【耐久テスト】680馬力+1020Nmの「メルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンス」で3万km超の耐久テスト それでも心が熱くならないのはなぜか?
2026年8月31日
我々はメルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンスをもっと深く理解したかった。このクルマに、もう一度チャンスを与えようと考えたのである。そこで編集部の日常業務を通じて3万km以上を走った。果たして結論は? やはり、このクルマはV8の代わりにはならない!
複雑すぎる。重すぎる。高すぎる。そして、感情に訴えるものが少なすぎる。3年前に「メルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンス」が発表されたとき、ファンの間ではそうした見方が大勢を占めていた。
ハイブリッド化、ダウンサイジング、そして排気量当たりの極端な高出力化。一見すると大きな技術的飛躍に思えたが、顧客の心には響かなかった。最高出力680馬力、最大トルク1020Nmという数字は、確かにスペック表の上では強烈なインパクトを放っていた。しかし、運転して感情を揺さぶられる場面はほとんどなかった。
車重は2190kgと重すぎる。サウンドは人工的すぎる。そして電気だけで走れる距離は約13kmにすぎず、実用上のメリットはほとんどなかった。
当時、我々もかなり懐疑的だった。もっとも、セダンで行った最初のスーパーテストでは、ある程度感心させられたのも事実である。車重を考えればハンドリングは実に良く、ラップタイムも立派だった。
ただし、いつ、どのような条件で電気モーターのブーストが加わるのかという制御ロジックは、当初、まるで理解できない外国語のように難解だった。
さらに我々は、「なぜいつまでもV8エンジンにこだわり続けるのか」と何度も尋ねられた。F1や伝説的なハイパーカーから受け継いだ技術を投入した、この高度に電動化されたパワートレインこそ未来ではないか、というわけである。
しかし、そうした議論のなかでは、V8エンジンのほうが優れたサウンドを奏でるだけでなく、高い出力をより長時間にわたって安定して発揮できるという事実が、しばしば見過ごされていた……。

ともあれ、当時のAMGトップ、ミヒャエル シーベ(Michael Schiebe)へのインタビューは結局実現しなかった。その代わり、我々は「C 63 S Eパフォーマンス」を、より長い期間にわたって詳しくテストする機会を与えられた。
その理由はこうだった。通常の2週間程度のテストでは、1台のクルマの細部まですべて理解することなどできない。もっと長い時間をともに過ごせば、このクルマが何を目指して開発されたのか、その狙いも理解できるようになるかもしれない。
なるほど。それなら試してみよう。我々は提案を受け入れ、2025年3月初旬、ナンバープレート「S-MA 6333」を装着したC 63 S Eパフォーマンスが編集部にやってきた。
テクニカルデータ:メルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンス
エンジン形式/過給方式:直列4気筒+電気モーター/ターボ
排気量:1991cc
バッテリー総容量/実用容量:6.1/4.8kWh
エンジン最高出力:350kW(476馬力)
電気モーター最高出力:150kW(204馬力)
システム最高出力:500kW(680馬力)
エンジン最大トルク:545Nm
電気モーター最大トルク:320Nm
システム最大トルク:1020Nm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:4輪駆動
タイヤサイズ(前/後):265/35 ZR20/275/35 ZR20
全長/全幅/全高:4842/2033/1474mm
ホイールベース:2875mm
車両重量/最大積載量:2190/485kg
燃料タンク容量/荷室容量:60リットル/324~1510リットル
0-100km/h加速:3.4秒
最高速度:280km/h(電子制御)
WLTP燃料消費量(100km当たり):6.9リットル
ベース価格:11万6959ユーロ(約2163万円)から
先に結論を述べてしまおう。約6カ月間、約3万5000kmをともに過ごした時間は、決して悪いものではなかった。むしろ、その反対である。
伝説的なV8を積んだ歴代「C 63」のことを頭から切り離して考えることができれば、このクルマのパワートレインは、ほとんどの場面で落ち着きがあり、何より非常に幅広い用途に対応できるものだった。それに、このクルマに乗っていると、いつでもきちんとした服装で出かけているような上質な気分を味わえた。快適な雰囲気に包まれたコックピットにも、文句をつけるところはない。
ナビゲーションをはじめ、さまざまな機能を表示する大型センターディスプレイは直感的に操作でき、音声認識システムも話し手を選ばず、きちんと指示を理解してくれる。少々わずらわしい運転支援システムをオフにしたい場合も、あっという間だ。クルマのマークが描かれたボタンを1回押せば、警告音や作動音、ステアリングホイールの振動といった各種警告を個別に停止できる。

Photo:AUTO BILD
残念ながら、頻繁に目にしたのが燃料残量の警告表示だった。これほど重く、これほど大きなパワーを持つクルマにとって、60リットルの燃料タンクは明らかに小さすぎる。長期テスト全体では、ハイオクガソリンの平均燃費を100km当たり約10リットルに抑えることができた。しかし夜間の高速道路をハイペースで走った際は、給油から次の給油までの距離が、かつての三菱ランサーエボリューションと大差ないほど短くなった。
前述したように、ハイブリッドシステムがもたらすはずのメリットには、あまりにも多くのデメリットが伴っていた。例えばラゲッジルームである。ただでさえ荷室フロア全体が非常に高いうえに、その途中には大きな段差まで設けられている。具体的には、このステーションワゴンの荷室容量は、先代モデルより163リットルも少ない。カメラや計測機器を積み込む作業は、しばしばテトリスのような荷物の組み合わせゲームになった。一方、後席のスペースは十分に許容できる。
素晴らしいシャシーと安定した快適性―スポーティでありながら乗り心地も良好
アダプティブサスペンションは、明確な長所のひとつである。コンフォートモードでは路面の凹凸を滑らかに吸収する。スポーツモードを選んでも、乗り心地は十分に許容できる範囲に保たれていた。
そして、少しスポーティな走りを楽しみたいと思ったなら、特にスポーツ+モードでは、コーナーがこのクルマの得意舞台になる。走り出してしまえば、重い車重はほとんど意識させられない。
オプションのセラミックブレーキも見事な仕事をした。強力な制動力を発揮するだけでなく、回生ブレーキを組み合わせているにもかかわらず、ブレーキペダルの感触も良好だった。

バッテリーについても触れておこう。小容量の駆動用バッテリーは、いつも電力が不足しているように感じられた。外部電源につないで充電しても、その印象はあまり変わらなかった。680馬力のフルパワーを立て続けに使えば、蓄えられた電力は驚くほど短時間でなくなってしまう。
サウンドはどうか?まあ、人工的に作られた咆哮にも、そのうち慣れることはできる。
パワートレインを最も気持ちよく働かせるには、インディビジュアルモードを使う必要があった。サスペンションはコンフォート、エンジンとトランスミッションはスポーツに設定する。そうすれば4気筒エンジンは素早く反応し、バッテリーの充電量も維持され、オートマチックトランスミッションも歯切れよく変速する。
それでも結局、容量4.8kWhのバッテリーは妥協の産物だった。日常的に電気だけで走るには容量が小さすぎる。その一方で、重量や荷室容量への悪影響を無視できるほど小さくもない。つまり、プラグインハイブリッドとして十分なメリットを生み出せない一方、搭載することによるデメリットははっきりと存在していたのである。
ちなみに、長期テスト車の「S-MA 6333」が深刻なトラブルを起こすことは一度もなかった。テスト終了直前にタイヤがパンクしたが、それはもちろんクルマの責任ではない。
モデル変更が確定―AMGはC 63 S Eパフォーマンスを廃止
では、この先はどうなるのか?モデルチェンジに伴い、「C 63 S Eパフォーマンス」は廃止される。これで終わりである!その後継となるのは、おなじみの3リッター直列6気筒エンジンとマイルドハイブリッドシステムを搭載するC 53だ。最高出力はC 63 S Eパフォーマンスより低くなるものの、ドライビング体験、車両重量、そして価格は、AMGのファンが期待するものにはるかに近づくはずである。
そして、もうひとつ。珍しいクルマをコレクションしている人なら、このC 63 S Eパフォーマンスは狙い目かもしれない。これは冗談ではない。20年後、このクルマは、世界的な希少切手として知られる「ブルー モーリシャス」ほど見つけるのが難しい存在になっている可能性がある。
それは単に、コンフィギュレーターで選べるボディカラーのなかで、スペクトラルブルーだけが唯一、鮮やかな“本物の色”らしい色だったからではない。現在でも販売台数が少ないため、将来は非常に希少なモデルになる可能性が高いという皮肉である。
結論:
印象的なスタイリング、美しいコックピット、扱いやすい操作系。そして長距離走行からサーキットまで、いずれも難なくこなす素晴らしいシャシーを備えている。ただし、ハイブリッドシステムだけは最後まで中途半端な存在だった。プラグインハイブリッドとして使うにはバッテリーが小さすぎる。その一方で、パフォーマンスカーに搭載するシステムとしては重く、大きすぎたのである。
Text:アウトビルトジャパン(Auto Bild Japan)
Photo:Lena Willgalis
編集部より
「メルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンス」は、単体で見れば驚くべき技術を投入した高性能車である。2リッター4気筒エンジンから476馬力を引き出し、電動システムとの組み合わせによって680馬力と1020Nmを実現する。シャシーの完成度も高く、速さそのものに疑問の余地はない。しかし、「C 63」という名前にファンが求めていたのは、最高出力や加速性能といった数字だけではなかった。V8エンジンの音、鼓動、力強さ、そしてアクセルを踏むたびに得られる特別な感覚である。「C 63 S Eパフォーマンス」は驚くほど速く、極めて高性能だった。それでも、歴代C 63が持っていた魅力の代わりにはならなかった。技術的に優れていることと、人の心を熱くさせることは、必ずしも同じではないのである。

