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中国向けに開発された忘れられたファミリーポルシェ「ポルシェC88」はブランドイメージとはまるで結びつかないポルシェだった

2026年10月22日


スポーツカーの遺伝子を持たないポルシェ? C88は、中国向けの手頃なファミリーカーとなるはずだった。しかし、この異色のプロジェクトは量産に至る前に頓挫した。

ポルシェと聞けば、ほとんどの人は真っ先に「911」や「718」、あるいはツッフェンハウゼンが生んだ数々の名スポーツカーを思い浮かべるだろう。しかし1990年代半ば、同社は従来のポルシェのイメージとはほとんど共通点のないクルマを開発していた。「ポルシェC88」だ。中国市場向けの手頃なファミリーカーとして構想されたものの、量産されることはなかった。

ひと目ではポルシェとわからない

「C88」の設計は1994年にさかのぼる。発端となったのは、手頃な価格のファミリーカーのコンセプトを開発するため、中国政府が海外の自動車メーカーを対象に実施した公募だった。

どうやらポルシェは、ここで得意分野から大きく踏み出したようだ。C88の姿は、シュトゥットガルト生まれのクルマというより、1990年代のごく一般的なコンパクトセダンに近い。ワイドなフェンダー、スポーティなプロポーション、特徴的なフロントマスクといった、ポルシェらしい要素は一切盛り込まれていなかった。

C88のインテリアも、ポルシェから連想するものとはかけ離れている。

とりわけ異例なのは、ポルシェのクレストさえ付いていなかったことだ。代わりにC88には、独自の三角形のロゴが与えられた。その意味も中国市場に合わせたものだった。3つの頂点は父、母、子どもを表し、当時の中国の一人っ子政策を反映していたのである。

車名も意図的に選ばれていた。「C」は中国を意味し、「88」は現地で縁起の良い数字とされている。

スポーツカーどころか、走りはいたってのんびり

走りに目を向けると、従来のポルシェとの違いはさらに鮮明になる。パワフルな6気筒水平対向エンジンに代わって選ばれたのは、小さな1.1リッター水平対向4気筒だった。計画されていた仕様に応じて、最高出力は48〜68馬力。トランスミッションには5速MTを採用し、当時の計画では最高速度は約160km/hとされていた。

ポルシェといえば通常、優れた運動性能やパフォーマンスで知られる。しかし、「C88」が目指したのはまったく異なるものだった。優先されたのは経済性、頑丈さ、そして維持費の安さである。車両コンセプトには、組み込み式のチャイルドシートまで含まれていた。若い家族のニーズに、できる限りきめ細かく応えようとしていたのだ。

中国向けに開発されたこの試作車は、ポルシェミュージアムで見ることができる。

開発のスピードも異例だった。1994年の北京モーターショーでの発表に間に合わせるため、わずか4カ月で設計全体がまとめられたのである。

まさに唯一無二の1台

しかし、このクルマが量産されることはなかった。中国側のプロジェクト全体が最終的に中止され、「C88」の未来も閉ざされてしまったのだ。

残されたのは1台の試作車だけで、現在はシュトゥットガルトのポルシェミュージアムに展示されている。熱心なブランドファンでさえ、その姿を見たことがないかもしれないポルシェ。そして、ツッフェンハウゼンのブランドが受け継いできたDNAから、これほど遠く離れたポルシェもないだろう。

Text:Nele Klein
Photo:Porsche