クラシックカーシーンは心温まる社会貢献活動にも積極的だ 慈善目的のためのクラシックカーキャンペーンとは?
2026年1月31日
チャリティ:13台のクラシックカーが当たるという慈善目的のためのクラシックカーキャンペーン。クラシックカーシーンは、このように社会貢献活動にも積極的だ。
ケルン在住のフランク イェッセ(Frank Jesse)は、かつて自分に贈られたヴィンテージのモデルカーを販売しているが、その収益を自分のものにはせず、すべて寄付している。さらに、自身や友人のコレクションから、本や雑誌、マグカップなども提供し、寄付を募る形で譲っている。
ベルギッシェス ラント(Bergisches Land)およびデュッセルドルフ地域で定期的に開催されている「シトロエンDS」のミーティングでは、30周年を記念したラッフル(抽選会)も企画した。そこで、そしてほかの多くのシトロエンの集まりでも、彼は今年も熱心に寄付金を集め続けた。

Photo:Private
シトロエンのオーナーが小児がん支援に3000ユーロを寄付
2025年の結果について、フランク イェッセはこう語る。「募金箱の中を数えたら、信じられないことに2,340(約43万円)ユーロも入っていた。この活動はとくに思い入れがあるので、きりのいい3,000ユーロ(約55万円)になるよう自分で上乗せした」。彼はこの取り組みを2015年に始め、それ以来、合計で14,433ユーロ(約267万円)を集め、寄付してきたという。
例年どおり、そのお金はケルン大学病院の小児腫瘍科に送金された。
病院からは次のような返事が届いた。「こちらの子どもたちは新しいおもちゃに大喜びしています。とくに、いま本当に必要とされているレゴやプレイモービルです。それに、プレイルームにある大きな地下駐車場用の車もたくさん必要です。さらに、将来の建設士たちが穴あけの練習ができる、新しい作業用ウォールも導入します」。
なぜケルン大学病院に寄付するのか。イェッセは理由をこう説明する。「私は生後最初の6週間を、この大学病院の小児病棟で過ごした。長いあいだ命の危険にさらされていたからだ」。
小児がん病棟や小児ホスピス─寄付が集まりすぎている?
フランク・イェッセのように、全国のクラシックカー愛好家たちは、自分より恵まれない人々を支援する活動に力を注いでいる。その多くが、小児腫瘍科や小児ホスピスに寄付している。
「私も当初は、シャリテ病院の小児腫瘍科のために寄付を集めていた」と、ベルリン在住のチアマク ジャムチディ(Ciamak Djamchidi)は語る。ある日、医師たちは彼を階下の小児循環器科へ案内した。そこでは重度の心疾患を抱えた乳児が治療を受けており、ペースメーカーが必要な子どもや、心臓移植を待つ子どももいた。その理由は、この病棟が、がんの子どもたちに比べて、注目や寄付が著しく少なかったからだ。
パゴダクラブが心疾患の子どもたちに「移動の自由」を提供
2017年、ジャムチディは伝説的実業家ハイディ ヘッツァーとともに「ウィッシングツリー」を設置した。子どもたちは欲しいプレゼントを書いたカードを木に掛け、SVZ専門センターの職員や、ジャムチディの友人たちがそれを叶えた。2018年には、メルセデス・ベンツSL パゴダ クラブもこの活動に加わった。
なかには、治療と監視のため、24時間病室を離れられない子どももいた。ポッドキャスト「Rückspiegel(ルックスピーゲル)―オールドタイマー ニュースポッドキャスト」で“マキ”の名でも知られるジャムチディは、心疾患のある子どもたちを移動可能にする方法を見つけた。ロギーノ社は、酸素ボンベや点滴ポンプ、測定機器などを取り付けられる専用カートを製造している。しかも、簡単に消毒できる構造だ。

Photo:Vivian Rheinheimer
ジャムチディとパゴダ クラブは、2018年から心疾患のある子どもたちのために募金を続けている。当時、これらのカートは1台およそ1500ユーロ(約27万円)で、すでに3台を寄付したという。
明るい装飾が病気の子どもたちを元気づける
「その後、看護管理者から、病棟をもっと魅力的にできないかと相談された」とジャムチディは振り返る。彼は「ローテ ナーゼン ドイツ(赤い鼻ドイツ)」に連絡し、そこから画家ヤーコプ メーリングを紹介された。現在、彼が病棟の廊下の壁画を手がけている(本当に素晴らしい人物だ)。塗料は塗料メーカーのStoが提供した。

Photo:Ciamak Djamchidi
2025年12月23日、メルセデス・ベンツSLパゴダ クラブは、この「ギャラリー」をクリスマスパーティの一環としてオープンした。病棟のすべての子どもたちにはプレゼントも贈られた。
「そして、病棟にはもうひとつ贈り物がある」とジャムチディは語る。「少し年長の患者が移動できるよう、これまで支援してきたベビーカーと同様のハンドカートを提供する」。

Photo:Private
手軽に、無理なく寄付する
小児循環器科と直接の縁がない人でも、ドイツ小児心臓財団に寄付することができる。同財団はクラシックカーシーンで非常に活発に活動しており、クラシックカー ラリーなどで頻繁に募金を呼びかけている。著名な支援者には、テレビ司会者のシドニー ホフマン(「Die PS-Profis」、ポッドキャスト「Sidney und Ferry」)や、FIA世界耐久選手権を2度制したレーシングドライバー、ティモ ベルンハルトが名を連ねる。
何に寄付するべきか
寄付は、がん病棟よりも心臓病棟に向けるべきなのか。小児ホスピスについても同様の問題がある。十分な資金を得ている施設もあり、すでに成人向けホスピスへの寄付を呼びかけているところもある。
さらに、まったく異なる「善意の目的」も存在する。世界中のバイク愛好家に知られているのが「ディスティングイッシュト ジェントルマンズ ライド」だ。参加者は正装に身を包み、2012年から年に一度、街を一斉に走行する。当初の目的は前立腺がんの予防と治療支援だったが、2017年からは自殺防止も支援対象に加えられた。

Photo:Movember
このジェントルマンズライドは、ドイツ国内だけでもアーヘンからヴュルツブルクまで30都市で開催されている。詳細はgentlemansride.comを参照。
人とクルマのコンディション管理
オルドタイマーフロインデ ミュンスター&ミュンスターラントe.V.も、「ミュンスター クラシックス」クラシックカー ラリーで同様のコンセプトを追求している。2025年、このラリーでは8,000ユーロ(約148万円)を集め、アウゲンリヒト財団、リヒトブリック高齢者支援団体、ヨハネス ホスピス、ミュンスター小児神経支援、小児がん支援、ミュンスター緩和ケアネットワークに寄付された。
それだけではない。参加者は希望すれば、簡単な健康チェックも受けることができる。カール=ハインツ パーヴェルツィクのチームは、これに向けて複数のスポンサーを確保しており、最初の支援者は公衆衛生局とドイツの健康保険会社テクニカー クランケンカッセだった。
パーヴェルツィク自身も、2020年に自身の大規模なモデルカーコレクションを、非営利団体モニカ&ディーター・クロプファー財団(オールドタイマー博物館ノットゥルン)に寄贈している。
クラシックカーを当てて、支援する
クラシックカー愛好家にとって定番のチャリティイベントが、レーベンスヒルフェ ギーセンによるクラシックカー寄付キャンペーンだ。1994年から、ラインハルト シャーデとティナ ゴルシュリューターのチームがクラシックカーの寄付を集め、当初は1枚10マルク(約700円)、2002年以降は5ユーロ(約925円)で抽選券を販売している。
その成果は絶大で、現在では毎年数百万ユーロが集まる。この資金は、障がいの有無にかかわらず人々が共に働き、暮らし、学ぶ施設の建設と運営に使われている。
クラシックカー寄付キャンペーンで10台を抽選

Photo:Lebenshilfe Gießen
2026年1月20日に終了する2025年のキャンペーンでは、「オペル カデットA」から高価な「メルセデス ポントン カブリオレ 220S」まで、13台が抽選対象となっている。ここでは3台を紹介する。
まずは、1980年式の赤い「シボレー コルベットC3」。5.7リッターのスモールブロックV8とATを搭載する。のんびりした印象だが、本気を出せば0〜100km/h加速は8秒、最高速度200km/hも可能だ。この車両はステファン シュランツが寄付した。
参加方法は簡単だ。ギーセンに5ユーロ(約920円)、またはその倍数を寄付する。50ユーロ(約9,200円)なら抽選券10枚が手に入る。振込先はレーベンスヒルフェ ギーセンe.V.、IBANはDE38 5135 0025 0200 6260 00。用途欄には名前と住所を記入するだけでよい。50ユーロ(約9,200円)以上の寄付には、自動的に寄付証明書が発行される。
5ユーロで狙えるメルセデス560SEC
5ユーロ(約920円)の抽選券で当たる可能性があるメルセデス560SEC(C126)は、コルベットよりも洗練された印象を与える。当時の最上級モデルで、出力は279ps。排気量がほぼ同じでありながら、コルベットを大きく上回る性能を誇る。

Photo:Lebenshilfe Gießen
エアコン、シートヒーター、レザー内装、電動サンルーフなど、数々の装備で当選者をもてなす。走行距離は16万9000km。このラグジュアリークーペは、ハンス=ペーター マイヤーホフが寄付した。
ポルシェ944カブリオレ─意外にも理にかなっている
3台目は通好みの1台だ。「ポルシェ 944 S2カブリオレ」は、史上もっとも耐久性の高いオープンカーのひとつとされる。排気量3リッターを4気筒で分担している点は一見奇妙だが、理にかなっている。重量や燃費の面で、211psの4気筒エンジンは、6気筒よりも優れているからだ。

Photo:Lebenshilfe Gießen
ポルシェはここで、理性のルールをすべて用いながら、理性的でない人ですら欲しくなるクルマを作り上げた。ヴィリバルト ゼーアはこの個体を手放し、クラシックカー寄付キャンペーンに提供した。
クラシックカーのオーナーは裕福だと思われがちだが、実際にはごく一部にすぎない。本記事では、平均的な収入でも、予算を抑えてクラシックカー趣味を始められることを示している。
時間は誰にとっても貴重な資源だ。それでも、何万人ものクラシックカー愛好家が、お金や時間を寄付し、善行に尽力している。なかでも積極的な人々は、技術への情熱を人助けに活かしている。
彼らは、クルマへの情熱を資金や実践的な支援に変える創造性を持つ一方で、「本当に何が不足しているのか」「見過ごされがちな人は誰か」を見極めている。
クラシックカーシーンからの実例は、それが可能であることを示している。必要なのは、献身、開かれた姿勢、そして時には不快な道を選ぶ覚悟だ。
クラシックカーを運転する人々は歴史を愛している。そして歴史を愛する者は知っている。責任は、ガレージの扉の前で終わるものではない。
Text: Frank B. Meyer

