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このクルマなんぼスペシャル RM Sotheby’sオークションからの名車×33台 後編 1980~2000年代+1930年代のヴィンテージカー×6台

2021年1月30日

本当の意味でのヴィンテージカーを含む歴代の名車勢ぞろい。米アリゾナ州スコッツデールで2021年月21日におこなわれた「RM Sotheby’s スコッツデールオークション」に出品された数多のヴィンテージカー、名車、希少車、珍車の中から、いいなあ、欲しいなあって思う33台を選りすぐって、落札想定価格とともにご紹介する。
エンジョイ&退屈な時間を吹っ飛ばしてください!

【1980年代】

1983 アウディUr-クワトロ
• 市場に出回っているUr-クワトロ中、最高レベルのコンディションの個体
• チェスナットレザーにマースレッドカバー
• 伝説の2.1リッター直列5気筒ターボエンジン、5速マニュアルトランスミッション
• 欧州仕様にアップグレード
想定落札価格: 40,000~50,000ドル(約420~525万円)
大林晃平: 40年経っても、このアウディ クアトロが一番カッコいいアウディなんじゃない?という人も多い初代クアトロ。カラヤンが乗っていたのもこのモデル。今やコンパクトで、きりっとしていて、いい雰囲気の佇まい。あの頃のラリーチャンピオン時代が忘れられない人にとっては、決して高くない価格といえよう。

1984 フェラーリ512BBi
• フェラーリの中でも名車と呼ばれた1台
• ネロレザーの上にロッソコルサ
• 335馬力4.9リッターフラット12エンジン+5速マニュアルトランスミッション
• 総走行距離24,200km以下
想定落札価格: 250,000~300,000ドル(約2,625~3,150万円)
大林晃平: かなり程度もよく、走行距離も少ない512BBiの個体。価格もコンディションを考えればまあ納得のいく範囲ではないか。365こそ名車とかいろいろな意見はあるとは思うが、このころのフェラーリは今とは比較にならないほど見る機会も、出会う機会もないクルマであった。そう考えればやはり価格は妥当(オプションつきのフェラーリ ローマより安いのだから)。

1989 メルセデスベンツ560SEC AMG 6.0 ‘ワイドボディバージョン’
• アファルターバッハの究極の1980年代ハイパフォーマンススーパークーペ
• アンスラサイトレザーにパールグレーメタリック
• 新車としてAMGジャパンにより日本に納入された
• 385馬力32バルブ6.0リッターV8エンジン+4速AT
想定落札価格: 175,000~225,000ドル(約1,837~2,362万円)
大林晃平: かつてハンマーと呼ばれた6リッターV8のAMG SEC。内装も比較的きれいだし、ホワイトメーターやウッドのオートマチックセレクター(4AT!なのだ)も当時を思い出させてくれる。しかし価格は正直言って高いような気もするし、もっと言えば普通の上品なSECだったらもっとよかったのに、とつい思ってしまう…。

【1990年代】

1990 BMW M3スポーツ エボリューション
• DTM用に作られた600台のホモロゲーションモデルの1台
• トリコロールインテリア
• 238馬力2.5リッター直列4気筒エンジン+ゲトラグ製5速ギアボックス
• オプション電動サンルーフと窓付き
想定落札価格: 125,000~150,000ドル(約1,312~1,575万円)
大林晃平: M3らしいM3といえばまさにこのモデル。コンパクトだが十分以上に迫力があり、明らかに普通の3シリーズと違うことを全身で表現しているボディ。アルミホイールも実によくマッチングしている。だが1,500万円という予想価格を聞くと、なんだか複雑な気持ちになってしまうのは、当時の価格を知っているが故なのかもしれない。

1990 メルセデスベンツ190E 2.5-16エボリューションII
• DTM用ホモロゲ―ションスペシャルのメルセデスベンツ
• 限定生産502台中ナンバー146
• 新車でドイツにデリバリー、その後日本に輸出
• コスワース製232馬力2.5リッター16バルブ直列4気筒エンジン
• ゲトラグ製5速マニュアルトランスミッション
想定落札価格: 175,000~225,000ドル(約1,837~2,362万円)
大林晃平: 何回もAuto Bildの記事に登場しているエボリューションⅡ。説明を読むと、ドイツから日本に並行輸入された後アメリカへ渡ったという経歴の一台らしい。価格は意外と安い、ということは程度がそこそこか、走行距離がかなり走ってしまっているから、かもしれない。程度の良いエボリューションⅡならば、この2倍してもおかしくはない、というのが現在の相場である。

1993 チゼータV16T
• わずか9台の完成モデルのうちの1台
• 1,000km以下の総走行距離!
• ブルネイの王様の特別注文車
• 1993年のジュネーブモーターショーに出品されたショーモデル
• 縦置きV16エンジン
• マルチェロ ガンディーニによるボディデザイン
• 右ハンドル仕様!
想定落札価格: 600,000~750,000ドル(約6,300~7,875万円)
大林晃平: チゼータ モロダー登場! 16気筒のエンジンを持ち、9台だけ作られた幻の一台である。ブルネイの王様のクルマだったということは、発注してブルネイの王様の広大な駐車場に納車され、2回か3回乗って、あとは死蔵、というパターンだったのではないか。内装もものすごく程度が良いし、おそらく買うなら今しかない、今でしょう、という一台だが、なぜか欲しくならないのはどうしてだろう。なんとなくパッションに欠けるのだろうか? 価格は妥当だと思える。

1995 ランチア デルタHFインテグラーレ エボリューションII ‘ブルーラゴ’
• 今でも愛好家に人気の高いランチアの特徴的なホモロゲーションホットハッチの限定車
• 総走行距離39,000km以下
• クリームレザー上にブルーラゴ
• 215馬力2.0リッター16VターボチャージャーI4エンジン+5速マニュアルトランスミッション
想定落札価格: 90,000~110,000ドル(約945~1,155万円)
大林晃平: 本当にこういうランチアがなくなってしまったことが、かえすがえすも残念だ。二度と出てこないような格好よさと小粋さ、しかもこの一台はかなり程度が良さそうでもある。とはいっても誰にも迂闊にこの車を薦めるわけではない。本当にクルマのこと、ランチアのことを理解し、さらに様々なトラブルに寛容であったり、路上である程度は自分で対処できたりする、そんな熱い人にはぜひ勧めたい。価格ももはや1,000万円を超える、というのが日本でも普通である。

【2000年代以降】

2001 ベントレー コンチネンタルTマリナー
• 伝統的なベントレーのクラフツマンシップとラグジュアリー、そしてモダンなパフォーマンス
• 2001年に造られた13台中ナンバー7
• 過去に2人のオーナー、総走行距離26635km以下
• 人気の高いマリナー仕様。420馬力+800NmターボV8
• オプションには、エクストラコストのクロームホイールとクロームインストルメントベゼル、ウォールナットパネルが含まれている
想定落札価格: 165,000~185,000ドル(約1,732~1,942万円)
大林晃平: マリナーパークウオードのボディをまとったベントレー。なんとも迫力のある面がまえではあるが、ちょっと前のベントレーらしいベントレーとはこういうクルマのことで、決してドデカイSUVではない。ふかふかで靴が埋まるようなカーペットにウオールナットのウッドパネル、そして分厚いクロームメッキ。今のベントレーでは醸し出せない世界がここにはある。そしてそう考えたならば予想価格はなかなか良心的と言っていいだろう。と、思う…。

2003 フェラーリ エンツォ
• ユニークな仕様のエンツォ
• 非常に珍しいカラーコンビネーション。
• 「Car and Driver」誌の2003年7月号の表紙を飾った個体
想定落札価格: 2,250,000~2,500,000(約2億3,625~2億6,250万円)
大林晃平: たったの2億6千万円。アストンマーティンが作った007仕様の原寸大ボンドカー(ナンバーがつかないので公道は走れない)DB5(3億5千万円)より安い。今後値段は下がることはないと思うが、意外とF40とか、288GTOほどの人気を博さないのかもしれない、と思ってしまうのは、どっちにせよ買えない人間のひがみ根性だろうか。蛇足ながら確かにこのカラーは珍しい。

※以下、本当の意味でのクラシックカーまたはヴィンテージカーに興味のある方はどうぞ

【1930年代】

1931 キャデラックV-8ロードスター(byフリートウッド)
• メーカー工場出荷時オリジナルのままのロードスター
• オリジナルのリアマウントスペアとアクセサリー
• オリジナルカラーのハンサムなレストア
• 製造記録とレストア書類のコピー付属
• クラシックカークラブオブアメリカ(CCCA)認定「フルクラシックモデル」
想定落札価格: 100,000~125,000ドル(約1,050~1,312万円)
大林晃平: 前述のフェラーリ エンツォを見た後では、なんだ?安いじゃん、と思ってしまう。上品なカラーと各種アクセサリーさえついているという希少性。イベントなどでスターになりたいのだったら迷わずこれ。うしろのランブリングシートを出せば、4人(以上)が仲良く乗れます。

1932 ピアースアロー モデル52カスタムクラブ ベルライン
• 1932年に作られた194台のモデル52中の1台
• 現存する唯一のカスタムクラブ ベルラインの個体
• ハリウッド黄金時代のスタジオRKOピクチャーズが元々所有していた個体
• 1991年のレストア後、頻繁にコンクールやショーに出場し優勝
• クラシックカークラブオブアメリカ(CCCA)認定「フルクラシックモデル」
想定落札価格: 175,000~225,000ドル(約1,837~2,362万円)
大林晃平: 1910年代から40年代まで、アメリカ製最高級車の代名詞だった「ピアースアロー」。東海岸の上流階級たちに愛されたのがピアースアローで、西海岸にあるハリウッドのセレブたちが愛したのがデューセンバーグというわかりやすい構図だ。グレン ミラーが愛したことでも知られる。

1932 キャデラックV-16コンバーチブル クーペ(byフィッシャー)
• 14台しか作られなかったうちの1台とされ、生存が確認されている4台のうちの1台でもある
• オプションシートを含むオリジナルシートが付属
• オリジナルのシャシー、エンジン、コーチワーク、証明書付きヒストリー
• フルレストア済み
• ペブルビーチ コンクール デレガンス最優秀賞受賞車
• クラシックカークラブオブアメリカ(CCCA)認定「フルクラシックモデル」
想定落札価格: 750,000~850,000ドル(約7,875~8,925万円)
大林晃平: 上のキャデラックを見た後では、どえらく高いと思ってしまいがちだが、希少性を考えればこの高値の予想は当たり前。フィッシャーのコーチワークにより美しいボディはキャデラックらしく上品。ものすごく控えめだし、このカラーリングと仕様を選んだ当時のオーナーは、相当なコニサーだったのだろうと推測される。

1933 パッカード エイト カブリオレ(byグラバー)
• 人気の高いアメリカ人テノール歌手でカーコレクターとして有名だったセルジオ フランキの所有した個体も
• アメリカ製のベストなシャシーにエレガントなスイスカスタムコーチワーク
• クラシックカークラブオブアメリカ(CCCA)認定「フルクラシックモデル」
想定落札価格: 160,000~180,000ドル(約1,680~1,890万円)
大林晃平: あなたをペットにしたくって、日参するのはパッカード(小林旭の大ヒット曲「自動車ショー歌」より)のパッカード。セルジオ フランキはイタリア生まれでアメリカにわたり、カーネギーホールなどでも歌ったテノール歌手。「エドサリバンショー」にも出演し、甘いマスクで超人気者となった。このパッカードは上品な2トーンカラーを持ち、ホワイトリボンタイヤとも絶妙なコーディネートである。内装の皮のやれ方も良い味を出しているし、ちゃんと乗られていた風情なのが素敵である。

1937 ブガッティ タイプ57SCトゥアラー(byコルシカ)
• オリジナルのシャシー、エンジン、ギアボックス、デフ、ボディを保持
• イタリアのコーチビルダー、コルシカ社製57S型8台のうちの1台で、4人乗りツアラーは2台のみ
• オープンとしてのタイプ57Sブガッティは16台のみが作られた
• 過去の全オーナーのヒストリーと情報付き
• 以前はジャッジ ノースとジェネラル リヨン(Judge North and General Lyon)のコレクションの1台だった
想定落札価格: 4,750,000~6,500,000ドル(約4億9,875~6億8,250万円)
大林晃平: ブガッティ57は、4種類のボディタイプ(2ドア2座、2ドア4座、2ドアカブリオレ、2ドアクーペ)を持っていたが、その中でも数の少ない2ドアカブリオレである(ちなみに2ドアクーペがかの有名なアトランティックだ)。さらにスーパーチャージャーのつく高性能版SCは希少であり(後に工場に戻されてスーパーチャージャーを後付けした事例が多い)、この高価格も納得のいくものだ。ブガッティというと、つい青色でレーシーなクルマを想像してしまうが、こういう豪奢で優雅なクルマのほうがずっと多いのである。

1938 ジャガーSS100 3½リッター ロードスター
• レアで重要な、戦前の英国スポーツカーの真髄
• 118台作られたSS100 3½リッターの1台
• レッドインテリアにガンメタル、ブラックコンバーチブルトップ
• 履歴書とメンテナンス証明書付き
想定落札価格: 500,000~600,000ドル(約5,250~6,300万円)
大林晃平: ジャガーの歴史の中でも欠かすことのできないSS100。車名の100は最高速度の100マイルを表しての命名ではあるが、実際には100マイルに届かないというのが事実らしい。ただし加速力はかなりのもので、名前負けは決してしていないと思う。クーペモデルも1台だけ試作されたが、他の314台はすべてこのオープンモデル。後々パンサーが作ったJ72をはじめ、コピー車も多数派生した。この一台は落ち着いたカラーにレッドの内装、ブラックのトップと絶妙なセンスの一台だ。

Text & photo: RM Sotheby’s