「天空の高野山」を走るBYDのEVバス 新たな移動体験が始まる
2026年5月5日
2026年4月24日、南海りんかんバスは、和歌山県の高野山上エリアにおいて大型路線タイプの電気バス(EVバス)の運行を開始した。和歌山県内で大型路線EVバスが導入されるのは今回が初めてとなる。世界遺産として知られる同地域において、環境負荷低減と観光価値の向上を両立する新たな交通手段として注目される。
今回導入された車両は、中国メーカーのBYDが製造する大型EVバス「K8」で、計6台が高野山営業所に配備された。車両は最大80名の乗車が可能で、一充電あたり約240kmの走行距離を確保する。おもに高野山駅と奥の院を結ぶ路線に投入される。

EVバスは走行時にCO2を排出せず、騒音や振動も抑えられる点が特徴であり、クリーンさや静寂性が重視される高野山の環境との親和性が高いとされる。加えて、ディーゼルバスに比べて圧倒的に車内の静粛性が高く、振動も少ないことから、車内は終始落ち着いた雰囲気が保たれる。ガイドを兼ねる運転士の案内も明瞭に聞き取ることができ、観光路線としての快適性向上にも寄与する。さらに、電動駆動ならではの滑らかな加減速により乗り心地が向上しているほか、シフト操作やクラッチ操作が不要であることから、運転士の負担軽減にもつながっている。

外観デザインは同日に運行を開始した観光列車「GRAN 天空」とカラーリングを統一し、赤を基調とした落ち着いた意匠を採用。高野山に自生するシャクナゲの花をモチーフとするなど、地域景観との調和も意識されている。
導入の背景について、南海りんかんバスの和田純一社長は「南海グループとして環境経営を推進する中で、CO2排出ゼロの電気バスは高野山の雰囲気維持にも寄与する。また、国内有数の観光地である同地から環境への取り組みを発信する意義も大きい」と説明する。

一方、BYDジャパンの石井澄人副社長は、今回の採用について「南海グループでは2023年から当社製EVバスの運用実績があり、『K8』および小型モデル『J6』を含め約3年間の使用実績がある。さらに大阪・関西万博に向けた運用での評価も、今回の導入につながった」とコメントしている。
運用面では、1日あたりの走行距離が約100kmであることから、240kmの航続距離は十分な余裕があると判断されている。営業終了後に夜間の急速充電を行うことで、翌日の運行に支障はないという。高野山駅には3基6口の急速充電設備が整備されている。

今回のEVバス導入が、高野山上エリアにおける持続可能な交通インフラのモデルケースとして注目が高まるはずだ。
TEXT:生方 聡
PHOTO:BYDジャパン、生方 聡

