キザシ(Kizashi)の後釜にピッタリか スズキのBEV世界戦略車「e ビターラ(e VITARA)」発進!
2026年1月30日
スズキ e ビターラ(Suzuki e Vitara):スズキは「エモーショナル バーサタイル クルーザー」を商品コンセプトにしたバッテリーEV世界戦略車第一弾「e ビターラ(e Vitara)」を発表。
今回の試乗の舞台となった幕張のニューオータニ駐車場に行くと、寒空の元、スズキのスタッフが各色揃ったeビターラを一台一台を丁寧に磨きながら、きれいに整列させているところであった。そんな光景を見ながらふと思う「自動車の形ってずいぶん変わってきたのだなぁ」と。
どこがどう、と具体的に述べることは難しいが、とにかく昨今、特に様々なBEVが登場してからというここ数年、自動車の形や表情(グリルレスのフロントやリヤのライト類)などなどが、とにかく大きく変化しているように感じられる。同じような雰囲気は新しい「シトロエンC3」や「ボルボEX30」 などにも感じられる変化だが、今回の主役である「e ビターラ」も目をランランと輝かせながら出動を待っているその姿と雰囲気は、どことなくロボコップのようでもあった。

「e ビターラ」はインフィニティのオーディオを標準装備し、BYD製のリン酸鉄リチウムイオン電池バッテリーと搭載し、インド工場で作られ開発・設計された故郷(?)の日本に出戻る、という複雑な環境下に生まれた一台である。特に自動車開発のライバルともいえるBYDから心臓部ともいえるバッテリーを購入するという話を聞くと、現代の自動車がなんとも複雑で、一般人にはとうてい計り知れない事情と状況下で生産されているということがわかる。

BYD製のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーには2種類があり、廉価版の「e ビターラ X」には49kWhのバッテリーが、上級モデルの「e ビターラ Z」には61kWhのバッテリーが新開発のEV専用プラットフォーム「HEARTECT-e」に搭載される。
「e ビターラ Z」には前後に独立したeAxle(モーター、インバーター)を二基搭載した4輪駆動と、前に一基搭載した二輪駆動のモデルの2種類があるが、バッテリー容量はどちらも同じものとなる。今回の試乗会にはZグレードのみが用意されており、2輪駆動が4,488,000円。4輪駆動は4,928,000円となる。


いずれも10.1インチのナビゲーションシステム、インフィニティオーディオ、アクティクルーズコントロールをはじめとするADAS、ガラスルーフ、運転席パワーシート、シートヒーターなどなどフル装備で、オプションとしては2トーンカラー(ブラックルーフが55,000円、アークティックホワイトのボディカラーにブラックの2トーンという組み合わせのみ88,000円の追加金額)があるのみの高級仕様である。(蛇足ながら、ツートンカラーのオプションを選ばない場合、選択できるモノトーンカラーはブルーイッシュブラックパールⅣ、という一色のみとなる。)
小型BEVとして優等生
eビターラの十分以上に広い室内に乗り込み、最近のプジョーを髣髴とさせる上下が水平で8角形みたいな形のステアリングホイールを握って走り出せば、欠点の少ない、日々の実用車として過不足のない、使いやすく癖のないBEVという印象が強い。

まずは大きさがちょうど良い。全長4275㎜、全幅1800㎜でBEVとしてはコンパクトで、回転半径が5.2mで小回りが利く。SUVらしくアイポイントの高い着座位置も相まって実に使いやすい。
試乗会場のような比較的交通量が多い都市部での使用状況下では、特にBEVの本領発揮ともいえる静かで滑らかな走りを見せる。BEVというとものすごい加速などを連想する方もいるかと思うが、「e ビターラ」はそういうしつけのクルマではないが、十分以上に交通の流れをリードできる走行性能を持っている。ドライブモードは「NORMAL」「ECO」「SPORT」の3つがあり、センターコンソールに独立したスイッチがあって使いやすい。

2輪駆動モデルも4輪駆動モデルも、どこかに困った癖や気になる大きな欠点などは見つけにくく、毎日使用したとしても不満の出にくい自動車だと思う。おそらくインド製のグッドイヤーのタイヤ(全車共通の225/55 R18)に起因する部分が多いと思われるロードノイズと路面の凹凸の荒さを感じるような乗り心地は欠点だと言えようが、その部分を除けば一般路上での不満個所は見当たらない。

真剣に(笑)2輪駆動と4輪駆動を乗り比べると、2輪駆動のほうが100㎏ほど軽いこともあり軽快に感じられる。一方、通常は50対50の駆動力だが必要に応じて前輪と後輪のトルク配分を自動制御する「ALLGRIP-e」を持つ4輪駆動モデルは、やはり明らかにパワフルだし路面の悪状況下でもより安心して走行できる。なので50万円近い差額は十分に納得のいくものといえる。走りを楽しみたいなら4輪駆動の方だろう。

個人的に2輪駆動か4輪駆動、どちらを選択するかと聞かれたならば、やはり4輪駆動と答えたい、それだけの違いがあった。なおいずれのモデルも令和6年度補正予算「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」の対象で、補助交付金額は1,270,000円とのことであった。
装備は万端で不足はない
「e ビターラ Z」は室内スペースも十分広いし、開閉できないものの、大きなガラスルーフは開放感をもたらし、サイドウインドーは前後ともほぼ全開するので不満はないだろう。また今回は厳冬時期というBEVにとっては最も過酷な時期の試乗会となったが、他のBEVの試乗経験と比較しても「eビターラ」の電費は決して悪くなく、むしろかなり優秀なものと思われた。少なくともエアコンを効かせた途端、モリモリと減っていくバッテリー残量メーターを恐れおののきながら目の当たりにする、というような電気の減り方は今回一度もなかった。

スズキの行動理念「小・少・軽・短・美」が見事に昇華された「eビターラ」をどんなユーザーの勧めたらよいのか、私なりに(勝手に)考えてみたのだが、そろそろくたびれてお役御免になりつつある、警察車両として導入されている「キザシ(Kizashi)」の後継車にどうだろう?各警察署で充電できるし、張り込み時にもエンジンをかけなくて良い。不審者の自転車等を積み込んでの運搬もハッチバックだからキザシより便利だろう。きっと各署で人気モノになれそうな気がするのだが、全国の警察関係者方々、「eビターラ」を導入してみてはいかがでしょうか?
Text:大林晃平
Photo:アウトビルトジャパン

