1. ホーム
  2. 未分類
  3. 【ショートストーリー】2005年、最速に挑んだマイバッハの2ドアクーペ「エクセレロ」

【ショートストーリー】2005年、最速に挑んだマイバッハの2ドアクーペ「エクセレロ」

2026年10月14日

今回は88年の歴史が結んだフルダとマイバッハの物語を紹介する。

クルマとタイヤは切っても切れない関係にある。自動車メーカーとタイヤメーカーは、互いの技術を磨き、最高の性能を追求するうえで欠かせないパートナーだ。そして、マイバッハ(Maybach)とフルダ(Fulda)との間にも時代を超えた興味深い物語がある。

67年の時を経た再コラボ-今度も造ったのは最速クーペ

2005年5月18日、マイバッハは特別な2ドアクーペ「エクセレロ(Exelero)」を公開した。流麗でありながら、空気抵抗の低減を徹底して追求された独創的なスタイリングであった。

「マイバッハ 57(Maybach 57)」をベースにして、その心臓部には、排気量5.9リッターのV12ツインターボエンジンを搭載し、最高出力700ps、最大トルク104kgmという圧倒的なパワーを発揮した。最高速度は350km/h超。その性能は、ショーカーの華やかな演出だけにとどまらなかった。発表直前の2005年5月初旬、イタリアのナルド・サーキットで最高速度351.45km/hを記録。実走によって、その実力を証明したのである。

1938年から続く最高速への挑戦;上は1938年に製作されたマイバッハSW38の最高速テストカーの設計図。下は、その挑戦を約67年後に受け継いだ2005年のエクセレロ。時代を超えて、フルダとマイバッハの協業が実現した。

この特別なプロジェクトを依頼したのが、ドイツのタイヤメーカーのフルダだった。同社は新しい高性能タイヤ「エクセレロ」の開発にあたり、その性能を実証するとともに製品のプロモーションにつなげるべく最高速チャレンジを計画。パートナーに選ばれたのがマイバッハだった。

フルダの高性能タイヤ開発プロジェクトから誕生し、イタリアのナルド・サーキットで最高速度351.45km/hを記録した。

車両の基本設計はメルセデス・ベンツが担当し、空力を追求したスタイリングにはドイツのプフォルツハイム造形大学が協力。実車の製作はイタリアのストーラ社が担った。こうして誕生した「エクセレロ」は、まさに国境を越えた技術とデザインの結晶である。装着されたタイヤは巨大な315/25 ZR23というサイズだった。

1938年にも実現していた、もうひとつの最高速チャレンジ

実は、フルダとマイバッハの協業はこれが初めてではない。1938年、フルダはマイバッハに最高速テストカーの製作を依頼していた。このとき誕生した「SW38」は、当時としては驚異的な時速200km超を記録したという。

67年の時を経て、両社は再び最高速度への挑戦で結ばれた。1938年の「SW38」から2005年の「エクセレロ」へ。時代も技術も大きく変わったが、タイヤの性能を極限まで引き出し、速さの限界を追求するという目的は変わらなかった。

ワンオフモデルならではのインテリア:ブラックとレッドのツートーンレザーを採用したエクセレロのインテリア。最高速への挑戦を目的とする特別なモデルでありながら、マイバッハらしいラグジュアリーな仕立ても追求されている。

「エクセレロ」は、単なる一台限りの高級クーペではない。マイバッハの技術と存在感、「フルダ」のタイヤ開発への情熱、そして最高速への挑戦が融合した、特別な一台なのである。

TEXT:妻谷裕二
PHOTO:妻谷コレクション