ここでは、あらゆるカーブに死が潜んでいる 全長17.7km、318ものカーブがある世界で最も危険な道路のひとつ「テール オブ ザ ドラゴン」とは?
2026年7月1日
アメリカ・ノースカロライナ州とテネシー州の州境に位置する「Tail of the Dragon(テール オブ ザ ドラゴン)」。全長17.7kmに318ものコーナーが連続する、世界でも屈指の危険な道路だ。その一つひとつのカーブが挑戦であり、一瞬の判断ミスが命取りになりかねない。
アメリカ・ノースカロライナ州とテネシー州の州境、ディールズギャップの駐車場には、「Tree of Shame(恥の木)」と呼ばれる一本の木が立っている。
この「恥の木」は、失敗と過信の象徴だ。まるでネイティブアメリカンの戦士が腰に下げる戦利品のように、約1,000点もの残骸が枝からぶら下がっている。オートバイの燃料タンク、ミラー、ひしゃげたボディパネル、さらにはアウディTTのステアリングホイールカバーまである。
その一つひとつの残骸の裏には、多くの場合、悲しい物語がある。あるタンクには「RIP R1, Florida 2015」と書かれていた。「安らかに眠れ、R1、2015年フロリダ」。これはフロリダ州のライダーが、愛車だったヤマハYZF-R1へ贈った別れの言葉だ。

この少々異様な風習は1980年代から続いている。そこには暗黙の、しかし絶対的なルールがある。何かを吊るす者は、少なくともユーモアのセンスを持っていなければならないということだ。主催者が認めるのは、持ち主が分かる署名入りの破片だけ。それらは戦利品ではない。
中には実に淡々としたメッセージもある。
「Washington 2023」
転倒したライダーは、自分のベースボールキャップにそれだけを書き残していた。
平均すると約4日に1件の事故
少なくとも、そのライダーは文字を書くことはできた。しかし、誰もがそんな幸運に恵まれるわけではない。この道路では平均すると約4日に1件の事故が発生している。統計上、年間約1.5人が命を落とす。最悪だったのは2021年で、「Tail of the Dragon(テール オブ ザ ドラゴン)」攻略に挑んだ8人が命を失った。
「Tail of the Dragon(テール オブ ザ ドラゴン)」と呼ばれるこの道は、急勾配の峠道というわけではない。しかし、アメリカでも有数の危険な道路である。全長11マイル(約17.7km)のアスファルトには318ものコーナーが続き、その大半がブラインドコーナーだ。つまり、進入時には出口が見えない。まるで目視飛行のようなものだ。当然、少しでも判断を誤れば大変なことになる。
「Tail of the Dragon(テール オブ ザ ドラゴン)」はスピード狂たちの巡礼地
危険であるにもかかわらず「Tail of the Dragon(テール オブ ザ ドラゴン)」は世界中のスピード愛好家たちにとって巡礼地となっている。
ジェームズはオレゴン州スプリングフィールドからやって来た。巨大なツアラー「インディアン チャレンジャー リミテッド」を駆り、このワインディングロードへ挑む。それはある意味、この場所にふさわしい。
正式名称US129である「Tail of the Dragon(テール オブ ザ ドラゴン)」は、もともと動物たちの通り道だった。その後18世紀以降、チェロキー族や開拓者たちが利用する道となったのである。

隣には同級生のコンラッドがいる。彼はオーストラリア・シドニーから、この数多くのライダーが命を落としてきた運命の道路を走るためだけに、アメリカ東部までやって来た。二人とも、生まれながらにアメリカ人が持っているかのような揺るぎない楽観主義を漂わせている。
「問題ない。ちゃんとコントロールできるよ!」
二人は声を揃えてそう言った。彼らは基本的には穏やかなタイプだ。しかし中には、自らをマルク マルケス(Marc Márquezes)気取りでMotoGPスターになりきり、限界までバンクさせながら猛スピードで駆け抜ける者もいる。
そんなライダーを待っているのが「Tree of Shame(恥の木)」だ。

その時、一台のメルセデスAMG GT 63が轟音とともに目の前を駆け抜け、二人は思わず身をすくめた。私たちはコース沿いに点在する退避スペースの一つに立っていた。速い車を先に行かせるために使う者もいれば、一息つくために利用する者もいる。
今日は様子を観察している。比較的静かだ。それでも夏の週末には、一日約1,200台もの車両が「Tail of the Dragon(テール オブ ザ ドラゴン)」を訪れる。
主役はもちろんライダーたちだが、クルマ好きもこの伝説の道へ挑戦しにやって来る。まずマツダMX-5(ロードスター)の集団が通り過ぎ、その後ろをフォードF-150が続き、さらに定番とも言えるポルシェ911が現れた。車種に制限はない。四輪バギーを持ち込む者もいれば、子どもを満載したミニバンで果敢に走る家族もいる。

しかし、その一方で、自分自身にも周囲にも速さを見せつけたい”スピード部隊”もいる。下りでは、改造スバル インプレッサがホンダ シビックのリアバンパーに張り付き、数メートルおきにシフトダウンを繰り返す。
「どいてくれ、抜きたいんだ」
そう言いたげだ。あの白く塗られた大型リアスポイラーが木の枝に引っ掛かったら、どんな姿になるのだろうか―そんなことを考えてしまう。
MINIならこの道を走り切れる
さて、前置きはこれくらいにしよう。いよいよ私たちも「Tail of the Dragon(テール オブ ザ ドラゴン)」へ挑む。ほんのわずかなミスでも、「ツリー・オブ・シェイム」に仲間入りしかねないことを十分承知しながら、一歩一歩進んでいく。
相棒は、この左右に切り返す連続コーナーに理想的な一台。MINI クーパー ジョン クーパー ワークスだ。3ドアボディに170kW(231ps)の2.0リッターターボ、前輪駆動、ホイールベースは2.50m、そして低重心。ボディカラーは「オーシャンウェーブグリーン」。赤や黄色に染まる秋の森の中で鮮やかに映える。
最初の数コーナーは難なくクリアした。まだ余裕がある。ドラゴンの尻尾のアスファルトは滑らかで、新品のピレリ製スポーツタイヤはまず温度を上げる必要がある。グリップが増すにつれ、自信も深まる。
ドラゴンとのダンスは、徐々に激しさを増していった。左、右、右、そして180度ターン。リズムをつかむのは簡単ではない。それでもMINIは見事に応えてくれる。フロントに機械式LSDを持たなくても、各輪への緻密なブレーキ制御によって、俊敏に向きを変えていく。車重はドライバー抜きで1,330kg。もはやクラシックMiniとは別物と言っていい。

ブレーキ制御は絶妙だ。しかし調子に乗りすぎると、タイヤは悲鳴を上げ、グリップを失い始める。そうなるとMINIでも前輪駆動の限界は隠せず、ノーズは道路の外側へ膨らんでいく。つまり、クルマの挙動は一気に落ち着きを失う。攻め過ぎは逆効果だということを、私たちはすぐに理解した。そこで「ゴーカートモード」を解除し、「コア」モードへ変更。アクセルを丁寧にコントロールしながら、自分たちのペースで走ることにした。一メートル一メートルを味わいながら走り切り、最後はテネシー州チルハウィー湖の駐車場へ到着した。
そこにはコンラッドとジェームズの姿があった。「やったね! 君たちも無事だった!」二人は満面の笑みで迎えてくれた。その笑顔には「Tree of Shame(恥の木)」の枝に自分たちのバイクが飾られずに済んだことへの安堵も、少しだけにじんでいるようだった。
Text: Wolfgang Gomoll
Photo: Bernhard Filser

