アヴァンタイムやヴェルサティスを覚えているだろうか?「ルノー フィランテ」ルノーの新しいフラッグシップモデルが登場!
2026年2月15日
ルノー フィランテ(Renault Filante)は、フランスが送り出した“最良の外人部隊兵”だ。かつての「ルノーアヴァンタイム(Renault Avantime)や「ルノー ヴェルサティス(Renault Vel Satis)」を覚えているだろうか。
ルノーがラグジュアリー市場に本気で挑んだのは、もうずいぶん前の話だ。前衛性を武器にした“アヴァンギャルド路線”は、結果として壮大な失敗に終わった。そして今、ルノーはより現実的で、はるかにオーソドックスなアプローチで再挑戦する。その名が「フィランテ」である。
ルノーと高級車市場の関係は、まさに“オンとオフ”の連続だった。まずは「アヴァンタイム」や「ヴェルサティス」のような大胆なモデルで富裕層に訴求し、次には「ラティテュード(Latitude)」や「タリスマン(Talisman)」といった無難すぎるセダンへと振り子を振る。だが両極端はいずれも成功せず、最終的には“ブルジョワ層”そのものから距離を置き、堅実なミドルクラスへ回帰する─それがこれまでのパターンだった。
少なくとも、これまでは。欧州ではエレガントで意欲的なSUVクーペ、「ラファール(Rafale)」で慎重に様子見をしているにすぎないが、海外では「フィランテ」で一気に勝負に出る。全長4.92m。その存在感は比喩ではなく、物理的にも“大きな一歩”だ。
ルノー フィランテ:アヴァンギャルドではなく、あえて王道へ
「フィランテ」という名は、過去と現在を結ぶ象徴だ。ひとつは1950年代、米国ユタ州のボンネビル スピードウェイ(Bonneville Salt Flats)で数々の速度記録を樹立した「ルノー エトワール フィランテ(Renault Etoile Filante)」。もうひとつは、モロッコで単一充電1000km走行、消費電力量7.8kWh/100kmという驚異的効率を達成した電動記録車「フィランテ(Filante)」である。“流れ星”を意味するその名は、かつては一瞬の輝きで終わる存在を連想させたかもしれない。しかし今回は違う。
フロントにはワイドに広がるLEDストリップとダイヤモンドロゴを組み合わせた光のシグネチャー。わずかに傾斜したルーフラインと、航空機構造を思わせるリアスポイラー。強いアンダーカットでコントラストを強調したリアエンド。奇抜さではなく、グローバル市場で通用する“端正さ”と“記憶に残る造形”を両立させた。

技術パッケージは強力、だが輸出専用
ホイールベースは2.82m。後席を含めた十分なレッグスペースに加え、ラゲッジ容量は633〜2050L。実用性は明確にクラス上位を狙う。インテリアは高品質素材でまとめられ、コクピットは「エスパス」系を一世代古く感じさせるほど先進的だ。
多くの車種が縦型センターディスプレイを採用するなか、フィランテは横一文字の“リボンディスプレイ”をダッシュボードいっぱいに展開。助手席側まで発光するパノラミック表示は、デジタル体験そのものを価値とする設計だ。開発の中核が韓国で行われたことも象徴的である。
パワートレインも強化された。1.5Lターボ(150ps)に、136psと82psの2基の電動モーターを組み合わせ、システム出力は250psに到達。欧州市場の「ラファールPHEV」に次ぐ強力なハイブリッドだ。バッテリー容量は1.64kWhと小さいが、市街地走行では最大約90%をEVモードでカバーできるという。エネルギーマネジメント戦略を徹底し、都市部での電動走行比率を最大化する制御思想は、実用志向のハイブリッドとして評価できる。

「フィランテ」はルノーのラグジュアリー復帰宣言であると同時に、3億ユーロ規模で4年間に8車種を投入する“International Game Plan”のハイライトでもある。
だが、ここに落とし穴がある。この戦略はアジア、アフリカ、南米、中東向けであり、欧州は対象外だ。「ルノー カーディアン(Renault Kardian)」、「ルノー ボレアル(Renault Boreal)」、「ルノー グランド コレオス(Renault Grand Koleos)」と同様、「フィランテ」もまた“外人部隊”として海外戦線に投入される。
ワールドプレミアの舞台はソウル。生産は南方の釜山で行われ、2026年3月に韓国市場へ投入、その後南米と湾岸地域へ展開する。

Photo:T. Geiger
ブランド責任者ファブリス カンボリーヴは、この方針が当面変わらないことを明言する。プレミアム志向のファミリーカーである「エスパス」や、いわば“市民階級向け「BMW X6」”的存在の「ラファール」ですら欧州では苦戦気味だからだ。
しかし、もし韓国仕様そのまま、そして現地価格が維持されるなら話は別だ。現地での価格は約2万5000ユーロ。欧州の「ルノー キャプチャー(Renault Captur)」並みという破格値である。
「フィランテ」は、かつての“流れ星”ではない。それはフランスが再び高級車市場へ打ち込む、計算された一撃である。
Text: Thomas Geiger
Photo: Renault

