【JAIA試乗会】「BYD シーライオン 6」BYDのPHEVがついに日本上陸!
2026年3月5日
今年1月に、2025年のBEV販売台数の発表があり、BYDが225万台でテスラを抜いてついに世界一位になったニュースを聞いて驚いたのだが、BYDの2025年全体の販売台数はなんと460万台で、そのうちの約半分の約235万台はPHEVだというではないか。そのPHEVモデルである「BYD シーライオン 6(BYD SEALION 6)」が昨年12月に日本上陸を果たした。
突然ですが、私は半導体業界と自動車業界のエンジニア経験がある。半導体業界と自動車業界を経験して、一番の違いを感じたのは時間の感覚である。当初、半導体業界に居た時、メーカーに打ち合わせに行くと、最後にエンジニアには必ず宿題が出され、彼らは平然と「明日までに回答をもらえますか?」と、かなり過酷な納期を要求するのが日常茶飯事で、同僚の営業マンのフォローによって、納期が2、3日間延長してもらえるのがいいところであった。
自動車業界に変わり、メーカーに打ち合わせに行くと、やはり同じように宿題は出されるが、彼らは納期の話はしないのだ。私から十分余裕を持って、「宿題ですが、1週間後に回答すればいいですかね?」と話しを持ち掛けると、いや、2週間後でいいですよと優しい言葉を掛けられる事もあり、全く時間の感覚が違うのに驚かされた。

しかし、それは当然のことだ。半導体業界のメイン製品であるスマートフォンは毎年新製品を出してくる。一方で自動車のモデルサイクルは全面改良で一般的に4~6年で、近年さらに延命傾向になり、最近トヨタはモデルサイクルを9年にするという発表があったばかりだ。
ご存じの方が多いと思うが、BYDはバッテリーメーカーである。当初は携帯電話のバッテリーを生産、IT部門では携帯電話部品や組み立て等も実施。2003年からBYD Autoを設立して自動車事業に参入したのである。
そのBYD Autoは時間感覚が完全に半導体業界のスピードで物事を進めているに違いない。その証拠にBYDの新型車の開発を約2年で完成する仕組みを構築している。2005年に自社ブランド車を発表、2008年に世界発の量産型PHEVを発表している。そして新しい車種をどんどん投入して、2020年の販売台数は19万台であったが、5年後の2025年には、24倍の460万台となったのだ。
エンジンがモーターをサポートするスーパーハイブリッドとは
SUVスタイルの「BYD シーラインオン 6」のボディサイズはトヨタ ハリアーとほぼ同じ大きさで、全長4,775mm、全幅1,890mm、全高1,670mmである。

今回試乗したモデルは前輪駆動で、スーパーハイブリッドと呼ばれる高出力モーター+ブレードバッテリーをメインに、エンジンがモーターをサポートするEV走行重視のハイブリッド構造となり、最高出力98PS、最高トルク122Nmの1.5L直列4気筒自然吸気エンジンと、約2倍の出力を持つ、最高出力197PS、最大トルク300Nmのモーターを組み合わせている。
スーパーハイブリッドの走行モードは、モーターのみで走行するEVモード、バッテリー残量が25%を下回るとエンジンを発電機としてモーターで走行するシリーズハイブリッドモード、さらにパワーが必要な時はエンジンの駆動力を利用、高速巡行時ではエンジンの効率の良さを利用してエンジンのみで走行すると言ったシリーズ・パラレルモードの3種類のモードを効率良く利用して走行する。
そして、なんと今回日本に導入されたモデルはレギュラーガソリン仕様となり、BYDが日本導入へ、かなり力を入れている事が改めて感じられるのだ。

さらに、驚くのが日本での戦略的な価格設定である。半導体業界で培われたコスト競争力と比較的コストが嵩むバッテリーが自前で準備できるメリットにより、パノラミックガラスルーフやシートヒーター付きスポーツシート等装備が満載で、なんと3,982,000円と、400万円を切る価格設定がされているのだ。トヨタハリアーのHEVモデルが4,301,000円~だが、同クラス、同等装備のPHEV国産SUVの場合、500万円以上はすることもあり、かなりお買い得であると言えよう。
電動モーターメインのPHEVシステムの走りはいかに
さて、実際にドライバーズシートに座ると、まず目に付くのは、テスラに負けず劣らずの15.6インチタッチスクリーンである。また、インテリアは欧州車のような、日本車のような、各メーカーを十分調査して作られたことが伺えるデザインだ。
走り出すと速度30km/h以下では、エンジンが始動することなく、モーターのみの走行となり、十分なトルクのある容量の大きいモーターで駆動している事がわかる。30km/hを超えるとエンジンが始動するが、モーターのみで走行しているのかスムーズに走行する。

今回試乗時間が限られていたこともあり、高速巡行でのエンジンでの走行を試す事ができなかったが、上りのワインディングロードでアクセルペダルを床まで踏み込むと、かなり大きなエンジン音と共に、エンジンの駆動力でアシストしていることを感じながら加速していく。

また、装備面でも、先進安全装備や運転支援システムが余すことなく搭載され、さらにウインカーを出すと死角部分をモニターに表示する等の様々な装備や機能が付いており、同価格帯のライバルをリードしているようにも思えた。


一方で、街乗りでは乗り心地含め特に気になる事は無かったが、ワインディングロードである程度スピードを上げると、背の高いSUVボディはロールを始め、ある程度のところでもう少しサスペンションが頑張って欲しいと思う部分もあった。こういったハンドリングの面では欧州車に比べて若干劣る。自動車を生産して20年も経たないBYDでは難しいのかもしれない。しかし、今のBYDの開発力の速さでは1年足らずで改善してくるだろう。

自動車業界でのBYDの低価格展開の今後は?
最後に、約20年前スマートフォンが発売されたころ、携帯電話ショップに行くとiPhoneと肩を並べ日本のメーカーのスマートフォンも複数販売され、しかも高価格であった記憶がある。その中に中国製、韓国製のスマートフォンが非常に安い価格で販売されていたのだが、年々日本での販売台数を伸ばしていき、ついには日本製スマートフォンを駆逐してしまった。このまま自動車のスマートフォン化が進むと同じ事が起きるのではないだろうか。
国産車の販売価格がどんどん高くなる一方でBYDは非常に低価格で販売している。今のところ苦戦を強いられているようであるが、PHEVの「シーライオン 6」が投入され、続いて軽自動車の「ラッコ」が投入されるとBYDの勢いは増すばかりだろう。
スマートフォン同等の速い開発スピードでモデルチェンジ、車種投入を繰り返してくるBYDに対して、これから20年後、いや、10年後に日本の自動車メーカーはBYDに太刀打ちできるのか、疑問に思うのは私だけだろうか?
Text : 池淵 宏
Photo:アウトビルトジャパン、池淵 宏

