、日常的に使うことで初めてその真の歌姫ぶりを発揮する。
見た目が良く、価格予測も良く、スペアパーツも十分に揃っていて、おそらくレースにも適しているかもしれない。
しかし、我々は、編集部の厳しいテスト基準によって、クラシックカーの日常的な使用における楽しさを損なう欠陥を明らかにする。
世の中の多くの人がお気に入りのクルマと日常生活も共存することを望んでいるものの、必ずと言っていいほど、ある時点で終わりが来る。
なぜそのような誤解が生まれてしまうのだろうか?

今回は、我々が、「日常的な使い勝手」というカテゴリーにおいて、星の数が1つか2つしか得られなかった車を紹介する。
普段、路上でめったに目にすることのないこれらのクラシックカー。
伝説のモデルも、憧れのモデルも、懐かしのモデルも、そして超珍しいモデルもあるが、実はこれら31台のクルマは、ほとんど普段使いには適していないクルマなのだ。(笑)
利便性? 協調性? 高効率? 好循環? エコフレンドリー? そんなものはないけれども、誰にも負けないと思っている個性だけはある。(笑)
日常生活ではあまり実用的ではない、遊ぶことしかできないクラシックカーが以下に登場する。
フォトギャラリーとともにご紹介しよう。
エンジョイ。

【ジープCJ-7】

ジープCJ-7は、「日常的な使い勝手」というカテゴリーにおいて、5つ星のうち1つだけという低評価を得た。デコボコしたサスペンション、スポンジーなステアリング、怪しげなコーナリング特性が弱点だ。また、6気筒と8気筒のエンジンは、リッターあたり5~7kmという燃費の悪さだ。
大林晃平: 「ジープCJ-7」が日常生活に欠けているという評価にはちょっとびっくり。燃費が悪いだとか、コーナリングが弱いのは当たり前のハナシ。基本は丈夫だからあっけらかんと、そういうものだと割り切って乗れば日常生活にも適応できると思う。ただし幌の脱着だけはえらく面倒くさいので、開けるか閉めるかのどっちかに決めちゃうべき。
サンタモニカやマリブなどでは、女の子たちが仲良く乗ってビーチに、買い物にと使っている光景を良く見かけるようなクルマなのだから、臆せずにどんどん気軽に使いましょう。意外と運転しやすいです。

【プジョー206ターボ16】

「プジョー205ターボ16」は、日常的に使用するために作られたものではなく、日常的な実用性については、星1つしかない。
マイナス面としては、購入、メンテナンス、スペアパーツにかかる費用が非常に高いことと、構造が複雑であることが挙げられる。この楽しさを手に入れるには、節約して買うだけでは到底足らない。
しかし、200馬力と全輪駆動は、小さな「プジョー205」に空を飛ぶことを教えてくれた。
大林晃平: 普通の「205」は「Gti」も含めて毎日の生活の中で気持ちよく使える2ボックスだった。40年間。「205」からプジョーは新しい時代に突入したといえよう。だが、「205ターボ16」となると話は別。こいつは日常に使えないでしょう、無理です無理、ラリーカーなんだから。エアコンもないし、もちろんオーバーヒートの危険もあるし、日々の走行は無理ってもんです。でもイベントに乗っていけば大スター間違いなし。そういうクルマだ。

【フェラーリF40】

当然だが、「フェラーリF40」もまったく日常的なクルマではない。また、「日常生活に適している」という点でも、5つの星のうち1つしか得られていない。
メンテナンスにはお金がかかることと、スペアパーツの少なさが大きなマイナスポイントとなっている。
大林晃平: この21世紀に「F40」を日常に使おうという豪胆な猛者が世の中にいるかどうかはわからないが、デビューした当時は、海外でも日本でも(式場壮吉さんとか)、結構「F40」を日常使いしていた人がいたと記憶している。でももはや「F40」はコレクターズアイテムとして大切にいたわって補完すべき一台。そもそもターボの効きが強烈なので、雨の日は特に乗ると危険だし、エンジンルームはビショビショだ(吹きっさらしだから)。
それでもどうしても日常に乗るというのなら反対はしない。なぜって? 格好いいじゃないですか、そういうやせ我慢こそエンスーだ。

【ブガッティ ロワイヤル タイプ41】

アダムとイヴ以来、これほどアイコニック(象徴的)な車はないだろう。「ブガッティ ロワイヤル タイプ41」は、自動車という広大なビオトープ(生態環境)の中で究極の存在である。
しかし、それは日常的な使用には何の役にも立たない。「日常適性」は当然1つ星である。
ランニングコストは高く、100km走行で50リットルを消費するという(リッターあたり2km)。少なくとも190リットルの燃料タンクを備え持っているが・・・。頑丈なエンジンには、14リットルのオイルと48リットルの水も蓄えられている。
大林晃平: 21世紀に「ブガッティ ロワイヤル」を日常に使える人って…。国の半分が自分の領地だったり、007のスペクターの親玉だったりする人でしょうか。そもそもエンジンかけるのも一大イベントだし、駐車場だってどこにも入らないだろう(パーティー会場かホテルの車寄せくらいかと…)。リッター2キロは意外と走るじゃん、とつぶやいちゃうような、望外な数値かもしれない。昔のダブルシックスだって、都内じゃそんなもんだったのだから(苦笑)。
いずれにしろ日常に「ブガッティ」、っていうのはあり得ないし、そんなこと考えること自体が「ブガッティ」に失礼だ。

【シェルビー コブラ427】

「シェルビー コブラ427」も、「日常的な実用性」は1つ星を獲得しただけだ。
「しかし、このような獣を購入する人は、まず運転を覚えるところから始めなければならならない。基本的には、「427」は、純粋なレースカーなのです」と、コブラ専門家のマーティン ドレンゲンバーグは言う。
大林晃平: ものすごく強靭な腕っぷしと、クラッチを踏み抜ける左足の筋肉があれば、意外とコブラは日常でもなんとかなるかもしれない。少なくとも(映画「フォードvsフェラーリ」を観てもわかるように)、以前は「コブラ」を日常に使うような豪胆なオトコがアメリカにはいたはずだし、日本でこの車を、今も結構日常生活で乗っている人を知っている。もちろんエアコンもなければABSさえついていないが、その成り立ちを考えれば基本は丈夫なクルマと言えるし、なにせ大トルクだから、坂道発進も楽かもしれない。
ただし雨はダメ。それから首都高速の渋滞ではおそらくオーバーヒートするとは思う。

【ホルヒ930Vカブリオレ】

ホルヒの「930Vカブリオレ」は、運転すると疲れるし、遅いし、ディーゼル機関車のようにブレーキが効くし、同様に機敏に動く。
メンテナンス、特にエンジンのメンテナンスには、ホルヒ社でしか培われていない専門的な知識が必要だ。そのため、「日常的な使い勝手の良さ」では1つ星にとどまっている。
大林晃平: 現車を見たことも、もっと言えばその名前も頭の片隅にもなかった者としては、ホルヒを取り上げて実用うんぬんかんぬん言われてもとにかく返答に困る。どういうクルマかの解説もちゃんとはできないが、アウディの基となった、フォーリングスのうちの一つの輪っかが、ホルヒだ。以上、それ以外は「930V」のことはわからない。

【ポルシェ911カレラRSR2.8】

「ポルシェ911カレラRSR 2.8」、日常的な実用性:1つ星。
純粋な「RSR」はレーストラックでしか使えないため、冷静に考えると日常的な実用性には大きな制限がある。
そしてもちろん、このような「レーシング911」は非常に希少で、非常に高価でもある。6桁台の高額で、しかもさらに高額になりがちなのが現状だ。
大林晃平: 今も「普通の」73カレラを毎日の足として乗っている方を知っているが、「カレラRSR」となったら、こりゃ日常にはつらいだろう、ということは形やタイアをみれば自明の理。おそらく普通のモデルとは使い勝手はまるで別物だろう。さらに今や億円価格が当たり前なので盗まれないように、出かけたらガレージに帰るまで降りちゃいけないような責務にかられる。あくまでもイベントかサーキットで乗ってやってほしい。紀伊国屋とかナショナル麻布に行っても、バレットパーキングの担当者がイヤな顔するだけだ。

【オースチン セヴン オパール】

巡航速度が60~70km/hの「オースチン セヴン オパール」は、ロケットのようなものではなく、ケーブルブレーキを採用していることから、安全性を考慮して運転する必要がある車である。日常生活に適しているかというと、星はひとつしか得られない。
大林晃平: 「オースチン セヴン」、やっぱりそれは釣り師にとっての、フナ釣りみたいなもので、最後はここに戻る、というような永遠の一台なのだろう。大きさも小さいし、昔は(もっと言えば、大昔は)これが実用車として成り立っていたわけだが、今となっては周りの自動車が凶暴かつ高性能になりすぎた。日常生活するにはあまりにけなげで、かわいそうだ。特にブレーキ性能は今のクルマと比較するとあまりにも脆弱なので、混走は危険という領域。ちょっとしたコーナリングも限界になりかねない。とにかくいたわってのんびり、いとおしみつつ乗る、そういう解脱した世界にこの車はいる。

【オペル スピードスター ターボ】

「オペル スピードスター ターボ」は、馬力は大きいが、それ以上でもそれ以下でもない、おもちゃである。
フロントに稲妻が描かれたポルシェハンターは、トランクがその名にふさわしくないため、週末の旅行にも適していない。また、オペルはボンネットを上げると、乗り降りがアクロバティックな行為になってしまう。その結果、「日常生活での使用に適している」という点では、これまた1つ星だ。
大林晃平: オペル スピードスターなら、まだまだ毎日使えるだろう?? 何しろ最近の自動車だし、オペルだ。実際問題、荷物だ、なんだとか、乗り降りの困難さといった問題は、この手のクルマを買う人には想定内のことだろうし、乗って使う分にはなんら問題ないはずだ。ただし、もはや中古車で見つけることのほうが難問かと。

【ロイドLT600】

「ロイドLT600」には、「日常的な使い勝手」という点ではかろうじて2つの星が与えられる。
13馬力の2ストロークなので、たまにクラシックカーショーに出る程度の用途しかない。19馬力のバージョンでさえ、今日の基準では走行音が大きく、神経質になるほど遅いのだ。
大林晃平: この車が2つ星、というのには反対したい。1つ星でしょう、1つ星ですよ。だって13馬力だもん。なにせ65年も前のクルマだもん。そもそも売ってないもん。このサイトを読んでいるあなた、そもそも、「ロイドLT600」、生まれてから見たことありますか? この車のロードインプレッション、自動車雑誌で読んだことありますか?? というか、そもそも「ロイド」って、知ってましたか?(笑)

【マセラティ クアトロポルテ I】

「マセラティ クアトロポルテI」は、すぐに錆びる傾向がある。Aピラー、Bピラー、ホイールアーチ、リアの2つのガソリンタンクの下のシートメタル、ドアの下端など、ボディのすべての折り目が腐食する。
7つ(!)の個室からなるシルは、購入前に内視鏡で検査する必要がある。評価では、「日常的な使い勝手」は星が2つしかない。
大林晃平: うひゃあ、昔の「クアトロポルテ」、2つ星、もらっちゃってるヨォ。今まで「クアトロポルテ」と名前がついた車で、実用に何とかなるかと思えるのは、現行の「クアトロポルテ」と、もう一つ前までのモデルだけで、他はもう実用性という言葉が世の中でこれほど似合わない車はない、というレベルの自動車だと思っている。4ドアセダンだから実用に使えそうだが、それはあくまでもそういう格好をしているからそう思うだけで、マセラティですよマセラティ。甘く見ちゃいけません。
格好は素晴らしく、エレガントで、でも怪しい魅力。しかしだからこそ実用性とか信頼性という言葉が一番似合わないのも、クアトロポルテというクルマだ。悪魔に魅入られたような妖しい4ドアセダン。その頂点がクアトロポルテだ。

【ベントレー3リッター スピード】

「ベントレー3リッター スピード」も2つしか星は得られず、「日常生活に適している」という概念にはまったく相応しくない。
「世界最速のトラック」というエットーレ ブガッティの軽蔑的な言葉は、あながち的外れではない。
戦前の「ベントレー」を運転するにはエネルギーが必要だし、練習も必要だ。ステアリングとブレーキには全身全霊が必要だし、(シンクロナイズされていない)トランスミッションが変速時にギシギシと音を立てなくなるまでには何ヶ月もかかる。
大林晃平: この時代のベントレーを実用に使っていた人というと、僕の知る限り白洲次郎が最初に頭に浮かぶ。昔の英国紳士(貴族とか、豪族とか)か、白洲さんみたいな方でなければベントレーを実用にしようなどとは思う由もない。ましてや登場から100年も経った自動車に、実用性なんてものを求めたら、それは失礼千万で懲罰刑にあたる。そもそも、走っている姿を拝めただけでもありがたい、そういう存在なのだから。

【フォード エスコートRS 1600】

「フォード・エスコートRS 1600」は、日常生活での使用に適しているかどうかのランキングでは、2つ星と評価されている。
欠点は、約6万ユーロ(約790万円)という多額のエントリープライスであり、それは一般の人にとっては、ありふれた小型車としては価値がないと思われる車であることだ。
高度なテクノロジーを搭載したレーサーは、多くの注意を必要とする。5,000kmごとにバルブを調整しなければならないが、これは軽々しくできることではない。
大林晃平: この手の自動車、一見実用になんとかなると思っちゃうでしょう? 私も思っちゃう。手ごろなサイズだし、元は実用車なんだから、何とかなるだろう、って。でもこの「RS1600」みたいなのだと、エンジン調整が何とも大変だし、出力特性がピーキーできっと街中だと、えらく使いにくいセッティングだと思われる。さらにプラグがかぶったら、その日はもうオシマイと割り切るか、路上でプラグ交換しないといけない。

【ジャガーEタイプ3.8リッターOTS】

多くの人の夢の車「ジャガーEタイプ」。1964年9月まで生産されていた「ジャガーEタイプ3.8リッターOTS」のモス製トランスミッションはシフトチェンジが難しく、4.2リッターで導入されたジャガー独自のフルシンクロ4速ボックスで初めて改善された。
初期のフラットフロアタイプでは、身長1.80メートル以上のドライバーはまともに座ることができず、乗り降りには後のEタイプ以上の機敏さが要求される。
そのため、日常的な使い勝手評価は2つ星となっている。
大林晃平: 映画「お洒落泥棒」でオードリーヘップバーンが、ドアも開けずにぴょこん、とシートに飛び乗ったのがなんとも可愛かったシーンだった。「Eタイプ」、そもそもの信頼性についてはオーバーヒートとかオイル漏れはあると思うが、ちゃんと動く個体なら実用に結構なりそうな気がする。トルクもあるし、おそらく運転そのものは楽な部類に(今回の記事の、ですよ)入ると思う。でも映画みたいに、小粋で洒落たシーンを再現するには、肝心のチャーミングな女性がどこにも見当たらないが・・・。

【フェラーリ テスタロッサ】

「フェラーリ テスタロッサ」には、「日常的な使い勝手」という点では、2つ星だ。
典型的な弱点がある。K-、KE-ジェトロニックのフローデバイダー、ノズル、アキュムレータ、ポンプ、デフ、サスペンションブッシュ、ホイールベアリング、ドライブブーツの破裂、などなど。また、ブレーキの効きが悪かったり、ウィンドウレギュレーターの調子が悪かったり、ヒューズボックスの接点が焼けていたり、シートフレームが壊れていたりすることもある。
大林晃平: 「フェラーリ テスタロッサ」が実用だったころ、というのは、バブルの頃の話で、きっと六本木や青山かいわいでは、立派に実用車として夜な夜な大活躍していたんだろうなぁ、と思われる。その頃からトラブルはもちろん多く、信頼性っていう面ではフェラーリだからそれなりだが、実用に使えないわけではなかったと思う。でも今となっては上記のようにトラブルの巣窟。あっちを直しこっちを直しているうちに日が暮れてしまう状況だ(たぶん)。

【アウトビアンキ ビアンキナ カブリオ】

「アウトビアンキ ビアンキナ カブリオ」は、日常的な使用においては、最小限のスペースしか提供していない。そのため、「日常的な使い勝手」の点では、5つ星のうち2つという評価だ。
大林晃平: 「アウトビアンキ」、日本でも流行ったなぁ、という「アウトビアンキ」は「A112」のことで、これはそのご先祖のカブリオレ。そういうクルマに、はなっから実用性など求めてはいけない。サンレモとかポルトフィーノあたりの海岸で、夏の間だけさらっとスーパーマーケットに買い物に行くことを実用、というのなら、それはそれで星2つだが…。

【フェラーリ モンディアル カブリオ】

「フェラーリ モンディアル カブリオ」も、日常的な利便性のカテゴリーでは2つ星にとどまっている。
サービスや修理には高額なフェラーリ価格がかかる。そこで、昔から言われていることだが、購入価格の3分の1を修理用に確保しておくことをお勧めする。
大林晃平: 「モンディアル」を新車で買って数年乗っていた方が、かつて「一度も壊れなった、本当ですよ」と語っていたのを聞いて、そりゃ思い切り、当たりの一台だったんだろうな、と思った。まあ巷で言うほど壊れないというのは事実かもしれないが、もはやネオクラシックとなった今となっては、かなりの覚悟は必要だ。ましてやカブリオレは雨が漏れる、幌が開かない、閉まらない、幌が劣化するというお定まりな問題から逃れることはできない。それでも、もし欲しいのなら後期の「モンディアルt」がおすすめだ。
運がものすごく良ければ、そこそこ実用になるかもしれない。でも整備費用は常に余分に用意しておこう。パーツも高騰して驚くような価格なので。

【マツダ コスモ スポーツ】

この日本からのエキゾチックレーサー、「マツダ コスモ スポーツ」は、日常生活での適合性においてはあまり良い結果は得られず、「日常的な使い勝手」は2つ星だ。
燃料はリッターあたり7.1kmと大量に消費する。それでもこの車の価値を考えると微々たるものだ。また、オイルの消費量が多いのは、ヴァンケルエンジン(ロータリーエンジン)の問題として知られている。また、この車は当然ながら右ハンドル仕様しかない。
大林晃平: 広島のアイドルともいえるコスモスポーツ。まだまだイベントで見かける定番車だが、話を聞くと各種パーツの確保から始まり、やはりその維持はかなり難しそうだ。もっともこういうクルマの場合、そういう維持の知恵や作業そのものが、大人の社交場として友人ができる場所でもあるので、一概に悪いことだとは言えないだろう。でも実用? そんなことあり得ないだろう。3ローターの「コスモ」だって、「コスモL」だって、もはや実用ではなく、各種イベントに参加するための参加証だ。

【ベントレー コンチネンタルT】

「ベントレー コンチネンタルT」の「日常的な使い勝手」も2つ星だ。
部品代は高額だし、近所のメカニックは適切なツールを持っていない。ターボV8は、リッターあたり4kmという燃費を誇るが、実際にはもっと消費すると言われている。特にそのゆったりとした出力が理由だ。
もし、オイル漏れを封じなければならないとしたら、その請求額は恐ろしいものになるだろう。また、ブレーキシステムの修理にも時間と費用がかかる。
大林晃平: この頃までのベントレーとロールスロイスは、車検で100万円単位の費用がかかるという。実際それは都市伝説でもなんでもなく、本当のことなのだろう。なにせパーツが目の玉が飛び出るほど高く、そのパーツ自体の信頼性もイマイチだったりするのだからなんとも厳しい。それらを修理し、ちゃんと走った場合、燃費さえ別にすればそこそこ実用にはなるかと思うが、あとは周囲の目に打ち勝つ精神の問題になるだろう。ちなみにトランクルームは思い切り広いので、アウトレットやコストコに買い物に行って、山ほど買っても大丈夫だ。(笑)

【ジャガーXK120S】

「ジャガーXK120 Sフィックスドヘッドクーペ」も、「日常生活での適合性」という点で2つの星を獲得している。
賢明なアドバイス: もしあなたの身長が185cm以上で、体格指数が30以上であれば、他のクルマを探すことをお勧めする。「XK120」は、スーツのようにあなたにフィットし、狭い室内と適度な全方位の視界は、最大のマイナスポイントとして挙げられる。
大林晃平: 「Eタイプ」ならギリギリ実用になるかな、と思った私ですら、さすがに「XK120S」ともなると、どう考えてもこりゃ実用にはならないだろうな、とも思うし、もっと言えば実用に使うべきじゃないと思ってしまう。このクルマが似合うのはペブルビーチやコモ湖であって、イケアやニトリの駐車場に止まっている図はあまりに不憫で気の毒な光景だ。日常に使える、使えない、じゃなくて、使っちゃいけない類のクルマだ。

【ロータス エスプリS2】

エンジンルームの熱害、エンジンからのオイル漏れ、エキゾーストマニホールドのクラック、ドライブジョイントの摩耗など、「ロータス エスプリS2」には、いたるところに問題がある。「エスプリ」ファンの間では、長い年月をかけてこれらの問題を解決してきたが、安価でありながらあまり愛されていない個体は、すぐに底なし沼になってしまう。
「日常的な使い勝手」という点では星2つ。
大林晃平: ロジャームーアの演じたジェームスボンド「私を愛したスパイ」に出てきたのは初期の「エスプリ」だし、「ユアアイズオンリー」に登場したのはターボだから、このS2は残念ながら007ムービーには出演していないが、はたから見りゃ立派なボンドカー(そもそもそんなこと誰も知らないってば)。まあどの「エスプリ」も実用車には、ならないだろう。そもそも車高が低くて乗り降りがえらく難儀だし、荷物を荷室に積んだら茹って、ゆでだこ状態。電装系などの信頼性は著しく低いはずなので、思い切って今の部品に全とっかえする方がかえって楽かもしれない。あとボディはFRP(個体差がものすごく激しく、一台として同じスペックのボディはないらしい)なので、ぶつけて欠けてしまった場合には、ボンドで貼ろう(って駄洒落か)。

【ランチア ストラトス】

1970年代半ばの世界ラリー選手権で、ランチアは先鋭的な美学と技術で相手を驚かせた。
今日、「ランチア ストラトス」は高価な宝である。
しかし、日常生活においては、ストラトスは何の役にも立たない。
「日常生活に不適正なスター」なのだ。
大林晃平: 「ランチア ストラトス」を実用に使うだとぉ? 日常生活には何の役にも立たないだとぉ? ラリー関係者やマルチェロ ガンディーニが聞いたら憤慨しそうな話だが、そりゃあ日常生活に使ったら不便という文字しかないだろう。ラリーに勝つためにランチアが作った、あくまでもラリーのための車なんだから、当たり前のハナシだ。でも実際に乗った人から聞いた話だが、運転そのものはとってもしやすく、特にボディサイズの把握がとっても楽とのこと。さらにドアポケットが巨大で、外したヘルメットを置いておけるので、案外思い切って実用に供してみたら、いい感じのクルマなのかもしれないが…(無責任すぎるかな?)。

【ロータス エリーゼ】

「ロータス エリーゼ」は、日常的な使用に適しているというカテゴリーで2つ星を獲得している。
ダンパー、コントロールアームラバー、ユニバーサルジョイント、すべてのブッシュ類など、シャシーはメンテナンスがずさんになりやすい。
大林晃平: 「ロータス エリーゼ」を愛用している人が僕の周囲には3人(も)いる。その誰もが気に入っていて、そのうち2人は10年以上溺愛状態だ。ロータスらしいサイズと車重、そしてシンプルでダイレクトな乗車感。もちろんその3人とも他にも車を所有しているが、日常でも使うことが結構あるという。荷物の問題さえクリアできれば乗り心地そのものも、扱い勝手もなかなか良いらしい。エンジンももはや昔のような気難しいところなどないはずだし、車高もこの手のクルマにしてはかなりあるので、思い切って毎日乗ってみたらいかがだろう?
いよいよエリーゼも生産中止が発表された今、大切に、でもいっぱい普段にも乗ってあげることこそが車のためでもある。

【ポルシェ911カレラ3.2スピードスター】

「ポルシェ911カレラ3.2スピードスター」は、適切に手入れされてさえいれば、クラシックな空冷「911」の中で、最も堅固で耐久性のあるモデルとして評価されている。
しかし、シートメタルは完全に亜鉛メッキされているが、この911も不滅ではない。
亜鉛メッキが剥がれてしまうと、他の車と同じように錆びてしまい、エンジンは経年劣化によりオイル漏れやオイル消費が多くなり、エンジン部品は弱くなり、インテリアは非常に汚くなってしまう。
「日常的な使用に適しているか?」というカテゴリーでは、この「911」には2つの星しか与えられていない。
大林晃平: 「911」そのものは、毎日使えるスポーツカーであり、ビジネスマンズエクスプレスとしても使える万能車である。だがスピードスターともなると話は別だ。簡素な幌が、屋根付きガレージを要求、対候性を期待してはいけないということを自然と物語るし、そもそもスピードスターを持っている人ならば、普通の「911」か、実用車を同時所有しているだろうから、実用にはそっちを使えばいいだけのことである。とはいっても、雨の心配を除けば、「911カレラ」なのだから、それほど気難しいこともなく、実用度は高そうな気もする。

【ジャガーXJ-SC】

「ジャガーXJ-SC」の実用性は低く、コストばかりが高くなっていっている。その回転半径は空母のそれに似ており、「スペースエコノミー」という言葉は外国語である。その大きさにもかかわらず、室内は狭く、1.90メートル以上の人はリラックスして座ることができない。
結局、「日常生活への適合性」の星は2つしか得られない。
大林晃平: このころのジャガーは年式や、それぞれの個体差によって信頼性が大幅に異なるため、一概にいうことはできないが、実用とそうじゃないのとの、ぎりぎりの境界線上だといえる。特にクーペではないSCとなると、まず心配なのは幌の劣化や、そのシステムそのもの(骨とか、もろもろ)の耐久性。ちゃんと開閉できたとしても、常に予備パーツは揃えておきたい。またクーペもSCも、燃費という文字は頭から消し去って乗ることが大切である。また電装系などもいたわってあげる必要ありだが、そう考え始めるとこの時代のジャガーはキリがないので、ちょっとおおらかな気持ちでお付き合いしてあげてほしい。

【ランチア ベータ モンテカルロ スパイダー】

「ランチア ベータ モンテカルロ スパイダー」は、実際よりも速く見える。
メカニカルな面はともかく、スペアパーツの状況は壊滅的で、製造品質よりも悪い。「モンテカルロ」はどこまでも錆びていき、使用中の保存は難しいか不可能であり、いずれにしても手間と時間がかかり、コストも高い。というわけで、「日常的な使い勝手の良さ」では2つ星だ。
大林晃平: 「ベータ モンテカルロ」はサイズ的にも整っており、一見実用になりそうだし、実際スペースユーティリティの面でもそれほど困ったことにはならないだろう、という気にはなる。だがこのころのランチア(というか、このころのイタリア&フランス車)は、もはやパーツを探すことそのものが大冒険になったり、直したり、維持すること自体がひとつの難しいパズル状態だ。だが、前にも書いたように、そういう泥沼こそがひとつの社交場となり、多くの友人との人間関係の出会いの場になることも事実だ。そしてこういった、一見マイナーな自動車に乗る方が、より深く、濃密な世界を満喫できるともいえる。

Text: Matthias Brügge
加筆: 大林晃平
Photo: autobild.de