新型CLAは「メルセデスらしさ」を再定義する一台 開発陣が語った次世代戦略とは
2026年8月7日
2026年7月29日、東京・南青山の「Mercedes-Benz STUDIO TOKYO」において、新型CLAの日本発表会に続き、ドイツ本社の開発責任者による技術説明会が開催された。説明のテーマは「安全性能」「ドライブトレイン」「MB.OS」の3つ。約1時間半にわたるプレゼンテーションを通じて、開発陣が繰り返し口にした言葉がある。
「We wanted to bring Mercedes-Benz character into every detail(あらゆるところにメルセデス・ベンツらしさを形にした)」
このフレーズは単なるブランドスローガンではない。新型CLAというモデルを通して、メルセデス・ベンツが次世代へ向けて何を目指しているのかを象徴するキーワードだった。
新型CLAは、新開発のMMA(Mercedes-Benz Modular Architecture)を採用する最初の量産モデルであり、EVと48Vハイブリッドの両方を前提に設計された次世代プラットフォームを採用する。単なる新型車ではなく、今後のメルセデス・ベンツ全体の方向性を示す戦略車という位置付けである。
安全性能は「事故を防ぐ」から「事故そのものを起こさせない」へ
技術説明会で最初に紹介されたのが安全性能だ。
メルセデス・ベンツは1886年の創業以来、安全技術をブランドの核としてきたメーカーである。新型CLAでは、その思想をさらに一歩進め、事故発生時の被害軽減だけでなく、「事故を未然に防ぐ」ことを最優先に据えた。

新世代のセンサー群とカメラ、レーダーを統合制御し、より高精度な周辺認識を実現。OTA(Over The Air)によるソフトウェア更新にも対応し、購入後も安全機能が進化していく設計となっている。

開発担当者は、「安全性能もまたメルセデス・ベンツらしさを表現する重要な要素」であると強調。ハードウェアだけではなく、ソフトウェアを含めた総合的な安全思想こそが、新世代CLAの特徴だという。
ドライブトレインは「効率だけではメルセデスにならない」
続いて説明されたのが、新型CLA最大の見どころともいえるドライブトレインだ。
MMAプラットフォームではBEV(バッテリーEV)を中心に開発しながらも、48Vハイブリッドモデルも同一アーキテクチャ上で展開するという極めて挑戦的な設計を採用している。

BEVモデルでは800Vアーキテクチャを採用し、高速充電性能と優れた電費性能を両立。さらに注目すべきは、後輪駆動用の電動ユニットに量産EVとしては珍しい2速トランスミッションを採用したことだ。一般的なEVは単速ギアが主流だが、新型CLAでは発進時や市街地走行では低速側ギアによる力強い加速を、高速巡航時には高いギアへ切り替えることでモーター回転数を抑え、高速域での静粛性とエネルギー効率を高いレベルで両立している。メルセデス・ベンツは、この2速トランスミッションが優れた航続距離だけでなく、高速道路での快適性や走りの質にも大きく貢献すると説明した。

一方、48Vハイブリッドモデルには新開発1.5L直列4気筒エンジンと電動モーターを組み合わせたシステムを搭載し、多様な市場ニーズへ対応する。
しかし説明会で印象的だったのは、スペックの数字ではなかった。

担当エンジニアは何度も「Mercedes-Benz Character」という言葉を用いながら、「効率だけを追求したクルマではメルセデスにはならない」と説明した。
アクセル操作に対する応答性、減速フィール、静粛性、高速巡航時の安定性、さらにはドライバーが感じる安心感まで含めて、「メルセデスらしい走り」を徹底的に作り込んだという。

単に航続距離や充電速度を競うのではなく、2速トランスミッションを含めたドライブトレイン全体で”走りの質”を磨き上げたことこそ、新型CLAの真価と言えるだろう。
単に航続距離や充電速度を競うのではなく、ドライバーが「これがメルセデスだ」と感じられる走行フィールを最優先したという説明は非常に印象深かった。
MB.OSが変える「クルマとの関係」
最後に紹介されたのが、新型CLAで世界初採用となるMB.OS(Mercedes-Benz Operating System)である。
MB.OSは単なるインフォテインメントではない。
車両制御、ナビゲーション、エンターテインメント、AIアシスタント、OTAアップデートまでを統合管理する、メルセデス・ベンツ独自開発の新世代車載OSだ。

従来のMBUXをさらに進化させ、AIとの自然な対話やGoogleベースのナビゲーションなども採用。ソフトウェアを中心にクルマ全体を進化させる基盤として位置付けられている。
説明会では、「クルマを販売した瞬間が完成ではない」という考え方も紹介された。
ソフトウェア更新によって機能や性能を継続的に改善し、ユーザー体験を長期間にわたり進化させる。それもまた、「メルセデスらしさ」を実現する重要な手段だという。
編集部より
今回の技術説明会で最も印象に残ったのは、最新技術そのものではなく、「メルセデス・ベンツらしさ」という言葉が何度も繰り返されたことだった。EV化、ソフトウェア化、AI、OTA――いま自動車業界では多くのメーカーが同じ方向を目指している。しかしメルセデス・ベンツは、そのすべてを「ブランドらしさ」という一本の軸でまとめようとしている。新型CLAは単なるエントリーモデルではない。MMAプラットフォーム、MB.OS、新世代安全技術など、今後登場するメルセデス・ベンツの基準を示す最初の一台である。
「あらゆるところにメルセデス・ベンツらしさを形にした」。
この言葉はプレゼンテーション中に何度も繰り返された。その言葉どおり、新型CLAは単なるスペック競争ではなく、「メルセデスとは何か」を改めて定義し直そうとする、ブランドの新たな出発点なのだと強く感じた。
Text&Photo:アウトビルトジャパン(Auto Bild Japan)

