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【世紀のチューニング】2つが1つに 250 GTZのデザインと575 Mマラネロのテクノロジーを融合させたフェラーリ575 GTZ ザガートとは?

2026年4月8日

ザガートは、フェラーリ 250 GTZのデザインとフェラーリ 575M マラネロの技術を組み合わせ、5台限定の575 GTZを創り上げた。

林良行は幸運な男に違いない。彼は自宅のガレージに足を踏み入れれば、「フェラーリ 166 MM」、「フェラーリ 250 スパイダー カリフォルニア」、「フェラーリ デイトナ クーペとスパイダー」、さらには「フェラーリ エンツォ」といった宝物を眺めることができる。それでも、この裕福な日本人の幸福はどうやら完全ではなかったようだ。まだ多少の余裕資金があった彼は、2台の「フェラーリ 575M マラネロ F1(V12、515馬力、1台あたり約20万ユーロ)」を地球の裏側であるイタリアへ送り、ミラノの高級カロッツェリアであるザガートにこう依頼した。「これを使って何かやってくれ」と。

彼が提示した条件は二つ。ひとつは、1956年のザガート製フェラーリ250 GTZに着想を得たボディであること(ちょうど50周年を迎えていた)。そしてもうひとつは、価値が上がること。つまり、このクルマは投資対象でもあるということだ。

林良行は575 GTZを2台注文した。1台はコレクション用、もう1台は走らせるためだ。

アンドレア ザガートは、こうしたプロジェクトを好む人物だ。このような仕事であればこそ、彼は1919年以来続くザガートの哲学を存分に体現できるからである。すなわち、デザインの中心にあるスポーティなエレガンス、大量生産を行わないこと、そして顧客との密接な関係。まさに往年のやり方だ。当時のジェントルマンドライバーは、週末には軽量で空力的に最適化されたザガートのボディをまとったクルマでサーキットを攻め、平日には淑女を優雅にエスコートするために同じクルマを使った。

かつての無頓着なジェントルマンは、いまや計算高いビジネスマンへと変わった。しかし、美しいクルマへの評価は変わらない。それを証明するのが、ザガートによるネオクラシカルなフェラーリ解釈、「575 GTZ」である。よく観察すれば、ヘッドライトが「フェラーリ 612 スカリエッティ」のものであることに気づくだろう。既存モデルから流用された唯一のパーツだ。「一方ではホモロゲーションの問題があります」とアンドレア ザガートは説明する。「しかし同時に、クルマの“目”からデザインを始めるという古き良きイタリアのGTの伝統でもあるのです」。自社開発のテールランプも、このテーマを引き継いでいる。

とりわけ目を引くのが「ダブルバブルルーフ」だ。このほとんど官能的とも言える二つの膨らみはザガートの特徴であり、オリジナルの250 GTZにも備わっていた。視覚的に車高を低く見せるだけでなく、空力性能を高め、ボディ剛性の向上にも寄与する。

既存フェラーリから流用された唯一の部品は、612スカリエッティのヘッドライトである。

575 GTZはまるで一体成形のように見える――実際その通りだ。「我々はボディ全体をひとつの塊として扱い、細部にはあまり時間をかけません」とアンドレア ザガートは語る。「だからクロームのトリムなどは存在しません。我々はボディに芸術を加えるのではなく、ボディそのものが芸術なのです」。この哲学にふさわしく、開発期間はわずか6か月。「コンピュータ上で設計し、その後すぐにアルミボディを手作業で製作します。模型は作りません。このクルマは直感から生まれるのです」。

モデナからのゴーサイン

フェラーリは、シャシーやエンジンに変更が加えられていないことから、575 GTZにゴーサインを出した。しかし、2006年のジュネーブ・モーターショーでの発表については、フェラーリ 599 GTB フィオラノのデビューに影響を与えないよう介入した。そのためザガートのスタンドには250 GTZのみが展示された。

アンドレア・ザガートは内装を新たなレザーで張り替えた。その革は熟成したバルサミコ酢のように柔らかい。色の選定は妻であるマレッラ・リヴォルタとともに行った。最初の250 GTZもツートンカラーだった。

巨匠は快適に座る:アンドレア ザガートはGTZの内装を極めて柔らかなレザーで仕立てた。

路上では575 GTZはまさに人目を引く存在だ。その完璧なラインは、イタリア人に限らず誰をも魅了する。それでいて日常使用にも完全に適しており、サウンドもそのまま、安全性も確保されている。GTZはまるでフィアット プントのように運転できる。ただし、はるかに特別な存在だが。

2台が“微笑みの国”へ旅立つとき、アンドレア ザガートは涙を流すだろう。1台はプライベートミュージアムに、もう1台は走行用として。

しかし、さらに3台の575 GTZが路面すれすれにノーズを突き出す可能性は残されている。ザガートは、裕福な投資家が現れれば最大5台までの生産を構想している。というのも、250 GTZもわずか5台しか作られなかったからだ。そしてそのすべてが現在も完璧な状態で現存している。なんという幸運だろう。

テクニカルデータ
・V型12気筒エンジン(フロント縦置き)
・48バルブ
・排気量5748cc
・最高出力379kW(515ps)/7250rpm
・最大トルク589Nm/5250rpm
・後輪駆動
・F1 6速マニュアルトランスミッション

シャシー
・前後ダブルウィッシュボーン式独立懸架
・前後ベンチレーテッドディスクブレーキ

タイヤ
・前255/40 ZR18、後295/35 ZR18

ボディ
・4564×1937×1212mm(全長×全幅×全高)
・車両重量1730kg
・燃料タンク容量105L
・0-100km/h加速 4.2秒
・最高速度 325km/h

ザガートの歴史

ウーゴ ザガートは1919年、ミラノでカロッツェリアを創業し、航空機の軽量構造や空力技術を自動車に応用することを目指した。最初はイターラやフィアットのボディを手がけ、その後アルファロメオやランチアへと拡大。1950年には友人であったエンツォ・フェラーリの支援を受け、初のフェラーリを手がけた。第二次世界大戦後は息子のエリオとジャンニが事業を継承し、同社をエクスクルーシブなGTクーペの仕立て屋へと発展させた。現在は孫のアンドレアが経営を担い、極少量生産による特別な車両を生み出す工房として位置付けている。最多生産台数は99台で、2003年のアストンマーティン AR1で達成された。

Text: Roland Löwisch
Photo: autobild.de