【対決】ディーゼルかガソリンか それが問題だ ガソリン車対ディーゼル車比較テスト×5メーカー
2021年3月11日
ディーゼルエンジンかガソリンエンジンか? 日々変わりつつある内燃機関のモデルを取り巻く環境であるが、現状ではガソリンとディーゼルのどちらのアイデアのほうがより良いのか? もちろん、我々は電気自動車が増加傾向にあることを承知で、このテーマに取り組んでいる。5つのメーカーのディーゼルモデルとガソリンモデルの比較で答えを提供する。
それは私たちが想像していたよりも早く起こりつつある。
2020年、すでにここドイツでは、全新規登録台数の6.7%が電気自動車だった。
今年はもっと増加するであろう。
しかし、電気自動車か内燃機関かを決めなければならない時代が待ったなしに到来したと考えているあなた、慌てないでほしい。
内燃機関がまだ我々の生活を支え続け、そして、まだしばらくの間はそうであることに変わりはない。
多くの技術的に進歩した内燃機関エンジンは、これまで以上に効率的で、経済的で、クリーンだ。
そしてそのことは、スキャンダルでイメージの悪化したディーゼルにも当てはまる。
しかし、その一方で、ディーゼルとガソリンのどちらがいいのか、という永遠の問いかけは残る。
そこで我々は、「BMW 5シリーズ」から「プジョー2008」まで、5つのメーカーの10種類のモデルを比較してみた。
「プジョー2008」の場合には、電気自動車も含まれている。
私たちがどのように採点したかをご紹介しよう。
まず、正確な燃料消費量を測定する。
また、すべての車について、我々は4年間の保有期間と年間15,000kmの走行距離を想定している。
維持費には、この期間の燃料費、税金、包括的な保険、走行距離に応じた検査費、減価償却費が含まれている。
しかし、コスト計算は一側面に過ぎない。
もう一つの側面は、その車の走行文化、走行特性、走行性能などについての私たちの主観的な評価だ。
最終的には、それぞれのケースで明確な推奨モデルを決定する。
以下、テストの詳細をフォトギャラリーとともにお届けする。
対決その1: BMW 520i対520d
縦置き(燃焼)エンジン、後輪駆動、正確なステアリング、そしてクリーンにチューニングされたシャシーを備えたクラシックなセダンがいまだに存在しているというのは驚きであり喜びだ。
それがまさにBMWの5シリーズだ。2017年から生産され、昨年夏にフェイスリフトを受けた。モダンでエレガント、洗練されたデザイン。フラットで伸びやかなシルエット、ワイドなキドニーグリル、「ホフマイスターキンク(Cピラーのところでちょっと斜め上に跳ね上がってから折り返してルーフに向かって行く跳ね上がり=BMWのアイデンティティ)」など、すべてが揃っている。
結論:
5シリーズは、最高の形で、成熟した、自信に満ちた、調和のとれた車だ。何よりも、パワフルでリラックスした経済的なディーゼルは、ガソリンエンジンモデルよりも、アッパークラスセダンによりフィットしている。
ガソリン対ディーゼル: 0対1でディーゼルの勝ち
対決その2: VWティグアン1.5 TSI対ティグアン2.0 TDI
ここでは、オレンジとリンゴのどっちを選ぶのかというような、悩ましい選択を強いられる。人気の「ティグアン2.0 TDI 4MOTION(150馬力)」は、その同じように強力なガソリン車の兄弟、「1.5 TSI」と競合する。それは、前輪駆動モデルとしてのみ利用可能だ。さて、ドイツで最も人気のあるSUVの比較テスト。どちらに軍配は上がっただろうか。
結論:
年間40,000kmまでの日常的なドライバーには、前輪駆動の「TSI」の方が間違いなく賢明な選択だ。「4MOTION TDI」はより多くのことができるが、その分様々なコストが高くってはしまう。というわけで、今回は引き分けとしたい。
ガソリン対ディーゼル: 1対1の引き分け
対決その3: アウディA5 40 TFSI対A5 40 TDI
エレガントな外観の「A5」。何よりも、それは本物のクーペ、すなわち、2つのドアを持つクルマだ。
結論:
我々にとっては、滑らかで生き生きとしたガソリンエンジンは、エレガントで徹底的に洗練されたクーペに属するものであることは明らかだ。経済的ではあるが洗練されていないディーゼルエンジンではない。従って、我々はこのクルマではガソリンエンジンを選びたい。
ガソリン対ディーゼル: 3対1でガソリンの勝ち
対決その4: メルセデスGLB 200対GLB 200d
「GLB」は遅れてやって来た。メルセデスが2019年の終わりに、大成功を遂げた「ティグアン」に対する適切な競合モデルを思いつくまで13年という月日を要した。
結論:
ここではディーゼルのほうがお勧めだ。ディーゼル、DCT、全輪駆動の組み合わせは非常に調和がとれている。重く大きな実用SUVにはディーゼルエンジンモデルのほうがおすすめという好例だ。
ガソリン対ディーゼル: 2対3でディーゼルの勝ち
対決その5: プジョー2008ピュアテック180対2008ブルーHDi 130とe-2008
「プジョー2008」は、快適なサスペンションと滑らかなステアリングが、プジョー最小のSUVを快適なクルマにしている。スポーティな見た目とは裏腹に、どこか石垣のようなコックピットでさえも、その事実を隠しきれていない。どのエンジンが一番合うのか?結論から言えば、この3つのうちのどれを選んでも間違いはない。
結論:
静かなガソリンエンジン、経済的なディーゼル。最終的には、ガソリンエンジンがレースに勝つ。「プジョー2008」の大きさには、シンプルなガソリンエンジンが一番似合う。プジョーのオートマチックトランスミッションは、ユーザーの好みにさえ合っていれば、プジョーによく適合している。同じことは「e-2008」にも言える。
ガソリン対ディーゼル: 7対3でガソリンの勝ち
総合評価:
ということで、今回はガソリンエンジンの勝ちだ。
本格的なSUVにもお勧めできる。
VWティグアンは、それからまともに動力を得ている。
ディーゼルは、ディーゼルエンジンが素晴らしい資質を持っている「BMW 5シリーズ」と「メルセデスGLB」のための第1選択となる。
重要なのは今回のテストで失望したパワーユニットはなかったという事実だ。
一時期、まだ日本にヨーロッパのディーゼルエンジンモデルが本格導入される前、「ディーゼルエンジンは魔法のエンジン」かのように言われていたことがあった。
トルクがある、燃費が良い、今のディーゼルエンジンはクリーンだ、ヨーロッパでは軽油が安いににもかかわらず選ばれているクルマは半数以上がディーゼルエンジンだ…、などなど。
かく言う私もそういう読み物に洗脳され、日本でもヨーロッパのようにディーゼルエンジンを自由に選べる時代がこないだろうか、と待っていた一人である。
そして数年が経過し、日本でもヨーロッパ並みとは言わないまでもかなりの種類のディーゼルエンジンモデルが導入され自由に選べるようになったので、待ちに待った機会到来、とばかりにかたっぱしから試乗したり自分で購入したりする運びとなった。
待ちに待った甲斐があり、ディーゼルエンジンにはガソリンエンジンにないはない魅力満載だし、今やうるさく回らないなどということはないし、何しろ燃費が良いから今でも僕の日常の移動はディーゼルエンジンの車である。そしてその魅力を今でも乗る度に享受している。
だが、冷静になってみればヨーロッパからやってきた多くのディーゼルエンジンの中には、なんとも未完成な感じの物や、明らかにこれならガソリンエンジンのほうがいい、と正直に思うものもかなりあったことも事実だし、当たり前のことではあるがディーゼルエンジンは魔法のエンジンなどではなく、一長一短を持つ内燃機関の一つであるということを実感した次第である。
個々のエンジンの完成度が大きく異なったことも確かではあるが、それには乗せられるクルマ、つまりベースとなったモデルの性格も大きく関係していることは言うまでもない。ディーゼルエンジンに似合うクルマというのをもう一度考えてみると…。
軽く小さいモデルよりも、重く大きいほうが、相性が良く、ちょこちょこ街中を走り周りるよりも一旦走り始めたら淡々と一定速で一挙に長い距離を移動するような、言ってみればGTみたいなもののほうが長所を生かしやすい。
ということは小型車や、ロードスターのような軽便なスポーツカーには一番相性が良くなく、SUVや中型以上のセダンあるいはワゴンのような車がディーゼルエンジンに合致しやすいのではないだろうか、という当たり前の結果になった。
今回の5メーカーのテストでも結局はそういうカテゴリーの車においてはディーゼルが優位となり、そうではないモデルはガソリンエンジンのほうが高い評点を得ている。そしてそこでもディーゼルは決して魔法のエンジンではなく、ベースになった自動車の出来不出来や性格によっても、どちらが優れているかの結論が導き出される、という結果になった。
まだガソリンエンジンもディーゼルエンジンもしばらくの間は引退しない。自由に選べる今だからこそ、自分の使用目的と、どんな性格のクルマを選ぶかを見極めてパワーユニットも選んでほしい。
Text: Malte Büttner, Dirk Branke, Rolf Klein, Jonas Uhlig
加筆: 大林晃平
Photo: Christoph Boerries / AUTO BILD