豪雨が勝負を変えた! CATERHAM CUP JAPAN OBERON Series 第2戦、安達准平が開幕2連勝でタイトルに王手
2026年7月31日
ケータハムカーズ・ジャパンが主催する「CATERHAM CUP JAPAN OBERON Series」第2戦が7月20日、岡山国際サーキットで開催された。今季からスタートしたCATERHAM CUP JAPANは、西日本の「OBERON Series」と東日本の「PETRONAS Syntium Series」で構成され、ナンバー付き「SEVEN 170」をベースにFIA基準の安全装備を備えた「SEVEN 170 CUP」によるワンメイクレースとして注目を集めている。参戦しやすさと本格的なレース内容を両立したカテゴリーとして、ドライバーやファンから高い評価を得ている。
第2戦の舞台となった岡山国際サーキットは、開幕戦とは対照的に朝から真夏の日差しが照り付けるコンディション。予選には12台が出走し、各ドライバーはヨコハマ「ADVAN dB V553」の特性を活かしながら序盤からハイペースでアタックを展開した。

ゲストドライバーとして参戦した#14 阪口良平選手(賞典外)が唯一1分59秒台となる1分59秒710をマークしポールポジションを獲得。開幕戦ウイナーの#9 安達准平選手が2分00秒390で2番手、#5 中里紀夫選手が3番手、#22 齋藤和重選手が4番手につけ、決勝は実力伯仲の接戦が予想された。
予選コメント
予選1位 / #14 阪口良平選手(賞典外) / 1分59秒710
「ケータハムSEVENはムチャムチャ面白い! 乗用車感覚が残っているのにミッションがカッチリしていて扱いやすいです。ターボを活用してスロットル全開率を上げることがポイントです。カウンターは減速に繋がるし、フロントタイヤをロックさせてクリップを外すのもダメですね」
予選2位 / #9 安達准平選手 / 2分00秒390
「スリップストリームを使ってタイムを上げていきました。途中でクールダウンを入れてみましたが、阪口選手には届きませんでしたね。ドライ路面でのレースは嬉しいですが、後続とのタイム差を見ても決勝レースは接戦になるでしょう。スタートから1コーナーまでは慎重にいきますよ」
予選3位 / #5 中里紀夫選手 / 2分00秒986
「阪口選手のアドバイスに従ってアクセル全開率を意識しました。ドライでの走行は楽しいですが、フロントのブレーキロックが課題なので、予選では周回を重ねながら自分なりに走行スキームを改善していきました。決勝レースではスタートをミスせずに自分の走りを向上させていきます」
予選4位 / #22 齋藤和重選手 / 2分01秒345
「数週間前に別のカテゴリーで岡山国際サーキットを走りました。クルマの条件は違いますがケータハムSEVENは面白いです。予選ではブレーキングを意識して突っ込み過ぎないよう心掛けましたが、まだまだタイムを詰められると思いますので、立ち上がり重視に切り替えて挑みます」
波乱の決勝
午後2時40分にスタートした決勝レースは、路面温度45℃という酷暑の中で幕を開けた。しかしレース序盤から空模様が急変。2周目には小雨が降り始め、わずかな時間でコースコンディションは一変した。

運命を分けたのは4周目だった。激しい雨によりコース上のラバー(タイヤカス)が雨水に浮くような状態になり、路面が極端に滑りやすくなったことで、トップを快走していた阪口選手がパイパーコーナーでコースアウト。さらに安達選手、中里選手、齋藤選手、竹内選手まで同じポイントで相次いでグラベルへ飛び出す波乱の展開となる。齋藤選手がスタックしたことで赤旗中断となり、その後セーフティカー先導でレースは再開されたが、規定周回を満たした6周でチェッカーとなった。
「440kg」という数字は、スペック表で見る以上に意味を持つ
現代のスポーツカーの多くが1.5〜2.0トン級となるなか、SEVEN 170 CUPの車重はその約4分の1しかない。ステアリングを切れば即座にノーズが向きを変え、ブレーキを緩めれば荷重が移り、アクセルを踏めばリアタイヤが路面を蹴る。そのすべてをドライバー自身が感じ取れることこそ、このクルマ最大の魅力だ。
電子制御が介入する余地は少なく、速く走るための近道も存在しない。だからこそ、このワンメイクレースでは「誰が一番うまいのか」がストレートに表れるのである。
安達選手が2連勝
トップチェッカーは阪口選手が受けたものの、賞典外参戦のためシリーズ優勝は安達選手となり、開幕戦に続く2連勝を達成。2位には中里選手、3位には混乱を巧みに切り抜けた萩野貴司選手が入り、それぞれ貴重なシリーズポイントを獲得した。

シリーズランキングでは安達選手が40ポイントで首位をキープし、中里選手が32ポイント、萩野選手が29ポイントで続く。さらに4位・大野選手が27ポイント、5位・竹内選手が25ポイントと僅差のため、チャンピオン争いは11月23日に岡山国際サーキットで開催される最終戦へ持ち越されることとなった。
SEVEN 170 CUPとはどんなマシンなのか
CATERHAM CUP JAPANで使用されるマシンは、市販モデル「SEVEN 170」をベースとした専用レースカー「SEVEN 170 CUP」だ。ナンバー付きモデルをベースとしながらも、FIA基準に適合したロールケージや6点式ハーネスなどの安全装備を追加。さらにワンメイクタイヤにはヨコハマ「ADVAN dB V553」を採用することで、ドライバー同士が純粋に腕を競えるイコールコンディションを実現している。

車重はわずか約440kg。搭載される660cc直列3気筒ターボエンジンは最高出力こそ控えめだが、圧倒的な軽さによって優れたパワーウエイトレシオを実現する。ドライバーの操作がダイレクトに車体へ伝わるため、ブレーキング、ステアリング、アクセルワークのすべてがラップタイムへ直結する。電子制御に頼らないピュアスポーツカーだからこそ、ドライバー本来の技量が勝敗を左右するのである。
ケータハムならではのワンメイクレースの魅力
近年のワンメイクレースは、車両性能の均一化によって「ドライバーズレース」としての色彩を強めている。その中でもCATERHAM CUP JAPANの特徴は、マシンの限界が極めて低速域から体感できることだ。
SEVEN 170 CUPは絶対的な最高速ではスーパーカーに及ばない。しかし車重が軽いためコーナリング中の荷重移動が非常に分かりやすく、アクセルを数%戻しただけでも姿勢が変化する。逆にブレーキをわずかに残しすぎればフロントタイヤがロックし、アクセルを踏み急げばリアタイヤがスライドする。

つまり、「誰でも速く走れる」のではなく、「正しく操作した人だけが速く走れる」クルマなのだ。だからこそ毎戦接近戦が生まれ、ドライバー同士の経験や判断力、そして一瞬の判断ミスまでもが順位に反映される。世界中で半世紀以上愛され続けるケータハムレース文化が、日本でもスタートした理由がここにある。
軽量車だからこそ豪雨が勝負を分けた
今回の決勝では、わずか数周でドライから豪雨へと天候が急変した。一般的に「軽いクルマは雨に強い」と思われがちだ。しかし実際はそう単純ではない。SEVEN 170 CUPは約440kgという超軽量ゆえにタイヤへ掛かる荷重が少ない。そのため路面に水膜ができるとタイヤが十分に路面を押さえ込めず、グリップを急激に失いやすいという特徴がある。

さらに岡山国際サーキットのようにドライ時に形成されたレーシングラインへ突然雨が降ると、路面へ付着していたタイヤラバーが雨水に浮いて非常に滑りやすい状態になる。今回、多くの上位陣が同じパイパーコーナーで相次いでコースアウトしたのは、その典型的な現象だった。
こうした状況では速さだけではなく、「どこで危険を察知するか」「どこまで攻めるか」という判断力が重要になる。まさにドライバーの経験値が試されるレースだったと言える。
決勝コメント
決勝1位 / #9 安達 准平選手 / 2分01秒344(ベストラップ)
「得意なスタートが決まって先頭の阪口選手を追えるペースでしたが、中里選手の猛追にプレッシャーを感じて、ブレーキのターンインで飛び出たりしました。今回はチームメイトの萩野選手と表彰台に上がれて嬉しかったです。次戦もまわりに負けないよう威厳のある走りをしたいと思います」
決勝2位 / #5 中里 紀夫選手 / 2分01秒507 (ベストラップ)
「決勝レースは気持ちに余裕が無かったから、ブレーキングでは手前からの慎重な操作を心掛けました。30数年ぶりに走る岡山国際サーキットは楽しいし、SEVEN 170 CUPやワンメイクタイヤといったレギュレーションも素晴らしいですね。次の最終戦こそはドライであって欲しいです」
決勝3位/ #8萩野 貴司選手 / 2分03秒089(ベストラップ)
「決勝レースでは運がいいポジションにいました。やはりウェット路面で滑ってしまいましたが、すぐに復帰できたのもラッキーでした。普段はSEVEN 170 CUPでは走っていないので、次の最終戦に向けておじさんドライバーなりに練習しておきたいと思います」

シリーズチャンピオン争いは最終戦へ
開幕2連勝を飾った安達准平選手は40ポイントでランキング首位をキープ。一方で中里紀夫選手は32ポイント、萩野貴司選手は29ポイントと、その差は決して大きくない。さらに4位の大野偉貴選手が27ポイント、5位の竹内大樹選手も25ポイントにつけており、一度のレース結果で順位が大きく入れ替わる可能性を残している。
最終戦の舞台も再び岡山国際サーキット。同じコースで争われるとはいえ、11月は7月とはまったく異なる気温や路面コンディションとなることが予想される。夏の猛暑で見せた速さがそのまま通用するとは限らず、マシンセットアップやタイヤマネジメントも勝敗を左右する重要な要素となるだろう。

開幕イヤーとなるCATERHAM CUP JAPAN。その初代シリーズチャンピオンの称号を手にするのは安達選手か、それとも逆転劇が待っているのか。最終戦はシリーズの集大成にふさわしい、白熱した一戦となりそうだ。
今回のレースは、軽量スポーツカーならではのダイレクトな操縦性だけでなく、刻々と変化する天候への対応力が勝敗を左右した一戦となった。ワンメイクならではの接近戦と予測不能なドラマが凝縮されたCATERHAM CUP JAPANは、最終戦でどのような結末を迎えるのか、大きな注目が集まる。

AUTO BILD JAPAN INSIGHT
軽さは、スペックではない。思想である。約440kgという数字は、単なる軽量化の成果ではない。ドライバーの操作を一切ごまかさず、そのすべてをクルマが映し出すという、ケータハムの哲学そのものだ。だから豪雨になれば経験が勝ち、ドライになれば技術が勝つ。電子制御が速さを生み出す時代だからこそ、人間の感覚だけで勝負するカテゴリーには特別な価値がある。CATERHAM CUP JAPANが始まった意味は、単なる新しいレースシリーズの誕生ではない。”運転する楽しさ”という、クルマ本来の原点を改めて問いかける存在なのかもしれない。アウトビルトジャパン(Auto Bild Japan)
Text:アウトビルトジャパン(Auto Bild Japan)
Photo:ケータハムカーズ・ジャパン

