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【なるほどメルセデス・ベンツ】メルセデス・ベンツの“疲れないシート”

2026年11月3日

「メルセデス・ベンツは、ロングドライブをしても疲れにくい」。筆者は現役時代、オーナーからよく聞いた言葉である。その理由のひとつが、メルセデス・ベンツ独自のシート設計にある。

シートもメルセデス・ベンツは人間工学(エルゴノミクス)に限らず、生理学、心理学を取り入れ、人間を中心に安全設計している。MBメディア。

シート設計;「適度な硬さ」と「正しい着座姿勢」を重視

昔からメルセデス・ベンツのエンジニアは、シート設計において「適度な硬さ」と「正しい着座姿勢」を重視してきた。人間工学(エルゴノミクス)だけでなく、生理学や心理学まで取り入れ、人間を中心に考えた設計思想である。つまり、室内空間を設計する重要なポイントは人間を最優先。

確かに、メルセデス・ベンツのシートは一般的なシートに比べると硬めだ。しかし、それは決して「硬すぎる」のではなく、身体をしっかり支えるための「適度な硬さ」なのである。逆に、柔らかすぎるシートでは身体が沈み込み、姿勢が安定しにくい。すると、身体は自律神経が働き、無意識のうちに姿勢を修正しようとする。その小さな動作が長時間続けば、疲労につながる。

解剖学的にドライバーの背中をシートに密着させ、「正しい姿勢」で座る事を最重要視している。かつてはメルセデス・ベンツのシートは各層の材質が重なり合っても目詰まりを起こさない構造を採用したが今では環境の問題からウレタンスポンジでシートが構成されている。
Photo:妻谷コレクション

メルセデス・ベンツのシートは、適度な硬さによって身体を安定させ、自然な着座姿勢を保ちやすくする。しかも、身体を締め付けるのではなく、シート形状に身体を預けることで高いホールド性を発揮する。ロングドライブで疲れを感じたら、一度、シートに深く座り直してみるといい。つまり、シートの形状に身体を自然に預けてみる。すると、クルマの動きに合わせて身体がわずかに動き、長時間でも無理のない姿勢を保ちやすいことに気づくはずだ。シート自体が適度な硬さなので車の動きに合わせて少しずつ身体が自然移動し、「血液の循環」も良くなりロングドライブでも疲れなく安全だ。これこそが、メルセデス・ベンツが考える「疲れにくいシート」の秘密なのである。

「呼吸する」シート

もうひとつ、興味深いのがシート内部の構造だ。乗馬をされる方は周知の通りだと思う。手綱をぎゅっと握り締めて走っていると手に汗をかく。馬の「たてがみ」で手をさっと拭くと汗がよく取れる。かつてメルセデス・ベンツのシートには、スプリングやパッドの間に馬毛や豚毛などの動物毛が使われていた。その後、ヤシの実の繊維などへと変化し、現在では環境問題でウレタンスポンジが主流となっている。

新型CLAのカットモデル。

しかし、素材が変わっても基本的な考え方は同じだ。本来、メルセデス・ベンツはシート内部の各層が目詰まりせず、空気が循環しやすい構造になっている。さらに一部のC/E/Sクラスでは、シートベンチレーターを装備し、ファンによってシート内部の湿気を除去する機構も採用されている(装備はモデルにより異なる)。つまり、メルセデス・ベンツのシートは、身体を支えるだけではない。汗や湿気を逃がし、快適な状態を保つことまで考えられている。

昔からメルセデス・ベンツのエンジニアは、シート設計において「適度な硬さ」と「正しい着座姿勢」を重視してきた。
Photo:Mercedes-Benz Media

「シートが呼吸する」。そんな表現が、メルセデス・ベンツのシートにはよく似合う。長距離を走っても疲れにくく、降りたときにフレッシュな気分でいられる。長年にわたるメルセデス・ベンツの「人間を中心に考えるシート造り」がある。

Text:妻谷裕二

【筆者の紹介】
妻谷裕二(Hiroji Tsumatani)
1949年生まれ。幼少の頃から車に興味を持ち、1972年ヤナセに入社以来、40年間に亘り販売促進・営業管理・教育訓練に従事。特に輸入販売促進企画やセールスの経験を生かし、日本語版カタログや販売教育資料等を制作。また、 メルセデス・ベンツよもやま話全88話の執筆と安全性の独自講演会も実施。趣味は クラシックカーとプラモデル。現在は大阪日独協会会員。