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プラモデルはやっぱり面白い Vol. 7 メルセデス・ベンツ

2021年3月22日

名車の名キットを組む

今回はメルセデス・ベンツを採り上げたいと思う。「300SL」と「540k」について紹介するが、特に「300SL」は馴染み深いのではないかと思う。世界初のガソリン直噴エンジンが搭載された2シータークーペでドアが上部に開く、いわゆる「ガルウィング」である。その独特なガルウィングドア機構をはじめ、世界初の技術を多数盛り込んだ「300SL」は、メルセデス・ベンツの歴史を語る上で外せないモデルであり、文字通り伝説の1台だ。

「Mercedes Benz 300SL Gullwing」 1/24 イタレリ製

個人的な話で恐縮だが、数年前に惜しくも亡くなられた私の大先輩は「300SL」を所有されていた。二十数年前にその「300SL」を初めて間近に拝見させて頂いた。その時の衝撃は未だに忘れられないでいる。その絢爛さと堂々たる雰囲気に圧倒されたのだ。とにかく、あの「ガルウィング」である。カモメが翼を広げた姿を思わせるような独特なフォルムには感動さえしたものである。

「メルセデス・ベンツ300SL」 1/24 タミヤ製

実は22年前この「300SL」も含めて、地元でクラシックカー展示イベントが初開催された。展示台数は約120台であったが、展示車の目玉はやはり「300SL」であった。しかし予想以上の見学希望者も来場し、会場も含めて付近は大混雑となってしまった。会場への道路も渋滞してしまい、スタッフの一員である私はその整理にもあたった。すると渋滞中のある車中から年配のご婦人から声を掛けられ、懇願された。「石原裕次郎さんが乗っていた車を一目でよいから見せて下さい」、と。
今は亡き銀幕界伝説の大スター、石原裕次郎氏の人気のおかげもあろうが、名車とはこれほど人々を引き寄せるのかと思わされた。(ご存知の方も多いと思うが、故石原裕次郎氏は、稀代のカーマニアで、「300SL」も愛用していた)

「Mercedes Benz 300SL Gullwing」1/24 イタレリ製

今回はその「300SL」をイタレリ製とタミヤ製で競作してみた。全体的な印象で云えば、イタレリ製は数少ないパーツで「300SL」のエレガントなフォルムを良く表現していると思う。

完成後の写真。

ただしワイパーの形状だけは改良が必要だと思わされた。フロントウィンドウに全く馴染まないのである。フロントウィンドウはなだらかな曲面であるが、ワイパーブレードが直線で成型されているのだ。したがってワイパーの停止位置である水平には接着出来ず、ワイパーが作動中の縦位置に接着するしかなかった。それ以外はこれといった問題も無く組み上がるので、特に週末モデラーにお勧めしたい。

2社の「300SL」を製作して興味深く思ったのは、パーツ分割にかなりの共通性があることだ。例えばパーツ数を抑えているイタレリ製でもインパネ部分は一体化せずに、タミヤ製と同様のパーツ分割としている。そのおかげで、「300SL」の見どころであるインパネ周りの塗装が比較的容易になっているのである。やはりメーカーのパーツ設計者は、実際に組み立てを行う我々の製作・塗装が如何に容易になるかと考え、工夫を凝らしているのだなということがわかって興味深い。

「メルセデス・ベンツ300SL」 1/24 タミヤ製

イタレリ製の「300SL」と違って、タミヤ製の「300SL」はガルウィングドアとエンジンフードが可動式である(エンジンフードはイタレリ製も可動式)。やはり「300SL」の特徴であるガルウィングを可動式としたインパクトは大きい。

「300SL」はガルウィングが開閉状態のどちらでもエレガントで美しいと思う。ガルウィングを可動式としたことにタミヤスタッフの苦労が偲ばれる。きっと商品化の決定段階では真っ先に可動式と考えたのであろうが、設計時には24分の1スケールでガルウィングが開閉、かつ強度を確保することには頭を悩ませたに違いない。これ以外にもタミヤスタッフの拘りが感じられる。特にチューブラーフレームの再現は圧巻と云えるだろう。かなり複雑に見えるフレームがあっさりと組み上がってしまうのだ。その仕上がったフレームを鑑賞するだけで税に入ってしまえる(多少、変態気味か?)。フレームにエンジン本体を45°傾けて組み付ける時は、その作業自体が格好良く思えるほどである(やはり変態である)。

またガルウィングが大きく開くので、内装の表現にも手が抜けない。その点、タミヤの組立説明書には塗装についても詳細に記述されている。間違いなく最良のキットだ。

「Mercedes Benz 540k」 1/24 イタレリ製
数年前にネットで購入。金額不詳。現在販売休止中と思われる。

「MB540k(実車)」は1936年から1939年まで約400台が注文生産された。末尾の「k」は、ドイツ語のコンプレッソル(過給機)であり、スーパーチャージャーが装着されていることを示す。

当時180馬力を発したが、スーパーチャージャーが作動した際のサウンドは「ワルキューレの雄叫び」と称された。さて肝心のキットであるが、私にはこのような戦前車は敷居が高く感じられていた。したがって組みづらいことを覚悟して製作を開始すると、案外とそれほどの苦労もなく組み上がった。

その分、考えさせられたのは塗装であった。ボックスアート(箱絵)のようにツートーン塗装とするか、モノトーン塗装とするか。結局はブラックのモノトーン塗装としたが、如何にもゲルマン的な格調高さを表現出来たと自己満足している。ただしこのキットには一切デカールが付属していない。「540k」は、最近の車と比較すると、エンブレム類は少ない。しかしカブリオレなので内装のメーター部分など全て塗装で表現する必要がある。プラモデル好きな読者の方々の腕の見せ所となるであろう。

塗装のヒント

「540k」の欄で紹介した通り、内装のメーター類やホィールのエンブレム部分を塗装する必要がある。思わず厄介な塗装だ、と考えてしまうところだ。そこで私の塗装方法を披露させて頂く。例えばホィールのエンブレム部分は最初にスリーポインテッドスターも含めてエナメル系塗料のホワイトで塗装してしまう。ホワイトが乾燥したら、スリーポインテッドスター部分は凸モールドされているので、溶剤を少量含ませた綿棒でホワイトを落とせば完了する(失敗してもやり直しが出来る)。メーター部分も同様な作業で表現出来る。

ドイツ車&メルセデス・ベンツということで、最初は少々敷居の高い想いを抱いたが、今回もエンジョイできたし、個人的な満足感も高かった。プラモデルはやっぱり面白い。(笑)

「Mercedes Benz 300SL Gullwing」 1/24 イタレリ製
「Mercedes Benz 300SL Gullwing」 1/24 イタレリ製
「Mercedes Benz 300SL Gullwing」 1/24 イタレリ製

Text & photo: 桐生 呂目男

「プラモデルはやっぱり面白い」Vol. 1からVol. 8はこちらからご覧いただけます。